なぜここまで?と思えるほどの作り込み
このような連載を始めたことも皆さんにはもう忘れられてしまったのではないかと思いつつ、5ヶ月少々ぶりの名作キット列伝、第4回である。今回は、ニチモ製1/24スケール・プラモデル、「トヨタ・タウンエース・スーパーカスタム」をご紹介したい。
【画像38枚】こだわりの再現・質感表現が見事なキット内容を見る!
1970年代後半~1980年代前半は、国産プラモデルの歴史の中でも、ワンボックス車がひときわ多くキット化された時期である。その遠因は、1970年代にアメリカで盛り上がった、フルサイズ・バンをベースとするカスタムのブームにあると言って間違いはないだろう。
その文化は日本にも流れ込み、小はライフ・ステップバンから大はハイエースやキャラバンまで、ポト窓を装着しボディには派手なグラフィックをまとい、室内は豪華に作り変えて……といったカスタムスタイルが人気を博したのである。そしてこれが、プラモデルにも反映され……というのは、当然の流れであるだろう。
今名前を挙げたライフ・ステップバンやキャラバン、ハイエース、ライトエースやバネット、ファーゴ、あるいはサンバーなど、様々な車種がキット化され、しかもその多くが今なお名作として語り継がれている中で、特に凝った内容を見せたのが、今回採り上げるニチモのタウンエースであった。
本題のキットの前に、タウンエースについて簡単に述べておこう。タウンエースは1976年、ライトエースとハイエースの間を埋める車種としてデビューした。エンジンはカローラのものを搭載、ボディパネルは一部をライトエースと共用している。
当時のレジャーブームの盛り上がりから、タウンエースもハイルーフやサンルーフを導入するなどしていたが、日産のバネット3兄弟が1980年のマイチェンで国産車初の回転対座シートを採用、かなりの成功を収めると、これへの対抗としてタウンエースも同年末にマイチェンを敢行した。
このときワゴン全車を角型ライトにフェイスリフトするとともに、上級グレードには対面式シートを導入。これは2列目シートのシートバックを前方へスライドさせ、後ろ向きにも座れるようになるという仕組みであった。シート自体も前方にスライドし、対面時の足元スペースが確保できるようになっている。
ニチモの技術力を見せつけた傑作キット
さて、この初代タウンエース後期型を1/24スケールでプラモデル化したのは、ニチモとバンダイであった。発売はバンダイの方が早かったらしく1981年のことで、ニチモのタウンエースは遅れて同年秋の全日本プラスチックモデル見本市で発表。発売がいつなのかは手元の資料では明確でないが、おそらく1981年末から1982年初頭にかけてのことと思われる。
当時のニチモはコスモスポーツとハコスカに始まった「史上の栄光車」シリーズも全作発売し、まさに脂の乗りきっていた時期で、このタウンエースでも、おそらく当時これ以上はないと思われたであろう作り込みを見せている。最大のポイントはパッケージでも大きく謳われている通り、ルーフが外せて完成後も室内が鑑賞できるということだ。それだけではなく、側面のスライドドアとリアハッチ、さらにサンルーフの開閉も盛り込まれている。
また、室内は実車通りの対面シート・アクションを再現しただけでなく、フロントシートも左右ともシートバックが可動式。加えて、シャシー裏面も「史上の栄光車」と同等、あるいはそれ以上の再現性が盛り込まれており、モーターライズをやめてディスプレイモデルとして仕上げれば、その作り込みを最大限に活かせるようになっているのだ。
このタウンエースと同等の熱量を持つワンボックス車のキットを同社がリリースするまでに至らなかったのはまことに残念なことではあるが、代わりにタウンエースのみで3種類のキットがあり、これによってシリーズを構成していた。
まず、ホイール以外はノーマル状態が再現できる「グランドエキストラ」。これにプラスして、室内後半を無線室にも作り変えられる「カスタム」、そしてやはり室内後半をオーディオルームにすることができ、外観もさらにカスタマイズされている「スーパーカスタム」。今回お見せしているのは、最後のスーパーカスタムである。
その細かな内容についてはキットのディテール画像をご参照いただきたいが、もしかすると、ニチモの1/24スケール・キットの中でも最も凝った内容を持つのがこのタウンエースである、とも言えるかもしれない。しかし一方、微妙にどうかと思われる部分もあるのが、このキットの愛嬌である。ルーフが別体というところからしてかなり無茶なのであるが、それ以外にも面白い箇所が細部にいくつかある。それがどんな部分であるか、ぜひ写真をひとつひとつご覧いただきたい。
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