1階をスタイルの異なる3層のガレージに。そして2階の住居スペースには、まるでリゾートかと錯覚するような空間が待ち構えていた。
神奈川県下にある今回の取材先は、東京都内からのアクセスが良く、海などへもさほど時間をかけずに行け、最近特に人気が高くなってきていると感じるエリアだ。ただT邸の場合大きく違うのは、幹線道路に面しているということだろうか。
「こういった立地だと、ファミレスやコンビニなど商店を建てることが多く一般的には避ける方が少なくないようですが、私の場合はたまたま以前からこの場所にあった建売のような家に住んでいて、その隣の家が売りに出たので、その土地も購入し、新築のガレージハウスを建てることにしたんです」と、施主のTさん。80坪以上の敷地で近隣の家よりひと回り大きい。
そして目を惹くのは1階部分のガレージだろう。横方向に3層からなっており、ガレージドアを持たない中央部分には、日常的に使うクルマ。向かって左のガレージは、遊び道具などが詰め込まれたプレイスタイルガレージ、逆サイドは2柱リフトも装備するメンテナンスガレージとなっている。巨大なガレージの間口はひと目をさらうのに十分なインパクトを持つ。
【写真19枚】トラックなどの交通量も多い幹線道路沿いに建てたガレージハウス
「この家を建てる以前から新しい家の構想はあって、3階建てでリフトを使って2階のリビングスペースまでクルマを上げるようなガレージも考えたことはあったのですが、前は土地が狭かったし、自分のクルマには合わないと思って断念していました。
しかし、やっぱりバイクをたくさん置けたり、メンテナンスができるガレージがほしかったので、土地を確保してからは1階すべてをガレージ、2階を住居部分ということで即決しました」。どのガレージもそれぞれの表情を持っており、そこに収まるクルマたちも似合っている。RCということもあり、かなりタフな作りだ。
ガレージを後にして2階住居部分へと上がると、そこにはここがどこかを忘れてしまうかのような雰囲気を持つ、広い空間が待ち構えていた。南国のリゾートホテルがコンセプトだという住居部分は、無垢材や漆喰などの自然素材で作られており、そこに存在する空気すら味が違うような錯覚に陥る。
見渡すと、壁と呼べる壁は存在しておらず、リビングやダイニング、キッチン、そして奥様が仕事をするための書斎など合わせ、約40畳ものスペースをワンフロアでつなげている。リビングの上部は高い天井を活かした吹き抜けとしてあり、開放感があるし、インナーバルコニーから入る優しい外光がリゾート気分をさらに盛り上げる。
「前はよく旅行に出ていたのですが、この家ができてからは居心地が良いので、旅行に行く回数が減りました」と、奥様。テレビやアンプ類は寸法に合わせた作りとなっているほか、冷蔵庫などの生活用品は隠すような工夫がされているため、生活感を持たせつつも総じてきれいに見える。こういった細かい工夫が随所に見られ、特別な場所と思える世界観を作り上げているのだ。
最初に幹線道路沿いと書いたことを覚えているだろうか。乗用車はもちろん、大型トラックの往来も多い道沿いにも関わらず、この家の中は別世界を作り上げることに成功している。外から見えないことはもとより、中からも外もあえて見えなくしていることが大きいのだろう。そしてそれは閉鎖的ではなく、むしろ逆に心身共に解放してくれるかのような空間となっていた。肝心なのは、住み心地のことをどれだけ考えているか、という点なのである。
◆Planning Data
所在地:神奈川県
施 主:Tさん
構 造:RC(ガレージ)、木造在来工法(住居)
敷地総面積:271.55平米
ガレージ延床面積:101.5平米
外装/内装仕上げ:レッドシダー、RC/漆喰、珪藻土、レッドシダー
愛 車:シボレー・エルカミーノ
メルセデスベンツ・G55
フォルクスワーゲン・ゴルフ クラシックライン
トヨタ・クラウン
トヨタ・ハイエース
ガレージ制作費用:約8000万円(編集部推定)
施 工:株式会社solasio 神奈川県藤沢市鵠沼海岸5-7-12
phone:0466-35-7770 http://www.solasio.co.jp
◆Owner’s Check
・ここがお気に入り
トータルで気に入っていますが、オリジナリティという面でのお気に入りは、
停電などの緊急時に備えて、発電機から家の中につないだエマージェンシー
コンセントを装備したこと。
・ちょっと失敗
ガレージでいえば、遊び道具の収納が足りなくなってきた。思っていたより
遊び道具が増えるのが早いことが問題ですね。
・読者へアドバイス
ガレージも家も、建設会社に相談するときには中途半端にせず、自分の意思を
しっかりと伝えて、あとはすべて任せると、結構思い通りになるものです。