名門ブガッティが放つウルトラスポーツの真実
OVID -19感染拡大はブガッティにも当然ながら暗い影を落としている。3月のジュネーブ・ショーで世界初公開の予定だったピュールスポール(英語読みでピュアスポーツ)もインターネット上での発表となり、さらに3月20日にはモールスハイムでの車両の生産をストップしたのである。ただし、筆者は幸運なことに本格的な感染拡大が始まる前の2月半ば、この最新モデルの発表会に出席、実車を前にして詳細を知ることができたのでお伝えしよう。
まず最初に、このウルトラスポーツ誕生に至った背景を、同社CEOのシュテファン・ヴィンケルマンはこう語った。
「一般的に、ブガッティの多くのオーナーは自らステアリングを握るチャンスは少なく、ほとんどの車両はプライベートミュージアムに仕舞い込まれていると言われていました。しかし、実際にオーナーと会話するなかで、多くの方々がもっとアジャイルなダイナミック性能、コーナリングスピードを公道上で求めていることが分ったのです。それを実現させたのが『ピュール(純)スポール』です」
すなわち、究極のブガッティ製ロードゴーイングマシンというわけだ。その動力性能は圧巻で、50kgの軽量化と18%落とされたギア比によって0→100km/h加速は2.3秒、200km/hまでは5.9秒で到達するという。
そして、このウルトラスポーツの取材後、我々ジャーナリストは開発センターの奥にあるデザインセンターへと案内された。すると驚いたことに、そこにはこれまで噂されていた数々のモデルが整然と置かれていたのだ。それらはコンセプトモデルとしてほぼ完成され、量産直前にキャンセルされたもの、あるいはデザインスケッチの段階で中止されたものなど実に様々。たとえばアトランティック(PB2015)はブガッティ史上、最も美しく、高価になるはずだったモデル。直列8気筒エンジン搭載を誇示する超ロングノーズが特徴で、このコンセプトモデルは2015年のペブルビーチに出展、その後の反響をみて生産計画を立てる予定だったが、親会社であるVWのディーゼル・スキャンダルで見送られてしまった。
このほかヴェイロン・バルケッタなど、人類の宝ともいえる素晴らしい創造性を発揮した作品の数々。しかし、それらが経済恐慌や欺瞞など人間の負の営みにより消え去るのも皮肉な運命ではある。
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