これがプレミアムSUVの向かう道
創業から100年以上の歴史と伝統を誇る米国屈指のプレミアムブランドが、いよいよEVビジネスを本格的にスタートさせる。その成功の鍵を握るのは、キャデラック渾身の新アーキテクチャーを採用するリリックにほかならない。いまやテスラが幅を利かせる北米市場での実績を背景に、老舗ブランドの猛追が始まる。
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フラットでしなやかなライドフィールが◎
GMの電動化戦略の鍵を握る「アルティウム」。そのテクノロジーを搭載したBEVとして2020年、GMCハマーEVと相前後して発表されたのがキャデラック・リリックだ。その量産モデルに、短時間ながらGMのテストコースで試乗することができた。
アルティウムはパウチ型のリチウムイオン電池を積層したバッテリーモジュールをコアとしてフロアを構築、6〜24のモジュールを平置きや重ね置きなどで自在にレイアウトしながら50〜200kWhの容量を使い分け、コンパクトカーから米国内の販売的主力となるピックアップやSUVまで、実に幅広い車種をカバーする。併せてスケーラブルな前後軸のコンパートメントを構築することで、開発の工数やコストの削減も狙うなど、BEVの長所を全力で活かす野心的なアーキテクチャーだ。
リリックは床面に2×6の12モジュールを搭載し、バッテリーの容量は100kWhとなる。寸法的にみると、その車格は背が低いX6やGLEクーペといった趣だが、ホイールベースはそれらより軽く100mm以上長い3094mmと、BEVとしての特質はプロポーションにも現れている。
アルティウムアーキテクチャーに合わせて開発された3つのモーターは、その配置によって前輪駆動も後輪駆動も、そして四輪駆動も成立するように設えられている。今回試乗したリリックは、リア1モーターの後輪駆動となるが、追って前後モーターの四駆も投入される予定だ。サスペンション形式は前後5リンクとなり、前後重量配分は限りなく50:50に近く――と、BEVのメリットはここでも見て取れる。
リリックのエクステリアは、去る7月に登場したフルサイズサルーンのコンセプト「セレスティック」の存在を前提にデザインされたという。すなわち次世代のキャデラックの意匠言語を示すという、そんな役割を担うセレスティックは、GMに勤める日本人の社内デザイナーによって描かれている。
床面にバッテリーを敷く関係で、車内は微かに高床ぶりを感じるが、ホイールベースの長さに加えて後席着座時の前方への足入れ性も確保されており、少し脚を伸ばす形でゆったり寛ぐことができる。内装の意匠はエスカレードからの連続性を感じさせつつも、センターコンソールやイルミネーションの配置などで新しさを演出しており、外観ほどではないが適度に新鮮だ。
走りの面で印象的なのはフットワークの「優しさ」だ。試乗車のタイヤが標準の20インチだったことを差し引いても接地感はふわりと柔らかい。激しい凹凸を超えても上屋はフラットな姿勢を保ち、バネ下が暴れることもないが、ことさらにコンタクトを強調するでもなくヒタッと路面に追従している。ヘタなフランス車よりもフランスっぽいタッチは、これまでの打倒ドイツ車的なキャデラックの運動性能重視のセットアップとは趣を異にするものだ。
アタリは柔らかく、でも確実に路面を捉えるこのサスが、後輪駆動にして440Nmのトルクを立ち上がりから放つモーターの駆動力を丸く受け止める。この発進や中間加速時のアクセル操作に対する蹴り出しも、クルマ屋の仕事らしく上質に整えられている。日本への導入は23年以降、駆動方式は未定だが、いずれにせよキャデラックの新天地を走りの側からもしっかり伝えるものになるはずだ。
【Specification】キャデラック・リリックRWD
■全長×全幅×全高=4996×2307×1623mm
■ホイールベース=3094mm
■車両重量=2545kg
■最高出力=340ps(255kW)
■最大トルク=440Nm(44.8kg-m)
■バッテリー容量=102kWh
■トランスミッション=1速
■サスペンション(F:R)=5リンク:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F&R)=265/50R20
問い合わせ先=ゼネラルモーターズ・ジャパン ☎0120-711-276
※表中はすべて北米数値
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