日本でも輸入販売された、北米大陸向けクーペ
1972年の登場以来、車格がアップしたり国内での販売が中断されたりと、色々ありながら現在も存続しているホンダ・シビック。思えば、初代モデルがCVCCによってマスキー法(アメリカにおける大気浄化法)をクリアすることで地位を確立して以来、シビックはアメリカとの関連が強いモデルであった。そんな北米大陸との結びつきを象徴するモデルのひとつに、五代目シビックにて登場したシビック・クーペが挙げられるだろう。
【画像47枚】隙なく仕上がったシビック・クーペとその制作工程を見る!
五代目・EG/EJ型系シビックは1991年9月に登場した。ボディ形式は3ドア・ハッチバックと4ドア・セダンがあり、セダンにはこの代から「フェリオ」のサブネームが付く。先々代は「ワンダー・シビック」、先代は「グランド・シビック」と変化してきた通称は、この世代では「スポーツ・シビック」。5ドア・ワゴンのシャトル、およびその商用仕様は、先代のものが継続生産・販売された。この世代のメインテーマは、コンパクトカーの新たな基準を打ち出すことであり、それを反映して、特に3ドアは2名乗車をメインユースと想定する(いちおう後席もある)思い切った設計がなされている。
ボディサイズは若干拡大され、ホイールベースも3ドアでは70mm、フェリオでは120mm延長。これによるゆとりはスタイリングにも反映され、空力も重視されている。レイアウトはもちろんFFで、サスペンションも4輪ダブルウィッシュボーンと先代同様であるが、先代で指摘の多かったストローク不足を解消、これにより操縦性を大幅に改善。その良好なハンドリングが、「スポーツ・シビック」の所以である。エンジンは170psの1.6L DOHCを筆頭にVTEC採用ユニットを拡大、その中にはリーンバーンのVTEC-E(初登場)も含まれていた。
初代以来、シビックのボディ形式は国内仕様と海外仕様で共通であったが、この世代においてはクーペ(EJ1/EJ2型)がアメリカおよびカナダ向けにラインナップされており、これは国内向けには存在しないモデルであった。デビューから約1年後に追加されたこのクーペは、さらにその半年後、日本国内でも販売されることとなる。
これは当時のアコード・クーペ同様に北米からの輸出販売という形であったが、ステアリング位置は右側に直されていた(後に左ハンドルも追加)。日本向けのシビック・クーペに搭載されているエンジンは1.6L OHC 16バルブのD16A(130ps)のみであったが、北米向けには1.5L OHC 16バルブのD15Bも存在。なお、シビックは1995年9月にモデルチェンジし六代目へと移行したが、少し遅れて翌1996年1月にクーペもモデルチェンジ、この二代目クーペも日本で販売されている。
完全US仕様、しかもあえて完全ノーマルとして制作
日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、評価・人気ともに高かった五代目シビックだが、1/24スケールでのプラモデル化は当時も今もハセガワ製キットのみ。3ドア・ハッチバックとフェリオのふたつのボディ形式が製品化されているが、クーペは存在しない。1/25スケールではレベル製のクーペがあったが、ここでお見せしているのはハセガワ製フェリオをベースにクーペへと改造した作品である。
詳細な作業内容は工程レポート(工程写真のキャプション)に譲るが、フェリオをベースにルーフ後半からトランクリッドまでを切り離し、ルーフを短縮して接着、これによってボディの基本を造形している。セダンと比べるとクーペはフロントウィンドウが寝ているので、Aピラーの付け根に切れ込みを入れて傾けることもポイントである。こうした工作の際に頼りになるのは、1/24スケールに合わせて拡大した三面図だけでなく、画像をたくさん見直すことによって頭に叩き込んだ「自分のイメージ」であろう。
輪郭が決まったらサイドウインドウ形状などを決め、全体の雰囲気を固めていく。フロントバンパーの開口部はハッチバックと同デザインのそれに変更。前述のとおりハセガワのキットにはハッチバックもあるが、そちらもこの部分の形状は実物とは少々かけ離れているようなので、単純に移植はできない。逆に作例の工作は、ハッチバックのキットをそのまま制作する場合にも参考になるだろう。
今回は日本に輸入販売された仕様ではなく完全US仕様としたため、ダッシュボードは作者の友人が自作した左ハンドル用パーツ(を複製してもらったもの)をベースに使用した。ハンドルやアンテナ、灯火類もUS仕様にこだわっている。現在でもモディファイベースとして高い人気を維持しているシビッククーペであるが、今回の作例では、それとは意識的に距離を置いて、ファクトリーストック状態としている。いわば現地の学生が通学に使っているような……そしてWalmartやTARGETの広大な駐車場が似合いそうな……そんな美しい脚グルマの雰囲気を感じ取っていただけたら幸いである。
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