5台の中心的存在はケイマンとボクスターだ
同じミッドシップながらA110は軽量コンパクトにこだわったモデル。車両重量はわずか1100kgでケイマンよりも250kg軽いから、動きはまるで違う。1.8Lターボは252psだが、0→100km/hは4.5秒。ケイマンのPDKよりもわずかに速い。
A110のハイライトは実に俊敏性の高いハンドリングだ。今回の5台のなかで飛び抜けて軽量で、唯一4輪ダブルウイッシュボーンを採用していることからもそこへのこだわりは見て取れるが、ワインディングでも常にニュートラルな感覚でまったくストレスなく曲がっていくのは痛快だ。たっぷりとストロークをとってもアライメント変化が少ないダブルウイッシュボーンだから、俊敏性としなやかさが両立されている。718ケイマン/ボクスターほどスタビリティは高くなく、ほどよい感覚でテールスライドも起こすが、コントローラブルだからあえてこの特性にしてある。マニアックにハンドリングを楽しみたい向きには堪らないモデルだ。
Z4は古典的なハイパワーFRの興奮を具現化したモデルだった。3L直6ターボは低回転から強大なトルクを発生しつつ6500rpmまでシャープかつ滑らかに回り、じつに官能的。アクセルを踏みつければ即座にエクスタシーに登り詰められるほどだ。
ミッドシップから乗り換えるとノーズの重さを感じるのは否めないが、それでもワイドトレッド&ショートホイールベースにこだわったことでFRとしては異例なほどの俊敏性をみせる。BMWらしいのは、コーナーへ向けてステアリングを切り込んでいくと外側前輪がスッとストロークしてわかりやすい動きをしてくれること。狙ったラインにのせていきやすく、ワインディングランでのリズミカルに走れる。
基本骨格やエンジンを共有するGRスープラは、クーペでピュアスポーツを標榜しているとあってもう少しハードな設定だった。コーナー入り口ではあまりロールを感じさせずミズスマシのような動きをみせる。ワインディングではZ4のほうが素直で走らせやすいと感じたが、GRスープラはサーキットなどもっと高負荷域で真価を発揮するのだろう。エンジンも基本的には同様だが、サウンドデザインの違いからかZ4のほうが澄んでいてよりシルキー6らしさが出ていた。
Z4もGRスープラも直6の官能性でライバルを寄せ付けないが、ハンドリングを楽しむという観点ではややノーズが重たく、下位グレードとして用意される2L直4のほうが向いているだろう。
今回の5台はドライビングプレジャーが高い上に、デイリーユースにも適している秀逸なモデルばかりだったが、やはり718ケイマン/ボクスターはど真ん中にデンと構えていることを強く感じた。俊敏性ではA110が、エンジンの官能性ではGRスープラ/Z4に分があるが、シャシーのクオリティは圧倒的に高く惚れ惚れするほど。ワインディング、サーキット、そしてロングドライブと、どんな場面でも高い満足度を与えてくれるから、長く付き合っても飽きが来ないだろう。
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