TYPE R一族の末っ子は最強のテンロク・スポーツ
2022年9月2日、新型シビックのTYPE R(タイプR)がついに発売された。タイプRというネーミングは、ホンダ車を愛するスポーツカー/スポーティカー好きにとって、特別な響きを持っていることであろう。タイプR登場以前の歴代シビックにも、初代にはRS(CVキャブを2連装)、3、4代目にはSi(DOHCを搭載、ボンネットのパワーバルジが特徴)といったスポーツモデルがあったが、1997年に登場したシビック・タイプRは、それらとは段違いの熱い内容を持つものであった。
それについては、まずタイプRというグレード名そのものについて述べなければなるまい。アコード(ユーロR)、インテグラ、そしてシビックと、ホンダ車のラインナップを縦断して設定されてきたスポーツモデルであるタイプRだが、その嚆矢となったのは1992年発売のNSXタイプRである。徹底した軽量化やエンジン材質の見直し、サスペンション設定の変更などによって、サーキット走行にも対応できる本気度の高い内容を持っていたのが、その特徴であった。
こうした本格的な内容をより手軽な車種で、という意味でリリースされたのが、タイプR第2弾であるインテグラ・タイプRで、これは1995年に登場している。これもNSXのタイプRと同様に徹底的な軽量化と剛性のアップ、ハンドメイド的なエンジンのチューンナップが施されたモデルで、大変な好評を得た。これに続く第3のタイプRとして送り出されたのが、1997年のシビック・タイプRという訳である。
ベースとなったEK型シビックは6代目にあたるモデルで、「ミラクルシビック」の愛称のもとに1995年に登場した。タイプRはこのEKシビックの3ドア・ハッチバックにのみ設定されたもので、型式名はEK9となる。やはりボディはとことん軽量化され、車両重量は1090kg。これに組み合わされるエンジンは専用ユニットであるB16B型で、1.6LのNAでありながら185psという高出力を発揮した。
このB16Bは、直列4気筒DOHC、VTEC、1.6Lという、同様のスペックを持つB16A(Si-RおよびSi-RⅡ用)をベースとしたものであるが、型式名が変わっていることからもわかる通りかなりの変更が施されている。吸排気系の徹底的な見直しや、インテグラ・タイプR同様の職人の手作業によるポート研磨などが行われており、低回転域ではトルクがあって乗りやすく、高回転域では伸びの良い吹け上がりを発揮するという、相反する特性を両立させた”エキサイティングな”エンジンとなっていたのである。
これに伴い、もちろんサスペンションやブレーキも強化。インテリアにはレカロのシートやモモのステアリング、チタン製シフトノブ等が奢られ、ボディカラーはタイプR専用色であるチャンピオンシップホワイトのほか数色をラインナップ。ボディ周りには大ぶりなリアルーフスポイラーをはじめとするエアロパーツを装備、そしてそのノーズにはタイプRであることを示す赤いバッジが輝いていた。EK9型シビック・タイプRは通常のモデルと、レース用ベース車両の2種類が発売され、途中マイナーチェンジも行いつつ、2001年まで生産されている。
再登場した前期型キットにあちこち手を入れる
さて、EK型シビックのプラモデルはフジミから1/24スケール・キットがリリースされている。当初は前期型であったものが、実車のマイナーチェンジに合わせて後期型へと金型改修を行ったため、前期のキットは長らくお宝扱いされてきていた。それが2018年、ボディの金型を新たに起こすことで再び前期型を発売。ここでお見せしている作例は、このリイシューされた前期型を制作したものである。
ただし、フジミのEK9が元々持つ全体的な違和感は、金型が新しくなってもあまり変わらない。作例ではその点に手を加え、見違えるようにアップデートしているのである。まずプロポーションの改修では、小さなフロントグリルと異様なまでに低いノーズ先端、そこから滑らかに立ちあがるボンネットラインといった実車の特徴が、キットでは捉えきれてないようなので、その点の改修を試みた。ボディ側面が平面的なので、ここも手を加えている。
またヘッドライトの形状やライト内部の表情にも気を配った。特にEK9は、ライト内部を黒っぽく塗り分けるだけでも印象が変わるので、これはぜひ行うとよいだろう。内装のシート形状などにも手を加えているが、これら細かなポイントについては、具体的には工作過程の写真に付したキャプションをお読み頂きたい。
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