三菱会心のヒット作、インディビデュアル4ドア
三菱の基幹車種ギャランの6代目にあたるE30系は、3代続いたサブネーム「Σ」が取れて心機一転、スリーダイヤのエンブレムが復活、初代コルト・ギャランのイメージを投影した逆スラントノーズやオーガニックフォルムと称するS字断面ボディなど個性的なスタイリングをまとい、1987年に登場した。WRC参戦を前提に開発されたターボ4WDのVR-4を筆頭に、ハイテク・ハイパワーなイメージは当時の世相にマッチして大ヒット作となり、1987-88年度の日本カー・オブ・ザ・イヤーを獲得している。
このE30系の中でも異色のグレードが、1989年のマイナーチェンジ時に追加されたAMGだ。現在はダイムラー傘下でメルセデス・ベンツの高性能車を手掛けているAMGだが、当時は独立したチューニングカー・メーカーとして三菱とのジョイントが可能だった。2L NA・DOHCの4G63ユニットにメカニカルチューンを加えて最高出力30ps上乗せの170psとし、トランスミッションやサスペンションも強化、専用デザインのインテリアやエアロパーツを装備したギャランAMGは、メーカー純正チューニングカーの先駆的存在である。
NAでFFながらVR-4に近い価格に割高感があったせいか、販売面ではVR-4におよばなかったAMGだが、国産車離れした爽快なエンジンフィールや軽快な操縦性は高く評価され、現存車の多くは熱烈な愛好家の庇護下にあるようだ。
ここでお見せしているのは、ハセガワ製1/24スケールのプラモデル、三菱ギャランVR-4をベースに、ギャラン2.0 DOHC AMGへと改造したもの。ボディの改造箇所はフロントグリル・エンジンフード・ドア下半分・リアスポイラー・前後バンパーと多岐にわたる。中でも工作が厄介だったのは、形状が全く異なるフロントバンパーだが、元のモールドをバラバラに分解し組み直すことで、なんとか化かすことが出来た。
VR-4のエアロをAMGに作り替えていく
まず、AMGはNAなのでターボ用のルーバーを面出しヤスリで削除。グリルをモーターツールで削除し、新しいグリルを付けるためフード前端より0.5mmほど凹ませる。バンパー上部モールのスジをタガネで彫り込み、エッチングソーで前面を切り離す。左右は補助ランプ外側(パーティングラインがある)で切断。そしてバンパー上部をプラ板で構築、裏からMr.SSPパテで補強した。切り取ったバンパー前面は上下に2分割して再利用。補助ランプ部とルーバーをプラ板の下側に接着、足りない部分はプラ板で追加。裾のエアダム部分は3分割し、左右をまず取り付ける。エアダム中央部は左右より一段引っ込めた位置に接着。このあと側面のスジ彫りを修正している。
ドア下側パネルにはVR-4のような波板状プレスはないので、全てMr.SSPで埋めて成形。リアバンパー側面も同様にし、下側のスジは埋めた後で水平に彫り直して、後側の段差にそのまま続ける。リアウィング側面のスポイラーは外側の形状を0.5mmプラ板から切り出し、三角断面のテールフィン状に成形して取り付け。ウィングはVR-4とは全く異なるので、全てプラ板で自作。左右のスポイラーとウィング部分がスムーズに繋がるように、高さや幅を調整した。
インテリアはダッシュ上面のサブメーターとセンターコンソールのオーディオを追加、前後シートのステッチ形状を変更した。シャシーはドライブシャフトやデフを除去してFF化、排気系は厳密に言えばVR-4とは異なるはずだが、詳細が不明のためキットの部品をそのまま使った。AMG純正ホイールは前期(手裏剣型)/後期(お椀型)の2種類があるが、作者の好みで前期・手裏剣をチョイス、プラ板で自作したスポーク部とアオシマ製別売ホイールのリムを組み合わせてスクラッチした。またAMGはVR-4よりも車高が低いので、ホイールの取付け位置をずらして前後とも2.5mmほどローダウンしている。
出来上がりが地味な割りには手間を要する改造だが、VR-4と全く異なる雰囲気は得難い個性だ。もう2度とこんな国産車が作られることは無いだろう。この工作、読者諸兄にもぜひトライしていただきたい。