セナ‐マクラーレン最後の栄光を飾るマシーン
バブル経済絶頂期を象徴するものとして今も記憶される、日本におけるF1ブーム。なぜあそこまでの盛り上がりを見せたのか、今となっては不審な気持ちもするが、その後F1人気がある程度定着したところを見ると、あのブームも決して一過性のものではなかったと言えるだろう。そんなF1ブームの中心にいたのが、当時のトップ・ドライバーの1人であるアイルトン・セナと、マクラーレン・ホンダのマシーンであった。
【画像39枚】大きく手を入れてサラッと仕上がった(?)MP4/6とその制作過程を見る!
そんなセナとマクラーレン両者の栄光の頂点、あるいはその最後を飾ったのが、1991年シーズンのマシーン、MP4/6である。この年のセナは生涯3度目にして最後となるドライバーズ・タイトルを獲得、マクラーレンも4年連続でコンストラクターズ・タイトルを勝ち取っているが、連覇はこの年でストップとなった。
MP4/6は車名が示す通り、MP4(1981年)からの発展形と言えるマシーンで、1991年開幕戦のアメリカGPから投入されている。全体のフォルムは当時のトレンドに沿ったオーソドックスとも言えるもの。フェラーリから移籍したデザイナーのアンリ・デュランが手掛けただけに、サイドポンツーンを後輪にかけて強く絞り込んだコークボトルラインには、フェラーリとの共通性が窺える。この頃ティレルがハイノーズを導入し始めていたが、MP4/6のノーズはその流れには乗らず、細くシャープなものだった。フロントウィングはレギュレーションの改定で横幅が狭くなったため、ダウンフォース不足を補う目的で整流板(ボーテックスジェネレーター)が取り付けられている。
モノコックはMP4以来のカーボンコンポジット・ファイバー製。サスペンションはフロントを前年までのプルロッド式からプッシュロッド式へと変更、モノコックの上にダンパーが配置されるレイアウトとなる。エンジンは、ホンダとしては第一期F1以来となるV12のRA121Eを搭載。このエンジンは60° V型12気筒のDOHC 4バルブで、可変吸気機構を採用し、3497ccの排気量から735ps以上の最高出力を発揮した。
この年のマクラーレンのドライバーは、セナとゲルハルト・ベルガー。セナはテストドライブ早々にパワー不足を訴えたという逸話が有名で、またMP4シリーズのシャシー自体も旧態化が目立ちつつあったが、デビュー戦のアメリカGPではセナのドライビングによって当然のごとく優勝を飾った。そればかりでなく、続く3戦も制して4連勝を実現。第2戦のブラジルGPは、セナの母国におけるF1初勝利ともなった。だが快進撃もここまでで、第5戦カナダGPからはセナの不安が的中、ウィリアムズが新たな脅威として立ちはだかる。そして第6戦以降、ウィリアムズFW14は4連勝という強さを見せたのである。
この流れは第10戦ハンガリーGPから一変、再びMP4/6は最強マシーンへと返り咲く。これにはシャシー、エンジンだけでなく、シェルによる燃料の改良も貢献したというが、直前に本田宗一郎の逝去という事態もあり、その弔い合戦という意識がチームの結束を強めたのであろう。ハンガリーと、続くベルギーの2連勝を飾り、また15戦の日本GPではベルガーが優勝、次の最終戦オーストラリアではまたセナが優勝し、前述の通りドライバー、コンストラクターともにタイトルを獲得してこの年は終わったのである。
20年近く待たせて登場した1/20のMP4/6だが……?
ブーム当時、マクラーレン・ホンダのマシーンはタミヤが毎年のようにプラモデル化していたが、1/20スケールでのMP4/6のキット化はなく、1/12スケールでの製品化となった。これはこれで、スケールモデルのある意味真髄を極めた超傑作キットなのだが、やはり他のマシーンと同じスケールで並べたいというのは人情であろう。そうして1/20スケールでのキット化を実現したのは、タミヤではなくフジミであった。実車の活躍から20年近く経ってのことである。
ここでお見せしているMP4/6は、このフジミ製キットを制作したものである。時代の趨勢から、かつてのプラモデルに当たり前のように付属していたスポンサーロゴのデカールは、大抵のメーカーの製品からは姿を消してしまい、このフジミ製キットにも「Marlboro」のデカールは含まれていない。そこで作例ではサードパーティーの製品を使用して仕上げているが、それ以外にも、このキットは色々と手のかかる部分が多いようである。それらの課題への対応については、工程写真に付したキャプション、そして追って公開する後編の記事をお読みいただきたい。
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