フラットヘッドV8最後の日
大量生産・低価格を実現したフォード・モデルTにより、自動車は大衆のものになったと言われる。カー・オブ・ザ・センチュリーの1位にも選出されたT型だが、これを送り出したフォード・モーター・カンパニーは1903年設立と、まさに20世紀とともにあった自動車メーカーであった。そんなフォード創立50周年を祝ったモデルが、1953年型フォードである。
【画像25枚】美しくフィニッシュされた1953年型フォードを見る!
1952年秋に発売された1953年型フォードは、節目の年としてモデルチェンジを果たしたという訳でもなく、ステアリングのセンターに記念の文字が入れられていた程度である。また、翌年型からは、搭載されるV8エンジンが一新され、新開発のYブロックV8(OHV)へと改められた。このため1953年型は、1932年型以来使われてきたフラットヘッド(サイドバルブ)V8最後のモデルでもあった。
戦後のフォードは1949年型で初めてフルモデルチェンジを行い、スラブサイド・スタイル(ボディ側面から独立フェンダーの名残りである膨らみを一掃した)で大きなインパクトを与えたが、このボディは1951年型まで使用され、1952年型で再び一新。1953年型は、この戦後二世代目のボディの2年目にあたる。
1949-1950年型では、フロントグリル中央に飛行機のプロペラ(のスピナー)を思わせる飾りが付くのがスタイル上の特徴だったが、1951年型ではこれが2つとなっていたのを、1952年型では再びセンターに1個とし、1953年型でもこれは維持された。円形だったパーキングライト(これもプロペラを模していたので見方によってはプロペラ3つ)が角型となるなど、細部のデザインは前年型から細かく変更されている。
ラインナップは下からメインライン/カスタムライン/クレストラインの3種類だが、ベーシックな2ドア・セダン/4ドア・セダン/2ドア・クーペ/ワゴンは、メインラインとカスタムラインにのみ設定される。クレストラインは、コンバーチブル(”サンライナー”)と2ドア・ハードトップ(”ビクトリア”)、そして木目パネルをあしらった4ドア・ワゴン(”カントリー・スクワイア”)の3種からなるトップグレードという扱いであった。
“ビクトリア”は戦前から2000年代まで、各時代のフォードで断続的に使われているネーミングだが、1950年代のビクトリアは2ドア・ハードトップを示す。ライバルであるシボレーは1950年型において、ベルエアの名で2ドア・ハードトップを導入、これがヒットしたことからフォードは対抗車種を送り出す必要に迫られた。同年では、2ドア・セダンながらバイナル・ルーフとツートン塗装で装ったクレストライナーが抗戦にあたったのだが、翌1951年型からハードトップのビクトリアが導入されたのである。
1952-1954年型フォードのホイールベースは、先代より1インチ長い115インチ(2921mm)。サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッドで変わっていない。エンジンは直6とV8があったが、クレストラインはV8のみが設定されている。このエンジンは排気量239-cid(3.9L)から最高出力110hpを発揮。変速機は3速MTが標準で、4速MTと3速AT(フォードOマチック)がオプション設定されていた。
長年の欠落を精密再現で埋めた好キット
1952-1954年型のフォードは長らくプラモデル化されておらず、1990年代になってようやくリンドバーグから1/25スケール・キットとなった。1998年に1953年型ビクトリア(キットNo.72172)が、翌年にインディペースカー仕様の同年型サンライナー(72321)が、それぞれ発売されたのである。その前後の世代が、それぞれAMTから1960年代にキット化されている(1949/1950年型と1956年型)ことを考えると、その欠落をリンドバーグが埋めてくれた形であると言える。
このリンドバーグの1953年型フォード2種は、現在ではラウンド2のプロデュースの下にAMTブランドのパッケージとなって再販されており、特にビクトリアは、コカ・コーラのベンディングマシーンとのセットとなっている。しかしここでお目にかけているのは、このリンドバーグ時代・初版のクレストライン・ビクトリアを制作したものだ。
ボディ形状は実車の感じをよく捉えているが、モールドは全体的にシャープさが足らない感じである。これはスジ彫りやエッジがダルいせいだが、実車そのものがモッサリした感じのクルマなので、そのように感じてしまうのかもしれない。作例ではスジ彫りを深くし、全体をヤスリで整える程度の処理のみ行った。パーティングラインは若干目立つ部分もあるので、ボディラインを崩さないように注意して処理する。
Aピラーに付くスポットライトは実車ではオプションなので、作例ではオミットした。コンチネンタルキットもオプションだが、このパーツを付ける場合は、トランクにモールドされている「FORDOMATIC」のロゴは削り取り、トランクリッドの下右側に斜めにデカールを貼ること(サンライナーではこの位置にモールドされている)。「FORD」のオーナメントはボンネット側がデカールでトランク側がモールドとちぐはぐな表現となっているが、デカールは前後分が用意されているので、気になる人はモールドを削るなどして統一するといいだろう。
インテリアは標準的な出来だ。フロントシートは合わせが若干良くないので調整が必要。さらに、組み上げるとステアリングと干渉するようなので、シートの底面を削り仮組みしながら調整する。作例では、シートを接着した後にこのことが分かったので、やむなくステアリングポスト側を削り調整した。
エンジンは良く出来ている。ただしオイルフィルターだけは形状が妙なので修正した方がよい。補器類の取り付け箇所が少ししかないので、金属線などを埋め込んで補強すると良いだろう。シャシーはメリハリの利いた表現がされていて好感が持てる。特に注意すべきところはないが、ボディへのセットが少々キツいので、リアホイールハウスを若干削って入れやすくすると良いだろう。アクスル関係は華奢な部分があるので、作業には充分な注意が必要だ。
■関連記事
- ノスタルジックなムードに浸って楽しむ「1948年型フォード・セダンクーペ」のレベル製プラモデル【モデルカーズ】
- シンプル!虚無!最廉価モデルの簡素な姿を味わう、レベル製プラモ「1957年型フォード・カスタム」【モデルカーズ】
関連記事
DTMのBMWからNASCAR、さらに3輪トラックまで!プラッツ取り扱い海外プラモ、注目の新製品【CARSMEETモデルカー俱楽部】
CARSMEET モデルカー俱楽部
2024.11.15
爆発!的人気のTVドラマ車両がプラモ界も席捲!?その力を最大化したのは…【アメリカンカープラモ・クロニクル】第38回
CARSMEET モデルカー俱楽部
2024.11.09
屋根が外れる!オーディオルームが見える!!ニチモの超傑作「タウンエース」 名作キット列伝・第4回【CARSMEETモデルカー倶楽部】
CARSMEET モデルカー俱楽部
2024.10.29
可愛い真っ赤な「大人のオモチャ」に激震!?…1978年最速の1台がコレ!!【アメリカンカープラモ・クロニクル】第37回
CARSMEET モデルカー俱楽部
2024.10.26
愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?
複数社を比較して、最高値で売却しよう!
車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。
手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!
一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!
【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>