走る冷蔵庫!?タイヤみっつの可愛いやつ
第二次世界大戦後のヨーロッパでは、”カビーネンローラー”、”バブルカー”などと呼ばれる極小の自動車――その多くは三輪車――が人気を博していた。敗戦国ドイツとイタリアはもちろん、ヨーロッパ全域を経済的な疲弊が覆ったため、彼の地の庶民は自動車に乗ることもできず、そうした最低限度のトランスポーターで凌いでいたのである。そうしたマイクロカーの中で特に日本でも有名なのが、BMWのイセッタであろう。
【画像35枚】リアリティアップしたイセッタとその制作過程を見る!
イセッタは、元来はイタリアのイソ社から送り出されたものだった。のちにリヴォルタなどの高級GTを手掛けることになるイソだが、もとは冷蔵庫や暖房器具を製造していた会社である。一説には、冷蔵庫を間に挟み2台のスクーターを置いて設計が練られたと言われるイセッタだが、同社がこれを発表したのは1952年のこと。
冷蔵庫をおむすび型につぶしたようなボディに236ccの空冷2気筒エンジンを搭載、後輪のトレッドが極端に狭い四輪車としてデザインされたイセッタは大反響を呼び、翌年から発売されたのだが、セールス的にはなぜか失敗に終わってしまった。
これに目を付けたBMWが生産権および生産設備を買い取り、自社製品として発売。これが1955年のことなのだが、こちらの販売は大成功。BMW独自の改良を加えてエンジンを298ccに拡大したイセッタ300を追加し、イギリス向けには三輪仕様を用意するなど様々な展開が行われた。なお、イソでの設計も元は三輪だったという。こうして人気を博したバブルカーだったが、やがてそれらを駆逐していったのは、フィアット500やミニなどの小型四輪車であった。
細部に手を加えて全体をリフレッシュ!
このイセッタであるが、近年ドイツレベルから1/16スケールでキット化された以外、プラモデルはグンゼ1/24スケールが唯一のものであった。このグンゼ(現GSIクレオス)のイセッタは、初めはあの「ハイテックモデル」としてリリースされたもの。このハイテックモデルは、1980年代のグンゼが力を入れていたマルチマテリアルキットで、プラ製の主要パーツにホワイトメタルや軟質樹脂のパーツ、ステンレス製のエッチングなどを組み合わせたものである。
ちなみに、ハイテックモデルのシリーズ一作目はメッサーシュミットKR200であったが、のちにイセッタはこのメッサーとセットで、金属製パーツをプラパーツに置き換えた2台セットのキットとして、つまり謂わば廉価版のプラモデルとして再度世に送り出されたのである。しかしそれもだいぶ前のことで、永らく再販はないようだ。ここでお目にかけているBMWイセッタ300の作例は、ハイテックモデル版のキットをフィニッシュしたものである。
手の込んだキット内容が特徴のハイテックモデルだったが、出来栄えは車種によってかなりバラつきがある。このイセッタは基本的な部分は悪くないのだが、いくつか気になるポイントが散見される。まず、ボディはウィンドウまで一体の透明プラ成型で、塗装が容易でない。車高が妙に低く、幅も広い感じがする。細かいようだが目立つ点としては、ヘッドライトの砲弾型ケースの形が寸胴でメッキリムも太く、出来上がりの印象をなんともオモチャっぽく見せているようだ。
作例ではそうした点に手を加えてリフレッシュを図っており、大いに面目を一新している。さらに、ドアとステアリングの連動やエンジンフードの開閉などのギミックを盛り込んで、非常に見ごたえのある作品となった。その工作については制作過程の写真に付したキャプションでも細かく触れているので、ぜひ参考にして頂きたい。
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