ロングライフモデルの後を引き継いだFF高級車
三菱の高級車といえば、「デボネア」の名を思い出す人は多いだろう。プラウディア/ディグニティへとその地位を引き継ぎ消滅したデボネアだが、その初代モデルは1964年に登場している。当時のアメリカ車の流れを汲んだボディスタイルながら、それを大きく変更することなく22年にも渡って販売され、『走るシーラカンス』のあだ名でも親しまれたほどだった。
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そんな状況から一転してフルモデルチェンジが実現したのは、当時提携していた現代自動車(韓国)がソウルオリンピックに向けて高級車のラインナップを早急に必要としていたこと、同じく資本提携を結んでいたクライスラーがV6エンジンを新規に必要としていことなどが、三菱には願ってもない好状況として働いたためだという。こうして1986年に生まれたデボネアVは、現代自動車にはライセンス生産車グレンジャーとして提供され(エンジンのみ現代製)、またその搭載エンジン6G72(後の三菱にとっての主力ユニット)はクライスラーへと供給された。
開発が先行していたギャランΣからプラットフォームを流用し、当時の高級車としては異例な前輪駆動を採用、広い室内空間とトランク容積を確保していたのが、デボネアVの特徴だ。バリエーションには5ナンバー(2L)のエントリーモデルも用意、ドイツ・AMG社監修によるドレスアップ仕様までリリースし、一般ユーザーへも大きくアピールした。
こうして需要拡大とともに三菱グループ系列内での拡販(重役クラスだけでなく中堅クラスへも)も狙ったデボネアVだが、残念ながら販売面では、クラウンやセドリック/グロリアの牙城を切り崩すには到らなかった。とはいうものの、FF高級車という独自の性格が、後の上級サルーン、ディアマンテのヒットに結びついたとも言えるのではないだろうか。
セミスクラッチ……とは言えほぼフルスクラッチ
さて、ここでお目にかけているのは、このデボネアVの3000ロイヤル・エクストラを1/24スケールで再現した模型だ。デボネアVはプラモデルなど存在しておらず、当然ながらこれは自作によるものである。完全な自作、つまりフルスクラッチではなく、別車種のボディを使用したセミスクラッチだ。ベースに使われているのは、フジミ製のGX71型チェイサーだ。
そのチェイサーの中でも、使用したのはオバフェン付きバージョン。これを選んだのは、オーバーフェンダーを装着するためフェンダーアーチが切り欠かれており、ベースに使いやすいと判断したためだという。とは言え当然ながら切った貼った削ったの大改造となった。
しかし、一見困難な作業と思われるものの、作者曰く「基本はプラ板の箱組みと切り貼り、そしてヤスリ掛けでしかないので、決して難易度の高い作業ではないと思います」とのこと。また、色々なパーツをあちこちのキットから流用しているので、複数のキットを全部無駄に……と思われそうだが、実の所は、昔作って失敗したり破損した品からの流用ばかりだとのこと。皆さんにとっても何かしらの工作のヒントが見つかれば幸いだ。