古典的スポーツカーの現代流解釈
ガルウィング――カモメの羽のように、ルーフ中央を支点としてガバッと持ち上がって開くドア。かの300SLで採用されて以来、この特別な形状のドアは、メルセデス・ベンツを象徴するモチーフのひとつであった。メルセデス自身でもそれを分かっているように、このガルウィング・ドアを与えられたモデルが、300SLの後にもいくつか存在する。
【画像43枚】実車の迫力を凝縮した1/24 SLS AMGの詳細と制作過程を見る!
コンセプトカーではC111、市販車ではSLS AMGがそれである。ここでの本題であるSLS AMGは、2009年9月のフランクフルトショーで発表され、2010年にかけて世界で販売が開始された。SLS AMGは、それまでのSLRマクラーレンの後継車種となるスーパースポーツである。その開発はメルセデス・ベンツ本体ではなくメルセデスAMGが中心となって行われたもので、同社の持てる技術の粋を集めた、一種のショーケース的存在でもあった。
その最大の特徴は、往年の名車300SLのイメージが随所に散りばめられていることにある。SLRマクラーレンも、300SLのイメージを喚起するべく、ボディサイドのルーバーや、跳ね上げ式のドア(ガルウィングではなく、俗に言うバタフライドアであった)といったモチーフが活用されていたが、SLS AMGでの引用は、より直截的である。
ロングノーズ・ショートデッキという全体のボディプロポーション、中央にスリーポインテッドスターを大きく配した長方形のフロントグリル、そして何よりガルウィング式のドアがそれである。さらに、前輪の後ろには300SLそっくりの飾りを持つアウトレットが設けられその血脈を主張している(同様のアウトレットがボンネットにも具わるが、これは300SLにはなかったものだ)。
その車体は、アルミニウム製のスペースフレーム構造を採用しており、徹底的な軽量化と高い剛性の両立を実現。エンジンはフロントアクスルより後方に配置されるフロントミッドシップであり、トランスミッションをリアアクスル上に配するトランスアクスル方式と相俟って、50:50に近い理想的な重量バランス(47:53)を達成している。
搭載されるエンジンは、メルセデスAMG社独自開発によるV型8気筒DOHC 6.3Lにさらなる改良を施したもので、最高出力571psを発揮。これに組み合わせられるのは7速デュアルクラッチトランスミッションで、サスペンションは4輪ダブルウィッシュボーンが採用されている。
そのパフォーマンスは最高時速317km/h、0-100km/h加速3.8秒という圧倒的なものであるが、同時に環境性能も最高のものを目指しており、NEDC総合燃費13.2L/100km(7.6km/L)というクラストップレベルの燃費と、クリーンな排気ガス(EU5、LEV2、ULEV適合)を両立していた。
デビュー後の展開としては、2011年にロードスターとマットブラックエディションを、2012年にはマットエディションを発売。これは、ロードスターにもマットブラックのボディを用意したほか、マットホワイトエディションをクーペとロードスター両方に設定したもので、全3種であった。
同年には、よりハードなチューニングを施したSLS AMG GT(クーペおよびロードスター)も発売。さらに2013年にはブラックシリーズをクーペのみにてリリース。これはサーキット走行をも視野に入れたさらにハードなモデルで、エンジン出力は631psにまで高められていた。そして2014年、後継モデルであるメルセデスAMG GTが発表されたのである。
完成後に見えなくなる部分まで詳細に再現された傑作キット
さて、このメルセデス・ベンツSLS AMGのプラモデル化は、自国メーカーのクルマということもあってか、ドイツレベルが一番乗りであった。次いで我が国のフジミからも製品化されているが、どちらもスケールは1/24である。
この頃のドイツレベルは急速にクオリティを上げていた時期にあたり、SLS AMGのキットも、ガルウィングドアの開閉を盛り込んだフルディテール・キットとなっていた。完成すると見えなくなるドライブトレインまで克明に再現していたのが天晴れであり、完全なプロポーションモデルであるフジミを大いに圧倒していたのである。
ここでご覧いただいているのは、このドイツレベル製SLS AMGをほぼストレートに制作した作例だ。もちろん、タイトル画像の時点で分かる通りその仕上げは最高水準のものであり、また細かい部分の追加工作も的確な逸品である。制作過程の解説は写真にキャプションとして添えてあるので、参考にしていただきたい。
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