最新の高性能SUVは、スーパーカーやスポーツ走行に特化した高性能クーペなどに迫るほど性能が進化。ここでは、「速さ」を指標として加速性能やハンドリング性能などを加味して、各のブランドを代表する最速のSUVをピックアップしてみた。
大柄で背が高くても日常生活に密着できる
そもそも、SUVには余暇を過ごすための移動手段といった意味合いがある。ただ、高性能エンジンを搭載し鍛えあげたボディとサスペンションを組み合わせるSUVも数多く存在する。単なる移動手段ではなく、移動そのものに価値が見出せるモデルたちだ。SUVの「S」はスポーツなので、それも当然のように思える。
一方で、経験をしていないと車高が高く車重が重いSUVでスポーツとしての走りを楽しむことに違和感を覚えるかもしれない。確かに、指摘をされればその通りともいえる。だが、高性能SUVの需要が多いことも事実だ。メーカーも、車高や車重というSUVの課題を技術で克服してきた。
見方を変えれば、素性が価値となる場面が少なくない。視点が高いために市街地でも前方視界が広く、ボンネットの先まで見えるので車両感覚がつかみやすく運転がしやすいのだ。現実にSUVが日常生活の一員となっている理由として、この点は見逃せない。
しかも、視点が高いと山岳路ではコーナーの曲がり具合を俯瞰ぎみに見下ろせる。そのため、走行ラインが意識しやすくなる。運転は見ることから始まり、判断して操作することの繰り返しといえるだけに走りを楽しむ場面でも重要な価値となるわけ実際に、レンジローバースポーツSVRはボディサイズが大柄で着座位置が高く視点も同様だ。最小回転半径の大きさが気になる場面があるにせよ、日常の取り回しで負担を感じるほどではない。
スーパーチャージャーを組み合わせる5LのV型8気筒エンジンは、アクセルを踏み込めば高回転域で高周波サウンドを重ねながら車重を忘れさせるほど鋭い加速を実現。そして、6500rpmを超える勢いで一気に吹け上がる。
だからといって、生活に密接した場面において性能を持て余すことはない。アクセル操作に対する応答遅れがなく、エンジン回転数の上昇に合わせてトルクを立ち上げるスーパーチャージャーならではの特性により期待通りの力強さが得やすいからだ。
ボディとサスペンションは、見事なほどに造り込まれている。走行モードがダイナミックならコーナリング中のロール感はゼロレベルで、車高により重心が高くなることの影響を抑制。ダンパーの減衰力は強めの領域に保たれ引き締まった印象があるが、ストロークがスムーズなので乗り心地は荒くない。路面からの衝撃も、高剛性ボディが確実に遮断してくれる。
最速SUVの走りは日常生活のスパイスになる
マカンGTSは、ラインナップの最速モデルだ。2.9LのV型6気筒ツインターボエンジンは、最高出力440psを発揮。アクセルを踏み込めば、中回転域からはエンジンの爆発力の大きさを際立たせる鼓動を刻み始める。その密度が増し、トルクを回転数がパワーに置き換える様子がサウンドで演出される。そして、Dレンジのままでも7200rpmでシフトアップされるという高回転型だ。
それでいて、市街地では気がつけばエンジンは1200rpmあたりの低回転域に保たれている。そこからシフトダウンせずに加速に移り、コモリ音を発することなく周囲の流れに先行するといった柔軟性を備えるので生活に密接した場面でも運転がラクだ。
サスペンションは余計なフリクションが排除され、ストロークがスムーズなので硬さが気になる場面が少ない。感心するのは、高性能な21インチタイヤを履くにもかかわらずロードノイズが突出せず段差通過時のドスッというインパクトノイズも抑えられていること。高剛性ボディが、優れた遮音性を提供している証拠だ。
高剛性ボディと高精度サスペンションにより、ステアリング操作に対する応答性は切り始めた瞬間から超正確そのもの。ステアリングの手応えはやや重めだが、切れ味がスムーズなので負担にならない。むしろ、SUVであってもスポーツカー名門ブランドのポルシェを走らせる実感に結びつく。
ティグアンRは、ボディサイズがコンパクトであり生活の密着度も高い。その一方で、VWのSUVでは最速モデルとなる。2Lの直列4気筒ターボエンジンは、ステアリングのRスイッチを押すとシリンダーレイアウトの想像がつかないほどの鼓動が強調された刺激的なサウンドを響かせる。そんな演出が、アクセルを踏み込む楽しさを強調してくれる。
デュアルクラッチ式7速DCTは変速にメリハリがあり、シフトアップでもダウンでもタコメーターの針によりビタッとエンジン回転数を合わせてくるあたりも楽しい。買い物に出かけるといった市街地を走っていても、こうした演出が生活のスパイスになる。
走行モードをコンフォートにすると、シフト制御によりエンジンの低回転域を保とうとしすぎるためコモリ音を発することがある。スポーツにすればその回避が可能なので、都会をキビキビとかけ抜ける意味でも走行モードとしては適している。走りの軽快感が際立ち、ステアリングの手応えが少し重くなりダンパーの減衰力も強めの領域が維持されるが快適性を損なうほどではない。
いまや、高性能SUVはスポーツカーのカテゴリーに含めてもいい。しかも、日常生活の一員としてもふさわしいモデルといえる。
【Specification】フォルクスワーゲン・ティグアンR
■全長×全幅×全高=4520×1860×1675mm
■ホイールベース=2675mm
■車両重量=1750㎏
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1984㏄
■最高出力=320ps(235kW)/5350-6500rpm
■最大トルク=420Nm(42.8kg-m)/2100-5350rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=ストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/35R21:255/35R21
■車両本体価格(税込)=7,089,000円
【Specification】ポルシェ・マカンGTS
■全長×全幅×全高=4726×1927×1596mm
■ホイールベース=2807mm
■車両重量=1895kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ツインターボ/2894cc
■最高出力=440ps(324kW)/5700-6600rpm
■最大トルク=550Nm(56.1kg-m)/1900-5600rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40R21:295/35R21
■車両本体価格(税込)=11,880,000円
【Specification】ランドローバー・レンジローバー・スポーツSVRジャパンSVエディション
■全長×全幅×全高=4880×2020×1800mm
■ホイールベース=2920mm
■車両重量=2020kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+スーパーチャージャー/4999㏄
■最高出力=575ps(423kW)/6500rpm
■最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/3500-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウィッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=285/40R22:285/40R22
■車両本体価格(税込)=21,650,000円
まだまだある!最強SUV候補
メルセデスAMG GLA45S 4MATIC+
最高出力421psは2ℓ直4ターボでは世界最強だ。4MATIC+を組み合わせることで瞬時に前後にトルクを最適配分しリアはデフで左右を配分。路面にエンジン性能を余すことなく伝えることでクラス最速も実現する。
BMW X5M/X6Mコンペティション
ボディサイズはかなり大柄だがコーナーが連続する場面でも625psを発揮する4.4LのV8ツインターボの性能を持て余すことがない。前後はもちろんリアの左右も積極的に曲がるための駆動力配分をするからだ。
アウディRS Q8
全長は5mを超えるが4輪操舵を備えるので回転半径が5.5mと大きすぎず日常の取り回しに負担を感じにくい。4LのV8ツインターボエンジンは600psを発揮するが刺激の過剰な演出がないことがアウディらしい。
テスラ・モデルX
超未来的な最新モデルは試乗の機会を得ていないが計562psを発揮する前後モータを備える従来モデルでも圧倒的な速さを獲得。ただサスペンションの設定が快適性重視なのでコーナリング限界は高くない。
ベントレー・ベンテイガ・スピード
スピードは6LのW12気筒ツインターボを搭載。最高速度は306km/hに達するがラグジャリーSUVにふさわしく走りの洗練度が高い。静粛性の高さや乗り心地の快適さは高性能SUVでは世界最高レベルといえる。
ランボルギーニ・ウルス
ブランドの期待に応えるSUVのスーパースポーツだ。走行モードをスポーツにすると4LのV8ツインターボエンジンは高周波サウンドを響かせなが7000回転に迫る勢いで吹け上がりハンドリングも超正確だ。
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