【国内試乗】「トヨタ・ヤリスクロス」トヨタ会心のコンパクトSUV

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スタイリッシュでありながら癖が強すぎないエクステリアや高い利便性で、人気者になりそうな新型ヤリスクロス。すでにお伝えしているプロトタイプ試乗記でも、高い実力を発揮していた同車がついに発売開始となった。

ハイブリッドモデルのチョイスがお勧め!?

9カ月連続首位だったホンダN-BOXを破り、1カ月で2万2066台を販売して2020年9月の最多販売車となったヤリス・シリーズだが、その数字には新たに加わったヤリスクロスが大きく貢献している。5ナンバーサイズのヤリスに対して全幅を拡げて3ナンバーサイズとし、最低地上高を170mmまで高めてSUVスタイルを強調。欧州のコンパクトSUVと比べても遜色のない存在感が多くの人を魅了した結果だろう。

ブリスターフェンダーと樹脂製クラッディングで武装して3ナンバーボディに。Zグレードには215/50R18の大径タイヤと切削デザインのアルミホイールが標準装備される。

インテリアの雰囲気はヤリスと同様で、際立った上質感があるわけではないがソツのない仕上げで居心地はいい。室内長と室内幅はヤリスと変わらず、室内高のみ15mm高くなっただけだが、ヘッドルームの余裕度は数値以上に高まっていると感じられる。とくに後席はシート座面高を20mm高めたことで膝を大きく折らずに座ることができ、前方の見晴らしもよくなっている。コンパクトカーの後席にありがちな窮屈感はなく、これだけでもヤリスではなくヤリスクロスを選ぶ理由となりそうだ。

3気筒1.5Lガソリンエンジンに電動モーターを組み合わせたハイブリッドシステムは電気系、機械系の損失を低減することでWLTCモード燃費値で最大30.8km/Lの低燃費を実現。燃費が悪いといわれるSUVの常識を覆す。

パワーユニットは3気筒1.5LのNAガソリン車と、同じく1.5Lに電動モーターを組み合わせたハイブリッド車が用意され、それぞれにFFと4WDを設定。4WDシステムはガソリン車が電子制御カップリングを用いたダイナミックコントロール4WD、ハイブリッドは後輪を専用モーターで駆動するe-Fourとなる。

ガソリン車、ハイブリッド車ともに4WDは路面状況に応じたモードをセンターコンソールのダイヤルで選択できる。スタック時の脱出に有効な機能も持ち、ブレーキや電子制御カップリングの制御により対角線スタックを防ぐことができる。

ヤリスより100kgほど重く、重心も高いので俊敏さはやや劣るものの、視点が高く先の見通しが効くので、頻繁な加減速を強いられる一般路でも落ち着いて走ることができる。70mm広い車幅も気になるほどではなく、かえってトレッドが40〜50mm広がったことで操舵時の安定性は増している。このワイドトレッド効果は高速道路のランプウェイなど緩く長いコーナーでも実感でき、車高も重心も高いSUVスタイルながら、思った以上に踏ん張ってくれる。とくに4WDはリアのダブルウイッシュボーン独立懸架が効いているのか、ワダチやうねりがある路面でも安定感は高い。

Zグレードのインテリアはシックな色調でまとめられ、合成皮革+ツイード調ファブリックのシートを標準装備。後席の足元はさほど広くないが座面が高められたことで楽な姿勢で座れる。後席シートバックは4:2:4分割可倒、ラゲッジボードは6:4分割で2段階調整が可能。

ガソリン車は最終減速比のローギアード化により低速での身のこなしは悪くないが、高速道路の合流などでフル加速を試みるとあまり洗練されていないエンジン音が室内に伝わる。一方でハイブリッド車はモーターアシストによるトルク増により余裕を持って走ることができ、リアにリチウムイオンバッテリーを搭載することでフロントヘビーが緩和されているせいか挙動も穏やかで乗りやすい。

オプション設定ながらZグレードとGグレードには電動開閉式バックドアも設定され、5人乗り時で最大390Lのラゲッジスペースや、4対2対4の分割可倒リアシートもSUVとして使いこなしたい人に歓迎されそうだ。価格は37〜39万円ほどの上乗せとなるが、低燃費と走りの余裕度に加え、アウトドアでも1500Wの給電が可能なハイブリッド車のチョイスがお勧めといえそうだ。

フォト=小林俊樹/T.Kobayashi ルボラン2020年12月号より転載

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田畑修
AUTHOR
2020/11/18 11:00

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