「これはこれで楽しい」と理屈でなく官能に訴える
アルファロメオ・ステルヴィオも同様に、何か血迷っている。Q4ゆえのオンデマンド方式のクワトロシステムは、基本をFRとしているというから開いた口が塞がらない。前後駆動配分はリア100%伝達が平時だというのだ。スタビリティが必要ならば最大50:50までトルク配分するというものの、スリリングなフットワークを見舞うことは明らかだ。
何にもまして、ステアリングギア比が12.1だという。切れ味自慢のスポーツカー並みの数値である。その必要がどこにあるのか、「?」マークを頭に浮かべたままのドライビングは、終始その剃刀のような切れ味にビクビクと怯え続けたのである。
そもそも車名は、「悪魔の梯子段」との異名を持つステルヴィオ峠に由来する。その名は当代随一のスーパースポーツカーにのみ与えられるべきネーミングではないのか?
その点ではややホッとできたのがX4Mである。直列6気筒3Lツインターボは、510psと数値的には強力だが、全域にフラットなトルクが散りばめられており破綻がない。サウンドも進軍ラッパのようには響かない。シルキー6ならではの粒の揃った爆発を感じさせる。剛性感たっぷりのハンドリングは頼もしく、それでいてスタビリティが整っている。アクティブMディファレンシャルは、切れ味と安定感をバランスさせてくれていた。高性能キャラクターは、想像の範疇だった。乗り心地は相当に硬派である。主砲に詰めた爆弾を撃ち込むような破壊力があるのに、どこか理詰めの安心感に気が安らいだ。
と感じたことを自覚して汗が流れた。そもそも今回集めたSUVは、やや本分を踏み外した異端である。SUVの「S」がスペースではなくスポーツだとしても、ユーティリティを犠牲にしてまで踏み込む意義が曖昧ではある。その過激な世界観は、地を這うように重心の低いスポーツカーに任せておけばいい。だというのに、X4Mがそうであるようにルーフをスラントさせ、後席の乗員に多少の不便を強いてもそのスタイルにこだわった【玩物喪志】に違いない。だがそれが、これはこれで楽しい……と感じさせてしまうから恐ろしい。むしろ、Fペイスやステルヴィオのような刺激が中毒になっている自分に気がついて汗が流れるのだ。
世の中にこんな狂気があってもいいよねって思わせてしまうこの3台はやはりどこか狂っている。
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