アルピナのフラッグシップSUVであるXB7が日本に上陸した。まさに威風堂々というに相応しいハイパフォーマンスとラグジャリーを両立し新次元のドライビングダイナミクスを提供してくれる。
アルピナらしい演出が随所に
2022年3月、突然「BMWにALPINA商標権を譲渡」というニュースが飛び込んできた。2025年、アルピナは開発と生産と供給を担う自動車メーカーとして役割を終える。だが、商標権が移ってもアルピナが培ってきたブランドの価値はBMWが大切に育むと信じている。
なぜかといえば、BMWにとってアルピナはMモデルを含む自社のラインアップにはないブランドとなるからだ。Mと並ぶパフォーマンスを実現しながら、BMWを超えるエレガンスの提供に成功したブランドといえる。
それが事実であることは、2021年の国内発表から試乗の機会を心待ちにしていたXB7が明らかにしてくれた。佇まいさえベースとなるX7の威風堂々ぶりに、端正な印象が織り込まれている。試乗車はオプションの23インチホイールを履いていたが、アグレッシブというよりもラグジャリーという表現がふさわしい。
ただ、さすがに軽量高剛性な鍛造製ホイールを採用してもリアタイヤが325/30ZR23と超ワイドなためもありバネ下重量の増加が避けられず路面段差の通過時などにブルッとした振動がボディに残ることがある。
とはいうものの、ほとんど唯一といえる気がかりであり場面も限定される。基本的には乗り心地は快適さを維持し、それは走行モードをスポーツにしてダンパーの減衰力が高めの領域に保たれていても変わらない。XB7専用設定となる4輪エアサスペンションは、余計なフリクションを完全排除しストロークのスムーズさを確かめさせてくれるからだ。
ステアリングの切れ味は、スーツでもスッキリと軽やかだ。それでいて切り込む過程ではタイヤが横方向のグリップ力を稼ぐのに合わせて手応えも増してくる。その度合いは意識しなければ気づかない程度であり負担を感じることなく、操作の通りに反応している実感に結びつく。こうした絶妙な特性にこそ、アルピナならではの真価が発揮されているわけだ。
エンジンは、X7 M50iが搭載する4.4LのV型8気筒ツインターボをベースにアルピナが手を加えることで最高出力を91ps上乗せし621psを発揮。最大トルクは、X6Mが積むMモデル専用のエンジンに50Nm上乗せされる800Nmに到達している。
だが、日常的な場面では圧倒的なパフォーマンスをエレガンスというベールで覆っている。8速ATは早めのタイミングでシフトアップを繰り返すため、1500rpm以下で走る場面が多い。そこからペダルを踏むというより力加減を増す程度のアクセル操作に対して、スムーズに力強さを立ち上げる。ドライバーを刺激することがないにもかかわらず、周囲の流れを置き去りにする加速を示す。
しかも、中回転域にかけて力強さの盛り上がりが確かめられる。エンジン性能曲線では2000rpmから5000rpmまでトルクがフラットな領域に入るが、体感としては上昇カーブを描く。こうした感じさせ方も、まさにアルピナの真価といえる。
そして、アクセルを踏み込むとドライバーの意識を察したようにエレガンスのベールを拭う。レブリミットの6500rpmに迫る勢いで一気に吹け上がり、走行モードがスポーツならアルピナとしては刺激度が強めな高周波サウンドを重ねてくる。シフトアップ時やアクセルを戻す瞬間には、ババッという破裂音的なサウンドさえ響かせるのだ。
もちろん、アルピナらしく演出としては過剰ではない。ドライバーの意思に応えるために、適度な刺激を提供する。アルピナが培ってきた価値が、こうした一瞬にこそ際立ってくるのである。
【Specification】アルピナ XB7
■全長×全幅×全高=5165×2000×1830mm
■ホイールベース=3105mm
■トレッド(F:R)=1680:1705mm
■車両重量=2580kg
■エンジン種類/排気量=V型8気筒DOHC 32V+ツインターボ/4394cc
■最高出力=621ps(457kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2000-5000rpm
■燃料タンク容量=83L(プレミアム)
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F&R)=Vディスク
■タイヤサイズ(F&R)=285/45R21
■車両本体価格(税込)=25,280,000円
■問い合わせ=ニコル・オートモビルズ ☎0120-866-250