シングを自作して「ものづくり」の楽しさを満喫
フォルクスワーゲン・タイプ181は、1969年から1983年にかけて製造され、NATO加盟各国が小型偵察車両として使用した軍用車両である。軽量で安価、堅牢で荒地走破性能を持つ輸送車輌として設計されたタイプ181は、未整備の道路が多い田舎やレジャー地でも需要があると期待され、民間にも発売された。民間仕様車の販売は、メキシコとヨーロッパでは1971年より始まり、1980年まで続けられた。実用的で角ばったスタイリングや機能性を重視した内装が現代でもマニアックな人気を博しているクルマである。
タイプ181は、イギリスでは「トレッカー」、アメリカでは「ザ・シング」という名で販売された。「THE THING」とは、どんな環境でも走行性と快適性を保てる多目的車、目的を限定されないモノ、という意味あいのようだ。なお、タイプ181は、製造コストを最小限に抑えるため、既存の部品を多く使用している。すなわち、タイプ1由来のリアエンジン・プラットフォーム、マニュアルトランスミッション、水平対向4気筒空冷エンジンの機械部品を使用し、フロアパンはタイプ1のそれを基にしたカルマンギアのものを流用していた。
第二次世界大戦中にドイツ軍により使用されていたキューベルワーゲンと形状が似ていることから、タイプ181はその後継と言われているが、直接的な繋がりはないと思われる。しかし、設計方針やクルマの成り立ち(共にタイプ1のパーツを使用している)から、時を経た改良型ともいえる。
タイプ181はミニカーは発売されたものの、プラモデル化はこれまでなかった。JADA TOYSから1/24スケールのミニカーが発売されていたが、このメーカーの製品の常としてカスタムカーとしてモデル化されており、実際には1/24スケールよりかなり大きいことから、他のVWの1/24スケール完成品と並べるのはちょっと厳しい。という訳で、ここでお見せしている1/24スケールのタイプ181は、実車の成り立ちと同様シャシーやエンジン、灯火類をタイプ1のキットから流用し、ボディをプラ板から自作することで作り上げたものである。
フルスクラッチ入門に最適!
まず、上から見た実車画像や側面図などを入手。1/24スケールに調整してプリントアウト、これを元にまず側面パネルを1mmプラ板から切り出す。これをまたプラ板に瞬間接着剤で点付けし、ガイドにして切り出せば同じ形が2枚できる。ドアパネルも同様に作業、これをガイドに側面パネルをけがいて、ドア部分を切り出す。さらに上面図からボディ各部の幅を採寸し、フロントフードやリアパネルを1mmプラ板から切り出して、側面パネルと組み合わせた。サイドパネル室内側や荷室部分のパネルには補強のためプレスが入っているので、0.3/0.5mmプラ板の貼り合わせで再現、順次ボディに取り付けていく。
エンジンフードはオープニングラインをけがいた後、ナンバーポケットの輪郭を開口しプラ板で造形。シャシーは実車同様ビートル(タミヤ)のものを使い、自作ボディにはまるようパーツ側面を削り調整。前後フェンダーも側面図等から寸法を採り1mmプラ板から作る。外形が出来上たら各部ディテールの追加、フロントはフェンダーを一旦外しトランクリッドを表現するスジ彫りを加え、角を丸く落とした。フロントフェンダーはヘッドライトを収めるため孔を開け、ライトはアオシマ製ビートル(旧イマイ金型)から加工流用。
リアフェンダー上のインテークもプラ板で自作、ボディ各所の補強リブは2mm幅に切り出した0.3mmプラ板を貼って再現。位置決めは少量の瞬間接着剤で行い、決まった所でプラ用流し込み接着剤を使ってしっかりと固定する。前後バンパー、ドア裏側などもボディ同様にプラ板の貼り合わせ、重ね合わせで自作した。ドアやフードのヒンジは、0.5mmプラ板に0.5mm幅の溝を切り、0.5mmの洋白線を挟み込んで瞬間接着剤で接着、これを小さく切り出して作った。フロントスクリーン窓枠は0.3/0.5mmプラ板の貼り合わせで作製。
ボディ塗料にはタミヤラッカーカラーのピュアオレンジを使用。他社の黄色系塗料同様に隠蔽力が低いので地道に少しづつ吹き付ける。ホイールはユニオン製ビートルのカスタムパーツを使用、メッキは剥離しガイアカラーのプレミアムミラークロームで塗装した。マフラーはエンドパイプの位置がビートルと異なるので、2mmプラ棒を熱して曲げたものと置き換え。エンジンはタミヤのインストに基づいて塗装し、プラグコードを追加してある。
タイプ131は直線・平面基調のスタイリングのため、制作内容の殆どはプラ板の切り出し・貼り合わせの繰り返しで、それのみと言っても過言ではない。それぞれのパーツを作るにあたっては、左右対称や水平垂直に注意した。特殊な技量が求められる訳でもないので、フルスクラッチの最初のチャレンジとして最適な題材ではないかと考える次第である。
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