6L V8 DOHCを積むモンスター
AMG 300CE 6.0-4V hammer wide version(ハンマー ワイドバージョン)――当時は最大でも直6を搭載していたミディアムクラスのクーペ(1987年~)に、SクラスのV8(M117型)を6Lにまで拡大し更にヘッドをDOHC化したエンジンを積む、モンスターマシンである。車名にもあるHAMMER(ハンマー)とは、このエンジンが発する強大なパワーが、「まるでハンマーで叩かれたような加速感が得られる」という比喩から名づけられたとのこと。
【画像76枚】滑らかに拡げられたフェンダーが美しいAMGとその制作工程を見る!
今回制作したのは、さらにAMG内製のブリスターフェンダーをまとったワイドバージョンである。時折、このワイドボディをハンマーバージョンと呼ぶことがあるが、ハンマーとは先述の通りエンジン由来の名称である。お見せしている作例はフジミ製1/24スケール・プラモデル メルセデス・ベンツ300CEからの改造だが、各改造パートの面構成には細心の注意が必要であった。すなわち、フェンダーの張り出しは極々なめらかである一方、バンパーをはじめとするエアロパーツはカクカクの平面構成の連続となり、このふたつの表情を持つボディを、1/24スケールでどうメリハリをつけて作り込むかがポイントとなるのだ。
前後フェンダーはまずはキットのボディに切り込みを入れ、叩き出すように外側に曲げて膨らませる。続いてふくよかに張り出すアーチ状のフレアを追加、これは根気強い面出し作業が求められる。一方、カクカクのバンパー類は実物をよく見て、自分の頭の中で面の構成を整理して工程を考えていく。ポイントは最後の最後まで各面端部のエッジを立てたまま残しておくこと。このエッジは次工程への基準線にもなるし、後々全体のバランスを見ながらいくらでも落とせるからだ。
ボディ改修だけでなく内装もプラモ制作のカギ!
ホイールやマフラーカッター等、AMGの定番パーツは500SL等から流用し、全体を自家調色のブルーブラックで包み込む。内装の一番の見どころはやはり電動レカロである。パーツはタミヤ911フラットノーズから流用したが、室内バランスに合わせて拡幅、リアシートに合わせた縦ステッチに変更。この際、黒い部分はあくまでダークグレーで塗装し、黒はスミ入れや細部のアクセントに使用したい。各部のウッド表現と合わせ、当時の硬派かつラグジュアリーなAMG内装が表現できたと満足していたが、いざブルーブラックのボディと組み合わせると、やはり全体的に真っ黒でよく見えないのが残念である。その様子が写真から伝わるとよいのだが。
1991年には、本家メルセデスがV8 DOHCエンジン(M119型)をミディアムクラスに載せた500Eを発売したため、AMG製のV8ミディアムクラスも次第にそちらをベースにシフトしていった。その後AMGはメルセデス傘下となり、1993年にはメルセデスとの共同開発車両であるC36がデビュー。AMGはメルセデスのいちグレードとして、マイルドな路線を主軸に歩んでいくこととなる。
レース屋直系の手作りに近いチューンドカーであった1980年代後半までのAMG。日本では「アーマーゲー」などと呼ばれていたあの頃を懐かしく感じる。闇雲に「イカツイ」とか「ワルそう」とかいった稚拙なイメージはひとまず措いておいて、独特な趣のあるヒストリックカーとして捉えると、迫力の中にも筋の通った凛々しさが見えてくると思われる。
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