昨年11月のロサンゼルス・オートショーで衝撃的なデビューを飾った現行992ベースのオールローダー、911ダカールのステアリングを握る機会を得た。ロケーションはもちろん、アフリカのデザート。まさか大小様々な岩が転がる荒野と、果てしなく続く砂の海を、911で駆け巡る日が来ようとは! 最高のエクスペリエンスを報告しよう。
オフロード対策と軽量化は万全の構え
911ダカールは、1984年のパリ・ダカール・ラリーで総合優勝した歴史を持つポルシェが、現行911、すなわち詳細を写真で見る992をベースに開発、2022年のロサンゼルス・オートショーで発表したオールロードバージョンだ。ポルシェは開発初期に「ダカール」のほかに「サファリ」というネーミングも候補に上げていたが、すでにインドのタタが同社のSUVに商標登録しており使用交渉は決裂、結局パリ・ダカール・ラリーの主催者からライセンスを購入して「ダカール」と命名した経緯がある。
【写真17枚】ポルシェで砂漠を駆け抜ける! 911ダカールの詳細を写真で見る
今回、北アフリカのモロッコ郊外で開催された試乗イベントで我々に用意されたのは、様々なコンペティション・ペインティングが施されたモデルたちで、なかには「ヴァイザッハ・ダカール・ラリー」と、ポルシェ開発センターをスタート、ダカールをゴールとする意味の、洒落たデカールが貼られた試乗車もあった。
911ダカールのボディは、オフロード走行に向けてフロント、サイド、リアのアンダーフロアにステンレス製のプロテクターを装着。シャシー設定は、スポーツサスペンションを装備したスタンダードカレラよりも50mmアップ、標準のリフトシステムによってさらに30mm引き上げることが可能で、最大地上高は161mmとなる。標準タイヤは、この911ダカールのために2年をかけて専用開発されたピレリ・スコーピオン・オールテレイン・プラスで、サイズはフロントが245/45ZR19、リアが295/40ZR20。二重構造の強化カーカスに加え、トレッドの溝の深さは9mmとなる。
エンジンはカレラ4GTSと同様の3Lフラット6ツインターボで、最高出力480㎰最大トルク570Nmを発生。トランスミッションは8速PDKを組み合わせ、4輪を駆動する。加えて、リアアクスルステアリングやシャシーコントロールのPDCCは標準搭載で、エンジンマウントはGT3から移植されたリジットなコンポーネントを採用。さらに、リアコンパートメントにはロールケージが組み込まれ安全対策も万全だ。こうした様々な対策にもかかわらず、911ダカールの空車重量は1605kgと、911カレラ4GTSに対してわずか10kgの増加にとどまる。それは、先に発売された911Tと同様、様々な軽量化対策が施されているからで、後席は省略、ボンネットと固定式リアスポイラーはCFRP製、さらにフロントとリアウィンドーは軽量薄型タイプに交換されている。
さらに、911ダカール専用装備となるのがドライブモードで、通常のプログラムに加えて「ウェット・プラス」「ラリー」「オフロード」という3モードを新規設定。このうち、ラリーはμの低い不整路面を考慮したロジックで、リアドライブを強調したマッピングに書き換えられ、オフロードでは車高を3cm持ち上げて文字通り悪路での走破性を高めた設定となる。ダイナミック性能は0→100km/hが3.4秒、最高速度は標準のオールテレインタイヤ装着を前提に240km/hに制限。オフロード・モードでは170km/hとアナウンスされる。