日本に導入されたE200、E220d、E350eのセダンを乗り比べ、現段階での最良の一台を石井昌道氏が考察。3グレードとも完成度は高く、何よりも販売価格が戦略的で、Eクラスがセダン再燃を加速させることは間違いないだろう。王道であり、これぞメルセデスと言える、新型Eクラス・セダンの実力はいかに!?
ディーゼルとガソリンはコーナリング特性に差がある
1946年発表のW136まで含めれば累計1600万台もの販売台数を誇るメルセデス・ベンツのコアモデルであるEクラス。サイズも含めてセンター・オブ・メルセデスと言うべき存在であり、SUV全盛のいまなお高級乗用車のベンチマークとして君臨している。パワートレインの環境対応、快適で乗員を疲れさせない乗り味、世界をリードする安全性能、MBUXに代表されるHMI(ヒューマンマシンインターフェイス)やコネクテッドなど、あらゆる面でハイレベルだからだ。
セダンの日本仕様はガソリン2LターボのE200アバンギャルド、ディーゼル2LターボのE220dアバンギャルド、ガソリン2Lターボに電気モーターを追加したプラグインハイブリッドのE350eスポーツのラインナップ。ガソリンとディーゼルもISG付きなので全車電動化を果たしたことになる。今回は3台を比較試乗してベストを探ることにした。
まずはセンター・オブ・メルセデスのなかでも中間的なグレードとなるディーゼルから試す。エンジン本体のパワー&トルクは先代と同様ながら、新たに組み合わされるISGは短時間ならば17kW(23ps)、205Nmのブーストが可能。これは先代E200のISGよりも強力だ。
エンジンを始動してみると音/振動は十分に低いレベルだが、ディーゼルであることは意識させられる。同じエンジンでもSUVで乗ったほうが静かに感じられるようだ。トルクの太さはさすがで、高速道路の合流や追い越しのシーンなどでアクセルをちょいと踏み込めばグイッと頼もしい感覚で加速。しかもISG付きとなったことでレスポンスが良くなっているのが嬉しい。ディーゼルの苦手領域をカバーしてくれるのだ。
アクセルを踏み込んでいくと想像するよりも軽快に回る。Dレンジでは4000rpmでシフトアップとなるが、トルクの落ち込みはなく、スポーティでもある。
乗り心地は、低速域で路面の荒れを拾うことがわずかにあったのだが、まだ1000kmも走っていないド新車だったので走り込めば解消されそうな程度。それ以外では硬すぎず、柔らかすぎずのちょうど良さで、エアサスではないコンベンショナルでは絶妙な落とし所といえる。コーナーでは十分に軽快で、速度を高めていくと穏やかにアンダーステア傾向が感知されるようになる。ドライバーが危険に近づかないようインフォメーションを出しているのだ。
ガソリンのE200アバンギャルドに乗り換えると、すべてがちょっとずつ軽快に感じられた。車両重量が80kgほど軽いうえに、エンジンの回転フィールも軽やかだからだ。ディーゼルに比べれば最大トルクは120Nm低い320Nmではあるものの、発生回転数はより低い1600rpmからで、なおかつISG付きなので動力性能に不満はない。レスポンスの良さはディーゼルよりも上なのでドライバビリティではいい勝負だ。
アクセルを踏み込んだときのフィーリングは、発進時こそディーゼルのほうが迫力はあるが、6000rpmまで勢いよく回っていくのでスポーティ。絶対的な速さは、最高出力が7psだけ高く、車両重量分が軽いぶん有利だが、それほど大きな差はない。
乗り心地もディーゼルに比べて少しだけ軽快だが、やはり差は大きくなく、文句の付けようがないほどちょうどいい。快適なのに、絶大な安心感があるメルセデス・サルーンのそれだ。むしろ差が大きかったのはコーナリングで、E200はヒラリヒラリと舞うようにコーナーの連続を駆けぬけていった。速度を上げすぎると同じようにアンダーステア傾向が感じられるようになるが、コントローラブルで楽しさが一枚上手なのだ。
E350eは他の2車よりワンランク上の仕上がり
E350eスポーツは車両重量は2200kgと他より300kg前後は重たいので、そのネガが心配ではあった。とはいえ動力性能は、95kW(129ps)のモーターによってシステム総合出力が230kW(312ps)に引き上げられているので、必要十分を超えたレベルだ。発進時にアクセルを踏み込めば、モーターの図太いトルクで強く背中を押され、車速が伸びていくとエンジンのパワーで勢いを持続。E200やE220dよりも明らかに速く、頼もしい。
EV走行は、一般的な電気自動車と変わらない感覚で140km/hまでエンジンの助けがなくても到達できる。改めて気付くのが、Eクラスの静粛性の高さ。とくに風切り音の低さは特筆モノだ。
乗り心地は、大きな凹凸を通過するときに、少しだけ重さに対抗するための硬さが感じられるものの、それ以外はまったく問題ない。AIRMATICサスペンションを装着しているだけあって、高速域では重厚で落ち着いていて3車中で最良だった。
コーナーではその実力の高さに舌を巻くほどだった。重いとはいえ前後重量配分は45:55で、リアアクスルステアも装備されているから、ノーズが面白いようにインへ向いていくのだ。速度を上げるほとに路面に吸い付いていくような感覚さえあってAIRMATICサスペンションの威力を思い知るのだった。
基本的には3車とも優秀なセダンではあるものの、パワートレインの特性やハイテク装備の有無などで違いはあった。E200とE220dは軽快感に違いはあるものの、差はほとんどないので好みで選んで間違いないだろう。E350eだけは、車格が1ランク上がったような感覚で、より高級かつ、よりスポーティでもある。戦略的な価格を含め「そろそろPHEVはいかがですか?」と薦められているようなのだ。
【Personal Choice】
E350e SPORTS EDITION STAR/幸いなことに自宅で充電できるので迷いなくE350eスポーツを選びたい。いま発売されているEdition Starは装備も充実していて買い得感が高いのも嬉しいところ。ディーゼル+PHEVがあったら理想的。
【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ E200 アバンギャルド
■車両本体価格(税込)=8,940,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1485mm
■ホイールベース=2960mm
■トレッド=前:1630、後:1645mm
■車両重量=1790kg
■エンジン形式/種類=254M20/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=83.0×92.3mm
■総排気量=1997cc
■最高出力=204ps(150kW)/5800rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1600-4000rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=14.3km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18
【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ E220d アバンギャルド
■車両本体価格(税込)=9,210,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1485mm
■ホイールベース=2960mm
■トレッド=前:1630、後:1645mm
■車両重量=1870kg
■エンジン形式/種類=654M/直4DOHC16V+ディーゼルターボ
■内径×行程=82.0×94.3mm
■総排気量=1992cc
■最高出力=197ps(145kW)/3600rpm
■最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■燃料タンク容量=66L(軽油)
■燃費(WLTC)=18.5km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18
【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツ E350eスポーツ・エディション・スター
■車両本体価格(税込)=9,880,000円
■全長×全幅×全高=4960×1880×1485mm
■ホイールベース=2960mm
■トレッド=前:1625、後:1605mm
■車両重量=1790kg
■エンジン形式/種類=254M20/直4DOHC16V+ターボ
■内径×行程=83.0×92.3mm
■総排気量=2170cc
■最高出力=204ps(150kW)/6100rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/2000-4000rpm
■モーター最高出力=125ps(95kW)/2100-6800rpm
■モーター最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/0-2100rpm
■燃料タンク容量=66L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=12.7km/L
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:4リンク/エア、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/40R20、後:275/35R20
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610