メルセデス・ベンツCLSとアウディA5スポーツバックは4ドアクーペの人気を二分する存在で、共にハイパフォーマンス版を擁する。しかしチューンナップの方向性は明確に異なり、それぞれ独自の世界を築いている。ここではその違いを露わにし、両雄の魅力を探った。
4ドアクーペが築くスピードの世界
アウディRS5の真打ちとなるスポーツバックが待望の日本上陸を果たしたことを契機に、メルセデスAMG CLS53と比較してみた。もはやドアの枚数やボディ形状でカテゴライズすることすら面倒だが、いわゆるハイパフォーマンスGTクーペ対決である。
アウディRS5スポーツバックの魅力は、まさに鍛え抜かれたアスリートの走りである。2.9Lの排気量を持つV型6気筒直噴ターボは450ps/600Nmの出力を誇るが、それにも増して思い通りの加速感が魅力的。可変バルブタイミング及びリフト(吸気のみ)を交えた動弁系の緻密な反応や、Vバンク内にふたつのタービンを納めたことで得られる過給レスポンスの鋭さを、まさにアクセルの微妙な操作で味わえるのだ。8速のギアを持つトランスミッションはこの分厚いトルクに対応すべくトルコンとなっており、究極的なレスポンスはDCTに一歩譲る。しかし変速時の手応えはかなりダイレクトで、アウディユニットの精緻さを引き立てている。
内燃機関としては最終世代とも思える純度の高いエンジンに対し、フットワークも極まった感がある。この高出力をクワトロ4WDとスポーツディファレンシャルがしっかりと受け止めながらも、サスペンションは少ない稼働量の中でしなやかに路面を捕らえる。気分的には「ダイナミック」で攻めたくなるが、日本の速度域ではピッチングが強くなりすぎトゥーマッチ。わざわざ左ハンドル用の遠いスイッチに手を伸ばしてこれを操作するよりも、状況に応じてダンピングを連続可変する「オート」で走った方がぴたりとハマる。そういう意味ではR8のように、ステアリングにスクランブルボタンを配置した方が良い。ストリートで遭遇したライバルを瞬時に抜き去る楽しみは、高性能車に与えられた特権のひとつなのだから。
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