【海外試乗】史上最大のトライデントをミッドに!! 空から降り注ぐ刺激的な旋律『マセラティMC20チェロ』

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マセラティ渾身の一撃ともいえるMC20に、オープントップのチェロが追加された。イタリア語で“空”を意味するネーミングはどこかロマンチックな響きだが、そのパフォーマンスはクーペに劣らず一線級。スーパースポーツかグランドツアラーかという議論は走らせた瞬間に霧散し、圧倒的な高性能と全身を貫く官能性により、より一層ドライバーを魅了してみせる。

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クーペと遜色のないダイナミクス性能

マセラティが久々に放つミッドシップスーパースポーツのMC20。そのコンバーチブル版として追加されたチェロの後姿をみて、お気づきのことはないだろうか。

エンジンカバーに巨大なトライデントのロゴが描かれているのが、クーペ版との第1の違い。ちなみに、製品に描かれるものとして史上最大のこのトライデントは、チェロにオプション設定されている。

また、乗員ふたり分のヘッドレストから後方に伸びるフェアリング状の盛り上がりに、左右に3つずつ細長い“窪み”が設けられているが、これはマセラティの伝統ともいえるフロントフェンダー上のエアアウトレットをリアに移設したもの。いうまでもなく、MC20チェロがミッドシップであることから採られた措置だ。

さらにはリアフェンダーの”肩”にあたる部分が3〜4cmほど高くなっているという。これはコンバーチブル化によって変化したリアセクションの〝視覚的重量感〞とバランスをとる目的で実施された。ほかにもCピラーの角度を前傾にするなど、コンバーチブル化に伴ってかなり細かい部分までデザインに手が加わっているのがチェロの特徴だ。これこそ、クラウス・ブッセ率いるマセラティ・デザインチームの洗練されたセンスを示すものといっていい。

そのほか、12秒で開閉可能な電動式グラスルーフが標準装備されているが、このルーフは液晶の原理を応用したPDLCという技術により、透明な状態と磨りガラスを思わせる状態を、タッチスクリーンで瞬時に切り替え可能であることが特徴として謳われている。

それ以外の基本的なメカニズムに関する部分は、ほとんどがクーペ版と共通。たとえば、カーボンモノコックには一般的なRTM製法ではなく軽量高剛性で高価なプリプレグ式を採用したほか、ミッドシップされるマセラティ自製のV6 3Lツインターボ”ネットゥーノ”エンジンは、最新のF1パワーユニットと共通の副燃焼方式を搭載して630psと730Nmを発揮。3秒を切る0→100km/h加速と、320km/h以上の最高速度をもたらしている。

イタリア・シチリア島で試乗した印象も、従来のクーペ版と同様の傾向だった。ミッドシップスーパースポーツとは思えないほど豊かなサスペンションストロークが快適な乗り心地を実現するいっぽう、ドライビングモードを快適性重視のGTからスポルトに切り替えればシャープなハンドリングを堪能できる点はクーペと基本的に同一。そのことを、シチリアの恐ろしく荒れた舗装路や、風光明媚なワインディングロードで再確認しただけといっても過言ではない。

いっぽうで、GTモードにおける発進マナーだけはクーペよりも穏やかにされていたが、「このほうがチェロのキャラクターにマッチしている」というのが開発陣の説明。また、電子制御式リミテッドスリップデフのセッティングも穏やかな方向に修正されたそうだが、今回の試乗では、その違いは判然とはしなかった。

ちなみにシチリア島で試乗会を開催したのは、前述したとおり様々なタイプのルートを体験できることが最大の理由だが、それとともに、マセラティが1937〜1940年にタルガフローリオで4連覇したことにもちなんでいる。伝統を重んじる姿勢は、いかにもマセラティらしいと感じた。

【Specification】マセラティMC20チェロ
■全長×全幅×全高=4669×1965×1218mm
■ホイールベース=2700mm
■トレッド(F:R)=1681/1649mm
■車両重量=1560kg
■エンジン種類=V6DOHC24V+ツインターボ
■排気量=3000cc
■最高出力=630ps/7500rpm
■最大トルク=730Nm(74.4kg-m)/3000-5500rpm
■燃料タンク容量=60L(プレミアム)
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=ダブルウィッシュボーン:ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤ(F:R)=245/35ZR20:305/30ZR20

マセラティ公式サイト

フォト=マセラティS.p.A ルボラン2023年1月号より転載

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