【比較試乗】最新版! いま選ぶべきプレミアムセダンを徹底考察「BMW・5シリーズ vs トヨタ・クラウン vs メルセデス・ベンツ Eクラス」

王道・究極を語る上で外せないプレミアムセダン。奇しくも近しいタイミングで、日本とドイツを代表するセンター・オブ・セダンが、フルモデルチェンジを果たした。国際試乗会やプロトタイプ試乗でいち早く3モデルに触れてきた島下泰久氏が、いま選ぶべきプレミアムセダンを徹底考察した!

クラウンセダンは独2トップと肩を並べる存在

新型メルセデス・ベンツEクラスの登場で、国内のプレミアムFRセダンのマーケットがいよいよ面白いことになってきた。何しろ昨年7月には、宿敵BMW5シリーズがフルモデルチェンジを果たしたばかり。さらに11月にはトヨタ・クラウンにもセダンが追加されており、つまりこの半年の間にメインプレイヤーがすべて新顔に切り替わったのである。

TOYOTA CROWN Z vs MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE/独2トップにも引けを取らない期待を上まわるクラウンの完成度。

あるいは今までならば、こうした比較にクラウンが入ることはなかったかもしれない。しかしながら新型クラウンは、そのボディサイズを見ても価格を見ても、十分比較対象になると言っていい。しかも今や希少なFRセダンということで、その輪に加えたところだ。

TOYOTA CROWN Z/クロスオーバーをラインナップすることから、セダンはスポーティなドライビングポジションを意識したコクピットとなる。

まずは、そのクラウンから試す。HEVとFCEVがラインナップされるうち、試乗車は主力となる前者の“Z”グレード。価格は730万円である。
計4バリエーションとなる新型クラウンの中で、もっとも威厳に満ちた外観なのが、このセダンだ。スリーボックスというよりはクーペライクではあるが、水平基調のフォルムと縦スリットの大きなグリルが強い押し出しに繋がっている。3台並べてみても、存在感はまったくひけを取らない。

TOYOTA CROWN Z

インテリアの設えも立派なものだ。至るところに張り巡らされた木目“調”パネルはさておき、細部までしっかり作り込まれている。何よりトランクスペース全面にしっかりカーペットが貼ってあるのがクラウンである。
走り出すと、やはり期待通りの世界だ。乗り心地は柔らか、しなやか。快適性は極上と言える。

TOYOTA CROWN Z/後席の居住性・快適性は高く、センターアームレストにはシートや空調のコントローラーが内蔵されている。

かつてのクラウンと異なるのは、それをハイレベルな操縦安定性と両立させていることである。姿勢変化は許しながらも直進性は良く、前後バランスの良さを活かしてハンドリングもFRらしさが濃厚。ステアリングフィールは希薄だし、底づきした時の感触にはやや安っぽさはあるが、挙動が掴みやすいので、積極的に操りたくなるのだ。

TOYOTA CROWN Z/パワーユニットは疑似10段変速を行なうマルチステージハイブリッドシステム。

疑似10段変速を行なうマルチステージハイブリッドシステムは、小気味良いステップシフトによって加速を軽快に演出。モーター出力の大きいフルハイブリッドらしく加速は鋭く、強力だ。難点があるとしたら、トヨタの高速燃焼エンジンに共通の金属質の音だろうか。もう少し、これが丸められると尚、上質感が増すに違いない。

TOYOTA CROWN Z/ホイールは20インチで、グリルやモール類と共にブラックに塗装される「ブラックパッケージ」の中に含まれる。

続いて乗り込んだのはBMW・523iエクスクルーシブ。内燃エンジン搭載車は他には523dxDriveだけ。上級モデルは電気自動車のi5となるだけに、実は現状では5シリーズ唯一の内燃エンジンを積むFR車だ。

BMW 523i EXCLUSIVE/天地リムがフラットになったステアリングホイールを採用。

乗り心地は素晴らしいのひと言である。ボディは剛性感があり、サスペンションは低速域ではしなやかなのに、その先では節度ある動きを見せる。速度が上がってきた時のピタッと落ち着く感覚には、惚れ惚れしてしまう。

BMW 523i EXCLUSIVE/ボディサイズもインテリアの仕立てもプレミアムよりもエグゼクティブという言葉が相応しい。

その代わりフットワークにFRっぽさは濃くはなく、ステアリングをしっかり切り込まないと曲がってくれない……と思ったら、SPORTモードではそれが一変。操舵に対して心地よく反応するシュアな走りを満喫できた。こちらが、皆が思うBMWの走りだろう。

BMW 523i EXCLUSIVE/試乗車のシートはオプションのメリノレザー仕様となり、後席の広さや快適性は3台の中では随一。

精緻な回り方を見せるエンジンもさすがBMW。ATの切れ味、ドライバーの意を汲むキックダウンの設定も見事と言うほかない。
先進感たっぷりの内装は仕立ても良好。クオリティも操作感も調度も見事なものだ。後席にも大事な人を迎え入れるのに躊躇しない居心地の良さが備わる。

BMW 523i EXCLUSIVE/パワーユニットは2L4気筒ターボ(B48B20P)を搭載。最高出力190ps/最大トルク310Nmを発揮するエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせる。WLTCモード燃費は14.4km/L。

不満はやはりサイズだ。全長5メートル超はさすがに大きく、全幅もあるので駐車スペースを選ぶ。ずっと乗り継いできたファンにとっては悩ましい事態に違いない。

BMW 523i EXCLUSIVE

情感より実直なメルセデスらしさは健在

そして、いよいよEクラス。試乗車はガソリンエンジンを積むE200アバンギャルドである。
改めて実車を見て思うのは、これぞ王道のセダンだということだ。最初はEQシリーズ寄せのブラック基調のマスクや件のスターマークを用いたテールランプといった細部に目が行ったが、実はこれらはすぐに見慣れる。そして長いノーズ、後方に引かれたキャビン、短いフロントオーバーハングなどが作り出す古典的セダンフォルムにグッと魅入られるのだ。カッコ良いセダンは、やはりカッコ良い。

BMW 523i EXCLUSIVE vs MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE

MBUXスーパースクリーンを装備する試乗車の内装は、一転して未来的。超高精度な音声入力は、使い勝手も素晴らしい。
ただし室内全体のクオリティ的にはやや寂しいところもあった。サイドシル部分などのハード樹脂は蹴ったらすぐに傷がつくし、後席まわりも殺風景。価格引き下げの努力は分かるが、標準装備も少々寂しい。かと言ってオプションを載せていくと簡単に200万円近くになってしまうのが悩ましい。

MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE/試乗車は「MBUXスーパースクリーン」をオプション装備。You Tubeなどのエンターテインメント系アプリを楽しめるだけでなく、ダッシュボード上にあるセルフィー&ビデオカメラを通して「Webex」や「Zoom」を使用してオンライン会議も行なえる。

では走りはどうか。乗り心地は3台の中では硬めでパツッと張った印象。路面によっては小刻みな上下への揺動も気になった。もう少し、まったりゆったりしたい。
その点ではAIRMATICサスペンションが最高なのだが、こちらはE350eでしか選べない。一方、リアが車高調整のためエアサスペンションとなるステーションワゴンは、実はもっと柔らかい乗り味となる。

MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE

その代わりというわけではないが、ステアリングレスポンスは適度にダイレクト感があって、コーナーの連続する区間もスイスイとこなせる。懐深い旋回感覚は、やはりメルセデスで、安心感は図抜けているという印象だ。
2L直列4気筒ターボエンジンは全域で実直に力を湧き出す。マイルドハイブリッドによるモーターアシストもいい働きをしている。エンジンの停止、再始動はスムーズだし、転がり出しも力強い。

MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE

課題は音。特に低速域ではゴロゴロとした印象だ。良い音なら音量が大きくても気にならないが、その意味で面白みは希薄なのだ。
しかしながら、そういった部分も含めて新型Eクラス、いかにもメルセデスらしいクルマだなと感じたのも事実だったりする。情感に訴えかけてくるとかではなく、とても実直で信頼できる、まさに究極の実用車なのである。

MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE/パワーユニットは最高出力204ps/最大トルク320Nmを発揮する2L直4エンジンにマイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。

いずれも高い完成度を見せただけでなく、ブランドの個性がしっかり出たこの3台。選択は難しいが、今回は私の独断でクラウンをイチ押しとする。威厳、快適性に加えて、FRらしいマニアックな走りの魅力が意外なほど濃厚だったのがササッた次第である。5シリーズはやはりサイズが引っかかる。PHEVも復活希望だ。そしてEクラスは、究極の実用車だと評しつつも、プレミアムカーならもう少し萌えるポイントが欲しいかなというところだ。

MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE/試乗車の19インチアルミホイールはオプション(通常は18インチ)。

とは言え、それはいずれも95点以上を取る3台に、最後の仕上げで何を求めるのかという、ほぼ好みの領域の話である。この比較は参考程度に、ご自身の“プレミアムFRセダン観”に波長の合う1台を選んでいただければと思う。

国内マーケットのプレミアムFRセダンを代表する3台だ

3モデルの全長は先代比で、Eクラスが30mm、5シリーズが115mm、クラウンが120mm拡張されている。メルセデスは“メルセデスらしさ”を貫き、プレミアムセダンとしてのレガシーを重視。ベンチマークとしての矜持を示したとも言える。

 

TRUNK ROOM/トランク容量はEクラスが530L、5シリーズが520L、クラウンが450Lとなる。クラウンはパッケージングにおいてはFCEV仕様を考慮する必要があることから、若干容量が少なくなった。

【SPECIFICATION】MERCEDES-BENZ E200 AVANTGARDE
■車両本体価格(税込)=8,940,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1470mm
■ホイールベース=2960mm
■車両重量=1790kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1997cc
■最高出力=204ps(150kw)/5800rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1600-4000rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

【SPECIFICATION】TOYOTA CROWN Z
■車両本体価格(税込)=7,300,000円
■全長×全幅×全高=5030×1890×1475mm
■ホイールベース=3000mm
■車両重量=2020kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/2487cc
■最高出力=185ps(136kW)/6000rpm
■最大トルク=225Nm(22.9kg-m)/4200-5000rpm
■トランスミッション=CVT
■サスペンション=前:マルチリンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:235/55R19
問い合わせ=トヨタ自動車 TEL0800-700-7700

【SPECIFICATION】BMW 523i EXCLUSIVE
■車両本体価格(税込)=7,980,000円
■全長×全幅×全高=5060×1900×1515mm
■ホイールベース=2995mm
■車両重量=1760kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=190ps(140kW)/5000rpm
■最大トルク=8310Nm(31.6kg-m)/1500-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/55R18
問い合わせ=BMWジャパン TEL0120-269-437

フォト=岡村昌宏(CROSSOVER) ル・ボラン2024年5月号より転載

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島下泰久
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