プロダクトアウトからマツダ流マーケットインへ。今はマツダ地獄ではなくマツダ天国!?

平井大介
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2020/12/07 12:00

CX-5、CX-8、6の商品改良とブラックトーンエディション設定に見る、マツダのクルマ作りの変化!

12月3日、マツダはCX-5、CX-8、マツダ6の商品改良を発表。同時にそれにマツダ2を加えた4モデルに『ブラックトーンエディション』という、特別仕様車を設定。それぞれ発売を開始した。……情報としては以上で、各モデルの概要は簡単に文末に記したが、ここでは、そのプレスリリースに書いてないことをお伝えしたい。テーマは、『マツダにおけるプロダクトアウトとマーケットイン』だ。

今回は発表前に行われる事前取材会に赴いたのだが、マツダの取材会では珍しく開発責任者である主査に加え、営業担当者がプレゼンの壇上に立った。だいたいは主査やデザイナー、新技術の担当者などが登場しその想いを熱く語るのに、だ。そこで興味がわいて、撮影そっちのけで国内営業本部ブランド推進室の二宮誠二さんにお話を伺った。

2012年にデビューした初代マツダCX-5。『スカイアクティブ』とブランディングされた新技術搭載の始まりだ。

その前に、前提の話をしておきたい。2012年に登場した初代CX-5から、マツダは大きく変わった。”躍進”という書き方が正しいだろう。『スカイアクティブ』とブランディングした立て続けの新技術導入、『魂動デザイン』と呼ばれる輸入車顔負けのスタイリング、『一括企画』による2年、4年というモデルチェンジサイクルに囚われない商品改良。”人間中心”を掲げる室内にいる全員の気持ちよさの追求……。その結果、この10年近くでその雰囲気はガラリと変わり、少なくとも「最近のマツダ、カッコイイよね」と思っている方は多いのではないか。

それらは”プロダクトアウト”の代表的な例だと思っていた。もちろん市場は見ているが、基本的に自分たちが作りたいものを作りそれを世に問う。それで生み出されたメッセージ性の強いクルマたちにかく言う私も共感し、それらをお勧めする記事をたくさん作ってきた。一方ここで言う”マーケットイン”は市場のニーズありきの商品で、もちろんそれを否定しないが、他社メーカーの新車の中にはユーザーに媚び過ぎていて、自動車趣味人には勧められないと思うクルマも多かったのだ。

しかしここ1年くらいマツダが発表してきた特別仕様車(下の写真はその1台となるCX-3アーバン・ドレッサー)などを見ていて、ちょっとマーケットインに寄り始めている? と感じていた。今回の商品改良や仕様車も同じ匂いがする。そこで二宮さんにそのあたりの”感覚”をいきなり伝えてみた。

「6~7年前は企画に営業が入っていくことは、あまりなかったんです。基本的には開発が作ったものから選択していました。しかし今は『共創活動』といいまして、開発と毎週のように打ち合わせをしています。これは以前なかったことです」

それが顕著に出たのが今回のCX-8(下の写真。詳しくは本文一番下で)だ。海外向けにはフルサイズのCX-9があるので、CX-8は特に日本市場を強く意識したモデルではあるが、「営業の要望はほぼやってもらいました」と二宮さんは嬉しそうに語る。

2012年以降、マツダ車は感度の高い人やクルマ好きに自然と売れてきたが、それも最初だけで、以後はフォロワーが中心の購買層になってきていると二宮さん。そこで「同じやり方ではできませんし、そういったフォロワーの方に受け入れて頂かないといけません」。

そうして誕生していったのがここ最近の商品改良モデルであり、特別仕様車であるのだが、その努力もあってかユーザーに変化がでてきた。買い替えのサイクルが短くなってきたというのだ。そしてこちらが聞く前に二宮さんの口から出てきた『マツダ地獄』の言葉。大幅な値引きを繰り返し販売することで台数は伸びるが、ユーザーが買い替え時に下取り価格の安さで地獄を見るという現象を表した例の言葉である。

2014年より始まったマツダの新CIショールーム。ブラックを基調としたスタイリッシュなイメージ。

「『マツダ地獄』を変えたいと思い、何度も取り組んできまして、2012年以降変わってきました。商品もその価格設定もよかったのだと思います。『スカイプラン』という残価設定ローンも4割くらいの方にご利用頂いています。洋服を変えるように、月の支払い金額が同じなら新しいほうが、と思われるようです。例えばロードスターですと、NAやNB(初代、2代目)の方は買われたらずっと長く乗られていましたが、ND(現行型)の方は『幌に新しい色が出たので乗り換える』というケースもあるんです」

ということで、CX-5からまたCX-5に乗り換えたり、ディーゼル車からまた別のディーゼル車に乗り換えたりと、マツダの魅力にはまって抜け出せない、ある意味『マツダ天国』みたいな状況が発生しているようだ。スタイリッシュな最新CIのショールームもそれを後押しするが、販売する現場も変わってきている。

「販売会社の営業の方も、今のクルマ、売り方しか知らない人が増えてきています」。そう、例えばソウルレッドのクルマを見て「マツダの赤いクルマは素敵だな」といった、漠然とした憧れを持ってマツダのディーラーに就職する方も多い様子なのだ(下の写真が今回商品改良を受けたCX-5で、ボディカラーはソウルレッドクリスタルメタリック。詳しくは本文一番下で)。

また同じテーマを歴代CX-5、CX-8、アテンザ(6)を担当してきた商品本部の松岡英樹さんに投げかけてみたところ、やはり同じような反応が返ってきた。

「お客様の意識も変わってきていまして、『こんなにいいものを作った』と思っていても、以前ほど届かなくなりました。いかにライフスタイルをイメージできるか、どんな価値観を提供できるか、エンジニアが考えなければいけません。そこで、企画、マーケティング、開発、財務といったそれぞれの担当が一体となって『共創活動』を行い、ひとつのテーマに対してどう考えるかを語り合っています。以前はモノありきでしたが、最近はお客様視点に変わってきました」

松岡さんはカスタマーの”目が肥えている”という言い方もしていて、ニーズを捉えて新しい提案をしないと生き残れないとも考えている。つまりは、これまでのプロダクトアウト一辺倒から、共創活動を通じた”マツダ流マーケットイン”への変化。これはユーザーに媚びるのではなく、新たな提案で新しい景色を見せるためのマツダの新たな挑戦だ。もちろん簡単な話ではないが、取材者としてはまた別の意味で興味が湧いたのであった。

 

  • ●特別仕様車『ブラックトーンエディション』の主なポイント

・CX-5、CX-8、マツダ6、マツダ2(以下写真)の4車種に設定

・ドアミラーとホイールに黒を採用。室内では赤を強調した素材やパーツを使用

・取材車はポリメタルグレーだが、ボディカラーは他も選択可能

●マツダCX-5/CX-8商品改良の主なポイント

【CX-5/CX-8共通】

・ディーゼルエンジンの最高出力が190ps/4500rpmから200ps/4000rpmに。同時にアクセルペダルの操作力を最適化し、コントロール性が向上

・6速A/T(2.5Tを除く)の応答性を向上

・センターディスプレーを大型化し、コネクティッドサービスを導入

【CX-5】

・100周年記念車に25Sを追加設定(以下写真はブラックトーンエディション)

【CX-8】

・ハンズフリーパワーリフトゲート、ワイヤレス充電機能追加

・上位グレードでフロントグリルの形状を変更し、新色『プラチナクォーツメタリック』設定(以下写真)

・最上位グレード『エクスクルーシブ・モード』では19インチアルミホイールのデザインを変更。フロントバンパー下部にガーニッシュを追加し、ワイド感を増したテールパイプを採用。内装ではシートにソフトなキルティングを施した。7人乗りも追加

●マツダ6商品改良の主なポイント

・外装色にポリメタルグレー追加

・100周年特別記念車を2.5Tに追加設定(以下写真はブラックトーンエディション)

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