【国内試乗】走りの血中濃度が高められた宿命のリアルスポーツ。完熟極まった最終バージョン「ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ」

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10年の長きに渡り販売され、幾多ものスペシャルモデルがリリースされてきたランボルギーニ・ウラカン。この「テクニカ」は、その集大成ともいえる最終バージョンだ。これまでウラカンのリポートは数多くお届けしてきたが、熟成を重ねてきたその実力は果たしていかなるものだったか──。

クルマと完全に対話できる1台に仕上がっている

ランボルギーニの屋台骨を支えてきたウラカンも気づけばデビューから実に10年という歳月が経過した。その間にライバル勢はモデルチェンジを繰り返しているにも関わらず、あえて空気を読まないように着実なる進化を続け今に至る。しかも、ウラカンの前身であるガヤルドから受け継いだV型10気筒自然吸気エンジンは今や640psにも達し、’03年に搭載が開始されてから驚くことに140psも向上させたのだからランボルギーニのアップデート策は尋常ではないと思う。

とはいえ、そんなウラカンが手に入るのも今年が最後。他社がハイブリッドパワートレインへの置き換えが進む中で、ピュアな大パワー自然吸気エンジンを新車で味わえるのもこれが本当の最後となることを覚悟して、最新版であると同時に最終形となる「ウラカン・テクニカ」を試乗することとなった。ましてや今回の試乗車の駆動方式はRWD仕様。AWDを主流とするランボルギーニにとって、これを最後に試せるのは幸運かもしれない。というのも、2016年にデビューしたウラカンLP580-2をはじめて海外で試乗した際、最初から最後まで違和感しか覚えなかったが、後の2020年にリリースされたウラカンEVO RWDではその印象が一変し、ランボルギーニの生真面目な姿勢に心打たれたことで、“猛牛=AWD”という図式が筆者の中で完全に覆されたからだ。もはや車両との対話を楽しみたいならRWDに限る! と、はじめて思えたランボルギーニであったから、テクニカのRWD仕様には期待しかなかった。もちろん、ラインナップにはAWDもあるから、少しでもリスクを抑えたいならこちらを選べばいいと思うが、ピュアなフィーリングを望むなら絶対にRWDがお奨めである。

5.2L V10ユニットは、前身となるガヤルドのデビュー当初から実に140psアップとなる最高出力640psを発生。最大トルクは565Nmで7速DCTと組み合わされる。0→100km/h加速は3.2秒、最高速度は325km/hをマークする。

ランボルギーニ通ならご存知かもしれないが、ウラカン・テクニカは、先にも触れたウラカンEVOと、ワンメイクレース車両のロードバージョンとして製作されるウラカンSTOの中間に位置するモデルで、端的に表するなら強大なスポイラーなどを纏う全身レーシング仕様となるSTOの控えめバーション。パワーも同一の640ps、STOの駆動方式もRWDだから、ほぼこう記して良いだろう。足まわりの設定やトラクションコントロール、さらにトルクベクタリングやリアホイールステアリングシステムなどのシャシー系を統合制御するLDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)もSTOと同一のアプローチを採るから、見た目でも分かりやすいSTOと比べると、ちょっとマニアックに映るし、かえって玄人ウケするモデルのようにも思われる。

ブロンズのダイヤモンドカットが施された20インチホイールはセンターロック式を採用するなどレーシーな印象。タイヤはブリヂストンのポテンザ・スポーツが組み合わされる。

“テクニカ”と表されるグレード名もその理由にあたるだろう。直訳すると“技術”ということになるが、これがウラカンの最終形であり、集大成的な意味合いを匂わせたいのは確か。そういう意味では、2017年に登場した、先進的なエアロダイナミクスシステムと大幅な軽量化が図られた、LP640-4ペルフォルマンテを思い浮かべるが、ウラカン・テクニカは、そこまでのインパクトがない代わりに、よりスーパースポーツモデルらしい、ピュアイズムを突き詰めた印象だ。

ドライビングモードの違いを存分に楽しめる

特にハンドリングは、可変ギアレシオをもつEVO RWDに対してテクニカは固定式が採用されているだけに、ドライバーの狙いどおり忠実に動く。さらに加えるなら、完全に路面と対話することを求められるとも言いかえられるが、リアステアが機能することも重なり、それなりのペースでワインディングを攻めたい場合は、ドライブモードの特性を予め知っておく必要がある。ウラカン・テクニカでは、今までよりも明確な狙いがはっきりと表れ、いわゆる“キャラ変”が激しい。

トリムやシート表皮にボディカラーと統一されたコーディネートが施されるスポーティなコクピット。各所にカーボン素材もあしらわれるなどレーシーな雰囲気も満点だ。

通常使用する「ストラーダ」モードであえてワインディングを攻めてみると、実のところ違和感しかなく、とにかく攻めにくい。これは快適性を重視しているから当然だが、これを「スポルト」に変更すると途端に足まわりが引き締まり、エンジンのピックアップレスポンスも向上、排圧も高くなり、高揚感が増してくるからその気にもなりやすいのだが、ランボルギーニのスポルトモードは、とにかく油断禁物。これまでと同様、明らかに派手なアクションに持ち込ませようとする傾向が強いから、テールスライドを存分に楽しみたい場合には最適だが、ワインディングなど公道ではリクスが高くなるため、クローズドコース専用と思ったほうがいい――というのが筆者の本音だ。

軽量化のため、ドアのオープナーはクロス地のベルト製を採用。

もちろん、スポルトの上には「コルサ」モードが用意されている。これをサーキット専用と捉えている方が一部ではいるようだが、タイムアタックに適しているモードであるから、確実なグリップ走行を求められるワインディングにも向いているのは間違いない。ウラカン・テクニカのコルサモードは、今のランボルギーニを象徴するかの如く、とにかく秀逸だ。今回はワインディングであったから限界域まで試せなかったものの、垣間見える挙動から判断すると、サーキットでニュートラルステアに持ち込むのは容易いはず。過去に乗ったウラカンのどれもがそうだったが、テクニカの場合はより動きが掴みやすくなっているように感じられた。無論、ワインディングで攻めている程度ではリアが流れ出すようなことはなく、むしろ安定感から得られる安心感の範疇で楽しめるだろう。フロントの接地感やインフォメーションもコルサモードでは一切の不満はなく、AWDモデルでは得られない、“攻め甲斐”みたいなものが味わえ、不思議と達成感や満足感が高かった。

航空機を模したスタートストップスイッチもお馴染みの装備だ。

ただ、本音で言わせてもらうと、跳ね馬のようなエンターテイメント性は薄く、楽しいとは思えないのは事実。また、いくらバージョンアップを繰り返しても新鮮味にもかける。だが、これがウラカンの本質だ。つまり、真摯に向き合うオーナーの期待にだけ応えたいという意図がそこに見え隠れる。速さの先にある楽しさよりも、一体となって実力を試し試される、完全対話型の1台に仕上がっていると今回の試乗を通して実感した。

とかくランボルギーニというと、一部ではやんちゃな存在のように思われているようだが、本質はまったく逆。それを存分に凝縮したのが、このウラカン・テクニカと言えるだろう。10年にも及びヒットしたことでも証明されているように、その完成度は折り紙付き。さらにV10ユニットに関しては、20年にも渡り進化を続けたのだから評価したいし、褒めるべきである。“最新こそ最良”もいいかもしれないが、熟成された最終版こそ価値があると思えてならなかった。

【SPECIFICATION】ランボルギーニ・ウラカン・テクニカ
■車両本体価格(税込)=29,992,916円
■全長×全幅×全高=4567×1933×1165mm
■ホイールベース=2620mm
■車両重量=1379kg
■エンジン種類=V10DOHC40V
■排気量=5204cc
■最高出力=640ps(470kW)/8000rpm
■最大トルク=565Nm(57.6kg-m)/6500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:245/25R20、後:305/30R20

問い合わせ先=ランボルギーニ・ジャパン TEL0120-988-889

【ANOTHER RECOMMEND】ポルシェ 911GT3
駆動方式こそRRであるものの、現在では希少ともいえる自然吸気の4L フラット6を搭載するという意味では、ウラカンと共通する部分がある。一般道とサーキットのいずれも楽しめるというキャラクターも然りだ。

リポート=野口 優 フォト=篠原晃一 ル・ボラン2024年1月号より転載

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2024/01/03 17:30

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