【比較試乗】ジャーマンミドルセダン、あなたはどれを選ぶ?王道を征くグローバルスタンダード「アウディA4 vs メルセデスベンツCクラス vs BMW3シリーズ」

ジャーマンスリーを象徴する車種と言えるのが、このミドルセダンだろう。世間的なメインストリームはSUVに移りつつある中で、今でもこのクラスが根強い人気を誇るのはなぜか? その理由を探ってみた。

定番のミドルセダン対決でその人気の秘訣を探る

セダン離れが叫ばれて久しく、SUVが乗用車の主役となっている現在でも、ジャーマンスリーに限っては事情が違っている。Dセグメントセダンの人気は衰え知らずで、今でもブランド内で販売台数ナンバー1であることが珍しくない。
その人気の秘訣をBMW3シリーズ、メルセデス・ベンツCクラス、アウディA4による定番対決で探ってみよう。試乗車のグレードは3シリーズとCクラスはベーシックに近いが、A4だけは都合により高性能バージョンのS4になったため横並び比較とはいかないが、基本は車種全体のキャラクターを見ることにする。

AUDI S4

アウディA4の現行モデルは6代目で2016年デビューと、今回の3台のなかではもっとも古い。3シリーズが2019年、Cクラスが2020年デビューであるのに比べると不利かもしれないが、ジャーマンスリーの場合はモデルサイクル末期になるほど熟成が進んで乗り味が良くなることが多いので、それほど心配することはないだろう。
街中で走り始めると、まずはパワートレインの扱いやすさとスポーティ感のバランスの良さが光った。低回転からトルクが太く、あまり回さなくても頼もしく加速していく。今回の試乗車はV6・3Lターボを搭載するS4だから当然ではあるのだが、低回転から大きなトルクを発生するのは、2Lガソリンターボでも同じ傾向。もともとアウディは、少排気量エンジンをターボ等で過給して、燃費性能と低回転トルクを両立させたダウンサイジングコンセプトのパイオニア的存在であり、扱いやすさに定評があるのだ。

AUDI S4

それに加えてスポーティなフィーリングがあるのは、アクセル操作に対して機敏に反応する傾向が強いからだ。右足を動かすスピードをチョイ早めにするぐらいでも、グイッと背中がシートに押しつけられる感覚が得られて、クルマのほうが加速したがっているような雰囲気がある。高速道路でペースをあげていっても加速体制に入ったときの生き生きとしたエンジンフィーリングにかわりはない。
シャシーは基本的にはスポーティ。低速域から引き締まった印象があり、速度が上がれば上がるほどスタビリティが高くて安定感があることを感じさせる。エンジン横置きFFベースの4WDという資質からして操縦安定性の高い構成とマッチした性能だ。たとえ雨が降っていたとしても高速道路を安心して突っ走っていける。

MERCEDES-BENZ C 220d AVANTGARDE

操縦安定性が高いと乗り心地は硬くなるのが一般的だが、現行S4はサスペンションの動きがかなりスムーズになったのでほとんどの場面で快適で上質でもある。大きな凹凸を通過するときに突き上げがややきつく感じることもあるが、ボディの剛性感が高く、衝撃をしっかりと受け止める感覚があるので不快さは抑えられている。
唯一古さが感じられるのが静粛性だ。一般的には十分に静かな部類ではあるものの、ジャーマンスリーは全体的にハイレベルかつ進化も早いので、他の2台に比べるとやや不利だと感じる。それでもスポーティな雰囲気があるのでマッチングとしては悪くない。

快適志向のCクラス、スポーティな3シリーズ

近年のメルセデス・ベンツはアジリティ(俊敏性)を強調して、アウディやBMWにスポーティさでも負けないと対抗することが多かったが、現行のCクラスは本来の快適で穏やかなテイストに落ち着いている。
エンジンは扱いやすさに徹していてスムーズ。いたずらに機敏にして、乗員が揺さぶられることがないようにしているのだ。とはいえ、実用域のトルクはしっかりと出ているうえにアクセルを踏み込んで回転をあげていくと意外や活発という二面性もある。気は優しいが力持ちなのだ。

MERCEDES-BENZ C 220d AVANTGARDE

A4と3シリーズはステアリングの切り始めからノーズがキビキビと動く感覚があるが、Cクラスは切り始めの初期の動きは緩やかで、切り増していくとグーッと曲がっていく。スポーティには感じないかもしれないが、直進性に安楽さがあり、リラックスして高速ロングドライブができる。基本的なフィジカル能力は高いのでワインディングロードなどでは一変して機敏な動きもみせる。
サスペンションも穏やかで乗り心地は円やか。凹凸を通過すると上下動をわずかに許容している。これでも往年のメルセデスからみればスポーティではあるのだが、ジャーマンスリー比較では快適志向だ。
静粛性は基本的には高いのだが、状況による変化幅はそれなりにある。普段はかなり静かなのだが、ザラついた路面でのロードノイズや回したときのエンジン音が大きめに感じるのだ。
スポーツセダンの代名詞であり、世界中の自動車メーカーがベンチマークとしている3シリーズ。現行モデルもその期待を裏切ることはない。エンジンは直4のガソリンやディーゼルでもトルクが充実している上にスムーズかつ俊敏に回り、直6になれば官能性が絶頂になる。ATの制御も巧みだ。
ステアリングは剛性感がすさまじく高く、切り始めの初期からピピッとダイレクトな反応を示す。それでも過敏になりすぎることはなく、きっちりとリニアなので、あらゆる場面で一体感が得られる。
サスペンションは程よくスポーティ。街中でもゴツゴツとしているわけではないが、いかにも筋肉質な引き締まった感覚があり、コーナーを攻めたら楽しいだろうなと予感させる。高速域で凹凸を通過すると、わずかに硬く感じることもあるが、上下動が一発で収束するのでスッキリとしているのだ。

BMW 320i EXCLUSIVE

驚くのが静粛性の高さだ。一昔前なら、スポーティなモデルほどノイズを許容するものだったが、3シリーズはロードノイズが低く抑えられ、エンジンサウンドも普段は小さく、回していったときもいい音だけが透過してきて雑味がない。イメージとは逆でCクラスよりも静粛性が優秀なのだ。もしかしたらBMWのBEV戦略は、フラッグシップのiXを除いてプラットフォームをエンジン車と共有するから、静粛性に力を入れているのかもしれない。エンジンのないBEVはロードノイズや風切り音の対策をきっちりとしないと耳に付きやすくなってしまうからだ。
A4と3シリーズはどちらもスポーティだが、性格は違う。A4は操縦安定性の高さがフィーリングからも伝わってきて、それゆえに安心してアクセルを踏み込んでいける。それに合わせてエンジンのレスポンスも意図的に良くしているようだ。クワトロが前提であり、どんな場面で頼れる相棒といったところ。3シリーズはFRの重量配分、ステアリングフィールの良さといった資質を存分に活かし、ハンドリングの楽しさや一体感の高さが強調されている。

BMW 320i EXCLUSIVE

Cクラスも運動性能は高いレベルにあるものの、快適志向でドライバーに優しい。運転の疲労を軽減することで結果的に安全に繋がるという思想がベースにある。
どのモデルも低全高なセダンだからこそのダイナミクス性能の高さが実感できるのが、人気が衰えない秘訣だろう。日々進化もしているので古さを気にする必要もなく、好みで選択して間違いはないのだが、今回はスポーティなうえに快適性も悪くなく、しかも静粛性が高いという3シリーズをパーソナルチョイスとしたい。’19年に日本上陸した際の最初の試乗車であった330i Mスポーツから感じた、スポーティだけれど乗り心地は硬い、というところからずいぶんと熟成され、理想的なモデルに仕上がった。日常に程よく刺激が得られ、疲れも少ないという、長い付き合いに向いた乗り味といえるだろう。

【PICK UP!】AUDI S4
水平基調デザインのサイドビュー

前後を貫くショルダーラインは、上位モデルにも見劣りしない伸びやかなプロポーションを与えつつ、視覚的な重心を下げ、スポーティな雰囲気の演出にもひと役買っている。

【SPECIFICATION】AUDI S4
■車両本体価格(税込)=10,460,000円
■全長×全幅×全高=4770×1845×1410mm
■ホイールベース=2825mm
■車両重量=1710kg
■エンジン種類/排気量=V型6気筒24V+ターボ/2994cc
■最高出力=354ps(260kW)/5400-6400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1370-4500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前後:ダブルウィッシュボーン
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:245/35R19

問い合わせ先=アウディジャパン TEL0120-598-106

【PICK UP!】MERCEDES-BENZ C 220d AVANTGARDE
11.9インチのMBUXスクリーン

大型のスクリーンを生かし、重要な情報を常に一画面に表示する「MBUXゼロレイヤー」は運転中の視認性に優れる。「ハイ、メルセデス」から始まるボイスコントロールも正確だ。

【SPECIFICATION】MERCEDES-BENZ C 220d AVANTGARDE
■車両本体価格(税込)=7,090,000円
■全長×全幅×全高=4755×1820×1435mm
■ホイールベース=2865mm
■車両重量=1780kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒DOHC16V+ターボ/1992cc
■最高出力=200ps(147kW)/3600rpm
■最大トルク=440Nm(44.9kg-m)/1800-2800rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:4リンク、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/45R18

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

【PICK UP!】BMW 320i EXCLUSIVE
iDriveのダイヤルコントロール

近年は操作系をスクリーンに集約し廃止するクルマも多いが、運転姿勢を大きく崩さず、慣れればブラインドタッチも可能なダイヤルコントロールの操作性には一日の長がある。

【SPECIFICATION】BMW 320i EXCLUSIVE
■車両本体価格(税込)=6,780,000円
■全長×全幅×全高=4720×1825×1440mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1550kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒DOHC16V+ターボ/1998cc
■最高出力=184ps(135kW)/5000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1350-4000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:225/50R17

問い合わせ先=BMWジャパン  0120-269-437

【PERSONAL CHOICE】
BMW 320i /3シリーズのスポーティさと、静粛性の高さの両立は感動モノだ。BMWに期待されるスポーティさは存分に得られながら、扱いやすさや乗り心地、静粛性でも優秀な現在の3シリーズ。318iや320iといったベーシックなモデルはとくにバランスが良く、誰にでもオススメできる。

【モータージャーナリスト・石井昌道氏】

自動車専門誌の編集部員だった経験を活かし、国産・輸入車を問わず幅広い知識を持つ。本誌ではテクノロジー系の連載を担当するほか、「DST」のテストコ・ドライバーも務め、ドライビングテクニックにも定評がある。自身も6代目BMW3シリーズ(F30)を所有。

フォト=佐藤亮太 ルボラン2024年2月号より転載

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