「足のいい奴」よりイイ足のセダンGT!
かつてはマークⅡ三兄弟やコロナ、カリーナの陰に隠れて、どちらかと言えば地味なファミリーセダンであったトヨタ・カムリ。一方で1980-1990年代の海外、特に北米市場では知性派セダンとしての人気を確立、国内においてもその命脈が尽きることはなかった。そしてコロナもマークⅡ(マークX)もなき今、トヨタのアッパーミドルサルーンとして、カムリは国内においても国外においても、非常に重要な車種となっている。
【画像51枚】GTアゲインな初代カムリと、その制作工程を見る!
そんなカムリの初代モデルは、1980年1月、「セリカ・カムリ」の名でデビューした。セリカの4ドア・セダン版という位置づけだが、セリカと設計を共用するセダンとしてはすでにカリーナが存在しており、このセリカ・カムリはカリーナの兄弟車であった。ここでお目にかけているのは、この初代カムリを1/24スケールで再現した作品だ。初代カムリのプラモデル化は皆無であり、これは別車種のキットをベースとしたセミスクラッチモデルで、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の251号(2017年)に掲載されたものである。以下、作者である森山氏のコメントをお読みいただこう。
「今回の特集(注:「速いハコ車はお好きですか? 羊の皮を被った狼」と題したスポーツセダン特集)、速いハコということで題材に選んだのはこのクルマ、初代カムリ。若い読者の方からすればマイナーなファミリーセダンのカムリのどこが? と突っ込まれそうですが、デビューした時はセリカの名を冠した4ドアモデルとしてスポーティー色を強めたモデルだったんですよ。
『都会派スポーティセダン』のキャッチコピーのもと1980年1月デビューしたこのセリカ・カムリ、兄弟車カリーナのフロントフェイスの異なる輸出仕様をベースに、日本向けにアレンジしたもので、同年3月に展開開始された第5番目の販売チャンネル『ビスタ店』のラインナップのための投入でした。これは想像ではありますが、トヨタ初の横置きFF車・初代ビスタ(及び次期カムリ)の投入の筈が、開発がずれ込んだため急遽投入された急造モデルではないか? と思えるくらいに、後のモデルと明確に方向性が違います。ビスタと入れ替わる形で2年間のみ販売と言う短命モデルでしたし。
後輪セミトレで登場したカムリGTを、チェイサーのボディを切り刻んで再現!
と言っても、登場時はシングルキャブOHVでリアサスもリジッド(フロントはストラット)と凡庸な仕様のみでした。真打は同年8月に登場。セミトレーリングアーム式リアサスペンションによる4輪独立懸架と4輪ディスクブレーキを組み合わせた1800SX、2000SE、そして本命となる18R-GEU型DOHC搭載の2000GTが追加され、本懐を遂げたのです。
これは『足のいい奴』と謳った兄弟車カリーナ(すでにGTも設定)にも奢られなかったレイアウトで、かつ本家セリカでさえイメージリーダーのリフトバックGTにしか与えられなかったこのサスペンション、GTだけでなく上級グレードに展開したのには、トヨタが先進的なメカニズムを保守的なユーザーに浸透させる意味合いと、品質の安定化のための先行パイロットモデルとしてだけではなく、スポーティセダンの需要があるのかどうかを見極める、マーケティングリサーチの意味あいも持っていたのではないでしょうか?
トヨタ2000GT以来のDOHC & 4独サス&4輪ディスクブレーキという高度なメカを、2000GTを思わせるT字型のフロントグリルを採用したことでもアピールしていただけに、この方向性が初代のみで終わったのは残念ですが、そのコンセプトは、他のセダンにGTを拡大してトヨタ・ツインカム帝国の地盤を固め、次世代のセリカ/カリーナ/コロナのツインカム・ターボ軍団への布石ともなりました。
そんなセリカ・カムリ、私の従兄弟がかつて乗っていたこともあって思い入れがあり、いずれはと思っていたので、渡りに船とばかりに今回制作しました。ベースとしたのは以前のデボネアVと同じくフジミのGX71型チェイサー。これをベースに毎度お馴染みの切り・張り・削りの大改造、なんだかお約束と化している気がするんですけれども……。
しかも横幅の寸詰めから始まって全長/ホイールベースの短縮やら、両サイドパネル削りまくりやら。この年代のトヨタ車はパネル構成が絶妙なカーブを描いているので、その表現に気を使いました。今回もデカールの制作をしていただきましたSMP24様には、この場をお借りして御礼申し上げます」
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