「アウディ・クワトロ」は圧倒的なパフォーマンスを誇る精緻を極めたメカニズムを誇る【世界の傑作車スケルトン図解】#10-2

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フルタイム4WDという高性能車の新ジャンルを築く

1980年発表のクワトロは自動車の世界に4WD乗用車というジャンルを生み出したクルマだ。デビューするなりラリー競技で活躍し、WRCで2度のマニュファクチャラーズタイトルを獲得。そのパフォーマンスは目を見張るもので、その後のラリーがターボ+4WDで占められる契機になった。またこの成功はアウディがVWグループの中において確固たるアイデンティティを確立し、マーケティング的にも高級高性能路線を推進する上でも重要な役割を果たした。

有名な1986年のスキージャンプ台を駆け上がるCM。撮影はアウディ100クワトロにスパイクタイヤを履き、安全索を装着して行なわれたが、トリックはなしで実際にこの急勾配を走破している。

クワトロのアイデアは雪の上で生まれた。氷雪路での走行テストで、グループ内で製造されていた軍用4WD車のVWイルティスが、あまたの高性能乗用車を寄せ付けぬ高性能ぶりを発揮することに着目したエンジニアが、アウディ80のコンポーネンツを使って4WD車を作るというアイデアを想起したのだ。

スポーツクワトロはWRCで23勝し、2度のマニュファクチャラーズタイトルを得た。

自動車メーカーはこの時代、4WDは乗用車にもメリットがあることに目を向け始めた時期だった。パートタイム4WDであり舗装路には適さなかったものの、北米ではAMCイーグル(1980年)、日本ではスバルレオーネ4WD(1971年)が先鞭をつけた。最初のフルタイム4WDの量産車は、クロスカントリーカーのレンジローバー(1970年)だったが、フルタイム4WDで乗用車という基準に照らせば、やはりクワトロがこのジャンルの先駆者だといえる。

ドライビングの神様ワルター・レアも1984〜1986年シーズンにスポーツクワトロS1E2に乗った。

クワトロ開発のベースになったのは縦置きエンジンのFF車アウディ80だ。縦置きなのでもともとフロントデフはギアボックスの前(ベルハウジングの後)に位置していたが、4WD化に当ってこの基本レイアウトを維持した4WDメカが考案された。それはマニュアルミッションのカウンターシャフトを中空2重構造とし、外側軸がセンターデフ(ミッション後方に配置)に繋がり、その先の後輪はプロペラシャフトを介して駆動され、前輪はカウンターシャフト内側を通る出力軸で駆動された。

スポーツクワトロはWRCで23勝し、2度のマニュファクチャラーズタイトルを得た。

このユニークな構造でクワトロのパワートレインはコンパクトで低重心、しかも左右対称という機能的レイアウトを実現。もっともこの構造はMT専用だったので、後継モデルでATが求められるようになり、ギアボックス横にフロント駆動軸を通す別システムが開発された。

スポーツクワトロはFIAのホモロゲーション取得用車で、ターボ系数対応の小排気量、カーボンケブラーの幅広フェンダー、傾斜の立ったフロントウインドー、短縮されたホイールベースが特徴だった。

クワトロと言えばトルセンセンターデフが有名だが、採用は1987年からで、それ以前はオープンデフに手動デフロック機構(センターとリア)を備えた構造だった。センターデフはオンロード走行には最適だが、滑りやすい路面で空転を誘発しやすいため、ロック機構が設けられた。これにより低μ路での発進限界が大幅に高まり、その威力はあの有名なスキージャンプ台を駆け上がるCMでも名高い。

FIAのホモロゲーション取得用車であったスポーツクアトロは、ターボ系数対応の小排気量も特徴。

初代クワトロが伝説となったのは、5気筒ターボの快音を残し、火を吐き、ワープのごとく加速するグループBクワトロの無敵の快進撃によるもの。WRCでの記念すべき初勝利はミシェル・ムートンによるもので、女性によるWRCの初勝利でもあった。歴史に名を残すクルマはドラマチックなエピソードに溢れているのだ。 WRC参戦は多くの技術資産も残した。ターボのアンチラグシステムや、今のDCTの先駆けであるクイックシフトメカなど、枚挙にいとまがない。

 

解説:竹平誠

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