身のこなしはスポーツカーのそれ
半世紀に渡ってエクスクルーシブなモデルを輩出してきたアルピナ(アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限&合資会社)。そのミドルクラスSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)の「BMWアルピナXD4」がLCI(BMWでフェイスリフトを意味)を遂げて日本に上陸した。今回は、短時間ながらナラシ中の国内第1号デモカーが借りられたのでカンタンに紹介していこう。
まずエクステリアに注目してみると、「ALPINA」ワードロゴが加工されたフロントエプロンに気付くだろう。両サイドのエアインテークとキドニーグリルはG02型LCIモデルをベースとしているが、このフロントと呼応するように与えられたリアスポイラーとディフューザーを見れば、アルピナ独自のエアロダイナミクス技術を投入されていることが理解できる。
大型ワイドディスプレイやデジタル液晶メーターを備えたBMW最新世代インターフェイス、先進安全運転支援機構(ADAS)も順当にアップデート。おなじみのシリアルプレートやワンポイントのエンブレム、「+」「-」のスウィッチトロニックを備えた専用ステッチのラヴァリナ・レザー製ステアリングといった装備を基礎に、アルピナならではの多彩なオートクチュール・メニューは青天井で用意される。
搭載パワートレインは、排気量2993㏄直列6気筒クリーンディーゼルに低圧用と高圧用の過給器をパラレルに設定したクアッド(4基)ターボシステムを採用し、ZF製8速スポーツATにBMW xDriveをベースにしたフルタイム4WDシステムを組み合わせる。
その結果、最高出力は従来比でプラス6psの394ps、最大トルクはプラス30Nmとなる800Nmにまで増強され、0-100km/h加速4.6秒、巡航最高速度268km/h(欧州計測値)という、並のスポーツカーを凌駕する動力性能を手に入れている。もちろん日本の公道では挑戦すら許されないが、高速道路の本線合流や新東名高速の120km/h区間でその片鱗が味わえたと報告しておこう。
しかも、高速道路なら8速/1300rpmで100km/hクルージングがこなせる上に、わずかなアクセル操作に即応するレスポンスのよさは快感。徹底した音振対策も奏功してか、車室内にいる限りエンジン始動時からディーゼルを忘れさせる静粛性は、兄弟のBMW X3 M40dではなし得なかったレベルにある。
ワインディング路での身のこなしにも著しい進化ぶりが感じられた。ブレーキでの荷重移動からステアリング操作、狙ったラインを維持して加速しながらコーナーをクリアしていく一連の振る舞いは、視点が高いことを除けば上質なスポーツカーのそれである。専用設定の可変ダンパーには強化サスが与えられ、さらなる低重心化が図られたというが、オプションの22インチ鍛造ホイールと専用のピレリPゼロのセットを履くにも関わらず、乗り心地自体は従来モデルよりも快適さを増しているように思えた。
洗練された意匠の内外装という従来からの魅力に加え、走行性能と快適性という二律背反を解決したアルピナ・マジックは、この新しいXD4でもしっかり確かめることができた。独ブッフローエのビジネスが、今後どのように変化していくのは分からないが、このハンドメイド仕立てならではの希少性が失われないことを切に願いたい。
【Specification】BMWアルピナ XD4オールラッド
■車両本体価格(税込)=13,980,000円(LHD)
■全長×全幅×全高=4751×1927×1615mm
■ホイールベース=2864mm
■トレッド=前1614/後1628mm
■車両重量=2145kg
■エンジン種類=直6DOHC24V+クアッドターボ
■内径×行径=84.0×90.0mm
■総排気量=2993cc
■最高出力=394ps(290kW)/4000-5000rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/1750-3000rpm
■燃料タンク容量=68L(軽油)
■燃費(WLTP)=11.6km/L
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、後5リンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/45 ZR20(8.5J)、後285/40 ZR20(10J)
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