ポルシェ新型カイエン【国内試乗】さらに際立つ唯我独尊の二面性

2018/08/08 10:00

やさしく、それでいて熱い

愚直なまでにスポーツカーにこだわるがゆえに、一時は経営難に陥ったブランドを不死鳥のごとく蘇らせるとともに、現在のプレミアムSUVブームを牽引し続けるポルシェの稼ぎ頭が3世代目へとフルモデルチェンジを遂げて日本上陸を果たした。異例ともいえるクローズドコースでの試乗から、その第一印象をリポートしよう。

全長4918×全幅1983×全高1696mmの堂々たる体躯は流線型フォルムはそのままに、LEDヘッドライトが立体的な意匠となり、リアのライトストリップがワイド感を強調。

これまで以上の巨体だが乗り味は軽快かつ穏やか

日本上陸となった3代目ポルシェ・カイエンの試乗は、いつもの箱根ターンパイクで行なわれた。しかも気象庁が関東地方の梅雨入りを宣言した直後だ。

やはりその日は朝から雨模様で、降ったり止んだりの不安定な路面で新しいカイエンを味わうことになった。そこは乾いた硬質な路面ではなく、雨粒がほどよい緩衝材になっていたようで、あたりもよく、しっとりと湿度感の残る走り味で僕を迎えてくれた。

水平基調のデザインと円形パッドの3スポークステアリング、センタークラスターに備えたグリップ等を踏襲しつつ、新世代ポルシェ・アドバンストコックピットへと進化。

静粛性は高級セダンに匹敵するレベルに感じたし、乗り心地も穏やかだ。大径タイヤがバネ下でバタバタする素振りはなく、路面の粒をひとつひとつ包み込むような優しさを伴っている。

外観から想像する限り、武骨な印象は拭えない。武骨という表現が適切でなければ、迫力であり高剛性感であり、あるいは重量級と置き換えてもいい。巨大な動物が突進してくるように、重いボディをくねらせながら、大地をノシノシと踏みしめるような迫力がカイエンにはある。

SUVらしからぬスポーツシートは従来通り。

実はホイールベースは先代と同じ2895mmにもかかわらず、ボディが前後に63mm伸ばされて、全長は4918mmに達している。全幅は43mmの拡大で1983mm。カイエンがポルシェであろうとする痕跡であるラウンドしたテールやノーズの効果で、威圧感は中和されているものの、相当に大柄であることに違いはない。

車高は9mmダウン。結果として低い姿勢のカタマリ感が強い。そんな巨象のような新型カイエンがしっとりとしているわけもないだろうと勝手に身構えていたから、優しい走り味がなおさら印象的に思えたのだ。同時に、カイエンも牙を抜かれたものだなぁ……と、一抹の寂しさもあった。

SUVらしからぬスポーツシートは従来通り。

2002年に誕生した初代は、時流に乗って、「裕福な911オーナーならSUVをガレージに並べたくなるはず……」といった邪な、あるいはセールス的な狙いから誕生したと記憶している。だから、ポルシェに心酔するユーザーの期待に応えようとするあまり、なかば強引に最速キャラにこだわっていた。そのカイエンがまさか宗旨替えするはずがないと思っていたのだから驚きは強い。ただ今回のそれは、まさかの宗旨替えではなくテクノロジーの進歩といえる。

5連メーターは回転計以外は液晶に。すべての車両機能が操作できるインターフェイスがタッチ式12.3インチディスプレイに収斂。

試乗車のカイエンSは、ボディシェルだけで135kgの軽量化を実現しているというから尋常ではない。安全性や環境性といった時代の要請が招く重量物を装備しても、先代より65kgも軽く、初代モデルと比較するとなんと225kgもダイエットしているというのだから素晴らしい。

軽量化はボディシェルだけではなく足回りを構成するパーツの省略やアルミ材の多用、その他の素材見直しにもおよんでいたことが、走り始めた瞬間に感じた、しっとりとした湿度感のある乗り味やバネ下の落ち着き、あるいは軽快なフットワークに結びついたのである。決して箱根に咲く紫陽花の色香に惑わされたのではなく、技術的進化の痕跡を感じたのだ。

リポート:木下隆之/フォト:郡 大二郎/ル・ボラン 2018年9月号より転載

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