チューニングして輝くクラウチングフォルム
ハッキリ言って二代目シティは可哀想な存在だ。初代のトールボーイが社会現象とも言えるほど爆発的人気を博してしまったために、その二代目には世間の目も厳しかった。その姿は、親があまりにも有名なため余計なプレッシャーに思い悩む二世タレントを思わせる。
【画像36枚】パールカラーが眩しい無限CITY KIDとその制作過程を見る!
ワンダーシビックで大成功した当時のホンダのデザイン・コンセプトに倣って、二代目シティも先代とは真逆の低く踏ん張りの効いた“クラウチングフォルム”へと、大きく変貌を遂げた。そのプロポーションは結果的に抜群の運動神経にも繋がり、後期型(GA-2)ともなれば、今もジムカーナの世界において現役で活躍できるアスリートとして認知されているが、その反面、前期型となると今や街中で見かけることも皆無に等しく、記憶に残っている方もあまり多くないというのが現状であろう。さらに無限チューンのシティとなると、記憶の彼方に……どころか、現役当時からそんな存在など知らなかった、ということになってしまう。
二代目シティが誕生したのは1986年だが、無限のフルエアロは翌年1月の東京オートサロンにて発表され、ドレスアップカー部門で優秀賞を獲得している。デザインは無限CR-X PRO.の時からタッグを組んでいたムーンクラフトだ(この件については、「J’s Tipo」誌2006年7月号の無限特集で語られている)。元々かわいらしい顔つきの前期型シティが、大きく口を開けたフロントバンパーにより、一層愛嬌のある表情へと変わった。さらに、元々大きく張り出した前後フェンダーをより強調するような前後バンパーの処理も、車幅がワイドになったかのような視覚的効果をもたらしている。老舗のデザイン工房の仕事はとても魅力的であった。
そんな無限シティを、発表当時から羨望のまなざしで見つめていた私に、それを模型化し作例として担当させて頂けるチャンスがやって来た(注:自動車模型専門誌「モデルカーズ」272号/2019年1月号の巻頭特集のこと)。ベースはもちろんタミヤのスナップキット。これを元に、プラ板やパテを使って無限仕様へと仕立てていく。ついでに、スナップキットであるがゆえメッキシールで済まされていたヘッドライト内部も、立体的なリフレクターを新規に制作し組み込んでみると、見慣れたタミヤのキットがより一層現実味のある顔つきとなった。
手作り造形の無限CF-48ホイールに注目!
さらに本作例の大きなポイントが、足元を飾る無限CF-48ホイールである。1980年代の無限といえば外すことの出来ないマストアイテムではあるが、なかなか模型化に恵まれない逸品だ。そんな折、私の実車(バラードCR-X)仲間がその渇望にスクラッチで応えてくれた。一見、流行の3Dプリンタで出力したものかとも思えるが、放射状に延びる40本の繊細なフィンを1本1本細切りプラ板の貼り込みで再現したという、驚愕の手作り品(複製)である。既存品を利用したのはリムのみという工作技術の高さ、繊細な複製技術、思わず感嘆の声をあげてしまう出来である。手作りの楽しさをまだまだ忘れてはいけないな、と感じる瞬間であった。
こうして目の前に再現できた二代目シティの無限仕様。初代と比べてどこか無表情な悲運の二世タレントも、パールの効いた専用ボディカラーと相まって、もう一度その秘めた魅力を輝かせようと、ほほ笑んでいるようにも見えてくる。
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