ゴルフⅠカブリオ(前期型)1980~84年
’79年のジュネーブショーで初披露され、同年6月から生産が開始された初代ゴルフ・カブリオは’80年4月から国内販売を開始。手動開閉式の幌は工夫されたフレームとガスダンパーのおかげで造作無く開閉できたが、たたんだ幌をボディ後方に積み上げる方式だったため、オープン時の後方視界が犠牲となる。後に10cmほど下げられて視界を確保する。
初代ゴルフ・カブリオ誕生。プレミアム度は歴代No.1
初代ゴルフ・カブリオのデリバリー開始は’80年4月。ゴルフIの上陸から約4年が経過していたが、’78年まではビートルのカブリオが販売されていたこともあり、VWのオープンモデルの空白は2年足らず。国産オープンカーは存在していなかった時代だけに、そのプレミアム感はかなりのものだったが、価格もプレミアムたっぷりの371万5000円。誰もが気軽に手を出せるオープンカーではなかった。
搭載エンジンはベースとなったゴルフGLEと同じEJ型1588ccで、左ハンドルの5速MTのみ。ロールバーやダッシュボード裏の補強、幌の開閉システム(手動だが)のおかげで車重は960kgと、ベースとなったGLEより100kgも重くなっている。リアウインドーは熱線入りのガラスでクローズド時の後方視界はしっかり確保されていたが、オープン時はたたまれた幌がリアシート後方に盛り上がるスタイルだったため、バックするときは意外と後方が見にくかったのも事実だ。
デビュー7カ月後の’80年11月には、他のゴルフとともに搭載エンジンが1715ccのEN型へ変更。最高出力は82psから78psへとダウンするが、最大トルクの増加でドライバビリティは向上。ミッションは5速MTのままながら、シロッコと同じギア比のエコノミータイプへと換装されている。そして約1年後の’81年10月には’82年モデルが発売され、車名が「GLiカブリオ」に変わるとともに、ミッションもATへと変更。このとき、幌をたたんだ際の厚さが10cmほど低くなるように改良され、ルーフオープン時の後方視界を改善。アルミホイールが標準装備となるなど装備も充実する。
’83年モデルでは大きな変更点はなく、水温計がタコメーター内にビルトインされた程度。しかし、価格は393万5000円と400万円に迫り、当時のゴルフのベーシックバージョン(177万5000円)の倍以上。シロッコやアウディ80より高いゴルフとなる。
ゴルフⅠカブリオ(後期型)1984~92年
ゴルフIIの時代になってもカブリオはⅠボディのものがそのまま販売される。エンジンは排気量が拡大されて1780ccとなりドライバビリティは向上。’88年モデルからはヘッドライトがGTIと同じ4灯式となり、’90年モデルから幌が電動開閉式となる。’91年に設定された特別限定車「クラシックライン」は大人気で、再び’92年に追加設定されている。
IボディのままゴルフIIの時代を駆け抜けたカブリオ
9年ぶりのモデルチェンジを受けたゴルフIIが日本上陸を果たしたのは’84年の4月だが、その時点でひとまずカブリオはラインナップから消滅。だが、11月には早くも’85年モデルのデリバリーが開始され、GLiカブリオも復活。ボディはIのまま変わらなかったが、エンジンは1780ccのJH型を搭載。他のゴルフやジェッタに積まれたGX型より最高出力で5ps、最大トルクで0.5kg-m上回り、車重は相変わらず100kgぐらい重く、1トンを超えていたものの、活発に走れるカブリオへと変身している。
このゴルフII時代のカブリオ(後期型)は375万円と、Iの最終時期より20万円近く安くなっていたが、’86年モデルでは19万円もの値上げで394万円となり、これは歴代ゴルフ・カブリオの中でも最高値。アルミホイールは履いているが本革シートが標準装備というわけでもなく、初上陸を果たしたばかりのGTIより37万円も高い、まさにプレミアム価格だった。円高の進行により’86年2月にはVW車全体が値下げされているが、それでも391万円と高止まり状態が続いた。
’87年モデルはリアのエンブレムがGLiから「CABRIOLET」へと変わり、ウインドウォシャーノズルがダブルになるなど細部に改良を受ける。電子同調式ラジオ付きオーディオが標準装備になったりもしているが、一方で価格は382万円と9万円もプライスダウン。円高がさらに進んで輸入車の価格が安くなる時代を迎えることになる。
そして’80年のデビューからずっと同じルックスではさすがに面白くない(!?)と感じたのか、’88年モデルではGTIとともにヘッドライトを4灯式にチェンジ。当時の保安基準に適合させるため内側2灯は点灯しない構造となっている点もGTIと同じだ。その他にもボディ同色のエアロキットが装着され(バンパー/フェンダーアーチモール/サイドシル)、インテリアではステアリングホイールの形状も変更。エンジンはJH型のままだがタペット調整の不要な油圧タペットとなる。
’89年モデルではウインドーフレームとドアトリムがクロームメッキからブラックに変わり、マルチファンクション・インジケーターが標準装備されるが、さらに価格が15万円も下がって367万円とかなりプライスダウン。この頃はマルク高に加えて物品税廃止&消費税導入で価格がかなり変動しているが、’89年10月発売の’90年モデルでは消費税抜きで333万円まで下がっている。
一方で幌の開閉機構が電動式となり、パワーウインドーも標準装備。エンジンも燃料噴射システムがKEジェトロニックから電子制御のデジファントへ変更され、型式も2H型と呼ばれるようになる。幌に関しては手動開閉機構のときもガスダンパーを備えた優れものだったが、電動開閉となったことでクオリティが一段と増したことはいうまでもない。
’91年モデルではシートやドアトリムが一部変更され、電動幌の開閉スイッチがセンターコンソールからダッシュボードに移動。そしてゴルフIIの最終年度となる’92年モデルでは、間欠ワイパーの採用や新たなボディカラーの追加などが行なわれている。
このゴルフII時代のカブリオで忘れてはならないのが特別限定車の設定だ。’85年にはカブリオ初の限定車となるメイ・ホワイトが発売されているが、その6年後の’91年6月には記念すべき初代クラシックラインを300台限定で発売。本革シート、スペシャルボディカラー(グリーンパール&ブルーメタリック)、鍛造アルミホイールなどを標準装備としながら、標準モデルに対して14万円高の367万円とかなりお買い得だったこともあり人気が集中。なかには抽選で購入者を決めたディーラーもあったほどだという。
その約10カ月後の’92年3月にもクラシックラインの第2弾(371万円)を、今度は360台限定で発売しているが、これもすぐに売り切れてしまい、後に中古車市場で高い人気を得ることになる。
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