サイドフィンが印象的なミッドシップ12気筒
テスタロッサと言えば、バブル期のフェラーリを象徴するモデルのようなイメージがある。その頃バブルに沸き立ったのは日本の話に限定されるのだから、フェラーリとしては少々迷惑なことかもしれないが……。テスタロッサは当時のフェラーリのフラッグシップ・モデルであり、512BBiの後継車でもあった。
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BBと言えば、そちらはそちらでスーパーカーブームの象徴のような感じのモデルであるが、その登場は1973年のこと(当時は365GT4BB)。その古さもさすがに否めなくなった1984年、12気筒ミッドシップの地位を受け継ぐモデルとしてデビューしたのがテスタロッサである。同年春にはGTO(288)を発表したフェラーリだが、秋のパリ・サロンでこのテスタロッサを発表したのだから、この年はフェラーリにとって非常に賑やかなものとなった。
丸みを帯びたBBのスタイリングは1960年代の面影すら感じさせたが、一転してテスタロッサは、エッジの利いた現代的なプロポーションとなった。ボディは後方に向けて大きく広がるような形が特徴で、前輪と比べると後輪のトレッドはぐっと広がっており、リアスタイルも非常にワイドな印象となる。この形を反映して全幅はほぼ2m、正確には1976mmという、非常に大きな数字だ。全長は4435mm、全高は1130mm。
デザインを担当したのはピニンファリーナで、迫力を感じさせながらもそのスタイリングは相変わらず美しい。伝統の格子グリルとリトラクタブルライトによるフロント周りは大人しいものだが、ボディ下側は後方へ行くにつれて張り出しを強め、そしてドアから後輪前にかけては薄い5本のサイドフィンが設けられており、エアインテークへと繋がっている。このサイドフィンが何よりもテスタロッサを特徴づけるポイントと言えるだろう。
この車体に搭載されるエンジンは512BBiのそれを進化させたもので、180度V型12気筒DOHC・排気量4943ccであることは変わらないが、新たに4バルブ化されて最高出力390psへとパワーアップしている(アメリカ向けは380ps)。そのルックス的な特徴としてはヘッドカバーが赤く塗られていることで、これがもちろん車名の「テスタ・ロッサ(赤い頭)」の由来であるが、これはもちろん、1950年代の250TRなどに倣ったものであろう。前述の「GTO」の復活といい、この頃のフェラーリには何か期するところがあったのかもしれない。
サスペンションは前後ともダブルウィッシュボーンで、リアにはコイルスプリング/ショックアブソーバーがダブルで具わる。シャシーはスチール製のチューブラーフレームで構成されるが前後別体となっていて、車体下方に分離できる構造だ。ボディ側面に大きなインテークを必要としたことからも分かる通り、ラジエターはサイドマウントとされ、そのためフロントには実用に足るラゲッジスペースが生まれている。テスタロッサはホイールサイズやドアミラー、インジェクションシステムなどに変更を受けながら8年間を生き延び、後継の512TRへとバトンタッチされた。
テスタロッサのプラモデルには、フジミの1/16などもあるが、1/24スケールのものとしてはタミヤが馴染み深いところだろう。他にモノグラム(/レベル)、イタレリがあったが、ここではモノグラムのものを制作してみた。使用したキットはレベルにブランドが変更されてからのもので、『特捜刑事マイアミ・バイス』仕様。というよりも、この作例は「モデルカーズ」誌の刑事ドラマ劇中車特集(2016年)用に制作されたもので、『マイアミ・バイス』のテスタロッサを作る、というのが眼目であった。
『特捜刑事マイアミ・バイス』は1984年から1989年にかけてアメリカで制作・放映されたテレビドラマで、原題は『MIAMI VICE』。タイトルの通りマイアミを舞台に、主に麻薬関連の捜査に従事する二人の刑事の活躍を描いたもので、銃器関連の凝った描写などから、日本でも人気を博した。このテスタロッサは主人公のソニー・クロケットが駆る車両で、潜入捜査のための道具であるという設定だった。
プラモデルに話を戻すと、このモノグラムのキットはハセガワ版も存在したので、そちらで馴染みのある方が少なくないかもしれない。シャシー/エンジンも再現されたフルディテールモデルで、プロポーションもなかなか悪くない。きちんと手をかければさらに完成度の高まるキットであるが、そのあたりについては工程写真のキャプション、そして追って公開する後編の記事をお読みいただきたい。
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