アップデートし続けるリアルオフローダーの真髄とは?
ジープの魅力をひと言で表現するならば、やはり、ブランドのキャッチコピーでもある「Go anywhere, do anything」に収斂されるだろう。今回デトロイトで行われたトレイルレイテッドに関するワークショップでは、この言葉の背後にある精神性や技術革新が語られ、ジープの真髄に触れることができた。
ジープの走破性のキモはクロールレシオにあり
日本でジープが売れている。数年前はよく耳にする令聞だったが、昨今街で出会うジープの数からすると、数字的な裏付けを確認するまでもなく、紛れもない事実だろう。2015年に国内導入された初代レネゲードや2017年に登場した2代目コンパスがジープの新しいプレゼンスを示す一方、伝統のラングラー、とりわけアンリミテッドが30〜40代の新しいカスタマーの心を掴み、それら2モデルを凌ぐほどの人気モデルへ躍り出たのがおおよそのサクセスストーリーだが、1990年代後半、XJ型チェロキーの日本での爆発的なヒットを思い返すと、ジープは日本でウケる素性を持ち合わせているのだろう。
JEEP WRANGLER
Water fording【渡河性能】
さらに世界に目を向けてみると、10年前の2009年は、世界中で約30万台のジープブランドモデルを販売したが、 昨年の2018年は160万台を販売。2009年までは米国の4つの工場のみで生産していたが、現在は世界6カ国に10の工場があり、生産量は劇的に増加している。
イタリア、ブラジル、インド、中国、そして日本では年々ジープの需要は高まっているが、その人気車種や使い方はローカライズされている一方、ジープには変わらないアイデンティティやクルマづくりのポリシーがある。
JEEP GLADIATOR
そのような”ジープイズム”をあらためて理解するワークショップが、ジープを擁するFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が所有するミシガン州のチェルシーテストコースで行われた。オフロード開発責任者のバーニー・トラウトマン氏から貴重なプレゼンテーションを受けた後、トレイルレイテッドのバッジを付けた各モデルをオフロード走行させ、その真髄に迫った。
コースにスタンバイしていたのは、ラングラー・ルビコンをはじめ、トレイルホークと呼ばれるグレードのグランド・チェロキー、チェロキー、コンパス、レネゲード、そしてラングラーの派生モデルとなるピックアップトラックのグラディエーター・ルビコンだ。
JEEP RENEGADE
ジープは性能評価の指針として、「渡河性能」「接地性能」「最低地上高」「駆動性能」「操縦性能」の5つのテストを課している。これらのセクションをクリアでき、なおかつ激しいテストの後でもオンロードを通常通り走れることが、トレイルレイテッドの絶対条件とされる。全モデルで同じコースを走ったが、エントリーモデルのレネゲードとコンパスはセクションによってはアプローチを模索しなければ突破できなかったものの、今回この2車種の走破性にはあらためて驚かされた。
JEEP COMPASS
Traction【駆動性能】
レネゲードとコンパスが搭載する1.3Lと2.4Lの4気筒マルチエアエンジンは、179ps/270Nm、175ps/229Nmを発揮。下位グレードのレネゲードの方が最高出力/最大トルクのスペックは優秀で、実際に「駆動性能」を試す上り坂では、レネゲードの方が高い登坂能力を実感。しかし、トラウトマン氏によれば、オフロード走行ではエンジンパワーよりもクロールレシオ(低速走行比)の数値が重要で、これが高いほど僅かなペダル操作で大きなトラクションを地面に伝えることができるとレクチャー。クロールレシオを比較すると、レネゲードが21.5:1なのに対して、コンパスは20.4:1となることから、レネゲードの方がトラクションの伝達率は高い。ちなみに、チェロキーが51.2:1、グランド・チェロキーが44.2:1、ラングラー&グラディエーターが84.2:1となり、ラングラー一派の走破性は一目瞭然。すべてのモデルで登坂セクションを駆け上がったが、数値の高さ=トラクションの伝達率の高さを確認することができた。