操る楽しさや風や音を感じて刺激的かつファンなドライブを楽しめる
そこに組み合わされるギヤボックスは911GT3の後期型にも搭載されていた6速MTのみの設定。PDKを選ばなかったのは「サーキットでタイムを削るようなモデルではないこと。6MTの方が25kgほど軽いこと」が理由だという。また7速MTではなく6速MTを選んだのは、シフトフィールが優れていることと、ギヤが1枚少ない分軽量だからという答えが返ってきた。
ミートポイントのわかりやすいクラッチと、コキコキと小気味よく決まる6速MTを駆使しながら走らせる911スピードスターは、本当に楽しい。またヒルアシストと任意でオン・オフ可能なシフトダウン時のブリッピング機能(この出来がまた最高)がついているので、MTに乗り慣れていなくても心配する必要はない。
足回りはGT3そのもので、PTV、RASM、PTV、PSM、PCCBといったお馴染みのデバイスが標準装備されている。またドライ路面では絶対的なグリップを誇るミシュラン・パイロット・スポーツ・カップ2とリヤアクスルステアもついているので、不慣れな(しかも道幅も狭く、ミューも低い)サルデーニャのワインディングでも、安定した姿勢で速く、かつスムーズに走ることができた。試乗する前はオープン化したボディと510psのエンジンのバランスが取れているか心配だったが、シャシーがよれたり、足回りがバタつくこともなく、剛性に関する不足はまったく感じられなかった。これには、走行状況によって硬さを変化させるダイナミックエンジンマウントの効果も大きいと思われる。
もちろん911GT3の0-100km加速3.4秒(PDK)、最高速度320km/hに対し、0-100km 加速4.0秒、最高速度310km/hというスペックが示すとおり、サーキットに持ち込んで本格的なタイムアタックを行えば、GT3の方がスピードスターより圧倒的に速いのは間違いない。しかし、サルデーニャのワインディングを散々楽しんだうえでの率直な感想を言うと、操る楽しさや、風や音を感じて刺激的かつファンなドライブを楽しめるのは、俄然スピードスターの方だと思う。
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