パサートシリーズに待望のプラグインハイブリッドモデルが追加導入された。先代モデルに比べバッテリー容量を30%増強し、EV航続可能距離も延長されている。まずはワゴンボディのヴァリアントのみ設定だが、最新の運転支援システムも全車標準装備するなど、安全性もさらに向上している。
EV航続可能距離も延長された最新PHEVが登場
パサートの日本仕様は2021年4月にマイナーチェンジを受けており、そのときに一旦はプラグインハイブリッドのGTEはラインアップから落とされていたが、1年が経って復活。以前のモデルよりも進化して帰ってきた。バッテリー容量は従来の9.9kWhから13kWhへと増やされ、EV走行距離は51.7kmから57kmに伸長している。
環境対応車ながらGTEの名の通り、グランドツーリングや走りが楽しめるモデルでもあるのが特徴だ。そこで今回は比較的に長距離での試乗としたが、満充電でスタートし44kmまではEV走行ができた(一般道7km+首都高速37km)。モーターだけでも85kW(116ps)、330Nmで上限130km/hまで出せるのでストレスなく走ることができる。その後はほとんどが高速道路で目的地に到着した時点での走行距離は118.5km。平均燃費は23km/Lと表示されていたが、EV走行分を抜いた純粋なハイブリッド燃費は14.7km/Lだったことになる。カタログのハイブリッド燃費は15.9km/Lなので実燃費との乖離は少ないほうだと言えるだろう。一般的に小排気量エンジン搭載車は、高速道路では乖離が大きくなりやすいもので、パサートGTEはボディのわりには小さな1.4Lターボだが、強力なモーターと組み合わせたハイブリッドだからトルキーで燃費が良好なのだ。
ドライビングモードは「EVモード」に「ハイブリッドモード」、そしてスポーティな「GTEモード」の3種類が用意される。ハイブリッドモードではSOC(充電レベル)を任意に設定することが可能となっているので目的地付近でEVモードを使いたいというときなどは便利だ。
GTEモードはエンジン稼働率が高く、アクセル操作に対するレスポンスも良くてスポーティだ。ゴルフGTEは電動版GTIとも呼ばれていたが、まさにそんな雰囲気であり、環境対応車だということを忘れてしまう。EVモードやハイブリッドモードは静かで上質な走りだが、一転して肉食な雰囲気になるという二面性がプラグインハイブリッドの魅力だろう。
従来から定評のあったシャシー性能には磨きがかかっていた。試乗車は上級グレードのアドバンスだったのでDCC(アダプティブシャシーコントロール)が装備されていたこともあってどんな場面でもダンピングが適切。街中など低速域ではソフトタッチで快適ながら高速巡航ではいやな硬さはなしにボディをフラットに保ち続ける。GTEモードではさらに粘り腰になりスポーティな手応えとなってくる。
さらにアドバンスには電子制御ディファレンシャルロックのXDSが装備されているのでハンドリングもスポーティだ。FFとしてはパワートレインのトルクが図太いのでコーナーでアクセルを強く踏み込めばアンダーステアが出そうなものなのだが、そういったそぶりはない。タイトコーナーの立ち上がりでグイッとアクセルを踏みつけても、見事なトラクション性能をみせてフロントタイヤが向いている方向にグイグイと進んでいくのだ。標準車とアドバンスでは約50万円の価格差があるが、DCCとXDSにはそれ以上の価値がある。
広大な室内スペースや質感の高い内外装などパサートならではの魅力はそのままにプラグインハイブリッド化されているGTE。燃費や燃料コストに優れるだけではなく、快適性やスポーツ性の両方が大いに高まっているのが特徴だろう。強力なモーターとエンジンのいいとこ取りによってBEVよりも興味を惹かれるモデルとなっているのだ。
【Specification】フォルクスワーゲン パサートGTEヴァリアント アドバンス
■全長×全幅×全高=4785×1830×1510mm
■ホイールベース=2790mm
■車両重量=1770kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ+モーター/1394cc
■最高出力=156ps(115kW)/5000-6000rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/1550-3500rpm
■モーター最高出力=116ps(85kW)
■モーター最大トルク=330Nm(33.6kg-m)
■トランスミッション=6速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク
■タイヤサイズ(F&R)=235/45R18
■車両本体価格(税込)=6,838,000円
■問い合わせ=フォルクスワーゲングループジャパン ☎0120-993-199