リアシートを省いて荷物スペースに
華やかなフィフティーズのアメリカ車の中でも、特に名車として謳われるのが、1955-1957年型のシボレー、いわゆるトライファイブ・シェビー(またはトライ・シェビー)だ。中でも、最後の年式である1957年型は、その明快なテールフィン・スタイルゆえ、1950年代アメリカ車を象徴する1台となっている。しかし実は、この年のシボレーはニューモデル生産開始の遅れにより、1年余計にキャリーオーバーされたのだという。
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このトライファイブ・シェビーについて、簡単に初年式から説明しておこう。1年目となる1955年型は、シボレーの歴史の中でも重要なモデルだ。イメージ的な面では、1940年代の面影(膨らんだリアフェンダー)を完全に払拭し、スタイリッシュで豪華なクルマへと、華麗に生まれ変わった点が大きい。車体構造を完全に見直し従来より低くなったボディは、2ドア・ハードトップで車高60インチ(約1520mm)を実現しており、ラップアラウンド・ウィンドウを採用、リアにもテールフィンが控えめながら採り入れられた。技術的な面では、シボレー初のV8エンジン導入が最大のポイントだ。
ラインナップは上級のベルエア、中級の210(ツーテン)、下級の150(ワンフィフティ)という構成。ボディは2ドアと4ドアのセダン、そしてワゴンがそれぞれに設定されており、また210以上には2ドア・ハードトップが、ベルエアのみにはコンバーチブルが存在していた。さらに210には通常の2ドア・セダンの他、室内を若干豪華に装ったデルレイというモデルも設けられている。ワゴンについても詳しく触れると長くなるのでここでは省略。
続く1956年型では210以上に4ドア・ハードトップが新設され、最後の1957年型ではボディの前後スタイルが大きく変更された。フロントはグリルとバンパーが一体化し、リアはテールフィンが鋭さを増している。今ではこの時代を象徴する存在となった1957年型シボレーだが、当時の販売はあまり振るわなかったという。競合ブランドであるプリマスが低くスリークなスタイリングに生まれ変わって人気を攫ったばかりか、フォードもスマートなボディに一新されており、シボレーはたった2年で、ずんぐりした古臭いイメージとなってしまったためである。
基本的なラインナップは1957年型でも変更はない。ここで採り上げているユーティリティセダンは、150の中でも特に簡素なモデルで、最初の1955年型から設定されていたものだ。室内後半を荷物置き場として割り切り、リアシートを省略したモデルで、例えばセールスマンが室内後方に商品を置いて営業回りに使うというような、完全な実用車である。150はクロームの装飾も質素で、1957年型では1955年型ベルエア/210に似たサイドモールが装着されていた。
エンジンは150でもV8が選択可能であったが、特にユーティリティセダンはその性質を考えると、路上に出た車両の大半は”ブルーフレイム”235.5-cid(3.9L)の直6を積んでいたことであろう。一方、このユーティリティセダンのもうひとつの顔はNASCARレースのためのベース車両で、シボレーが用意したそれらは専用のブラック/ホワイトのカラーリングをまとっていたことから、”ブラックウィドウ”の通称で知られている。
V8エンジンは大きく分類して合計4種類あったが、どのモデルでも全て選択が可能であった。排気量は2種あり、265-cid(4.3L)は2バレル・キャブ1基、最高出力162hpの1種類。283-cid(4.6L)は2バレル・キャブ1基の“ターボファイア283 ”(185hp)、4バレル・キャブ1基の“スーパーターボファイア283”(220hp)、そして4バレル・キャブ2連装あるいはフューエル・インジェクションを装備した“コルベットV8”の3種類があった。
コルベットV8はキャブ仕様では245hp、インジェクション仕様では250hpであったが、それぞれコンペティション仕様のカムシャフトを装着したバージョンがあり、キャブ仕様で270hp、インジェクション仕様で283hpとされていた。
ボディの細部、特にルーフの凹みは気をつけて修正すべし!
さて、1957年型シボレーはプラモデルの世界でも人気の車種で、1/32や1/25、1/24ばかりでなく、1/16や1/12などの大スケールでもキットがあるが、大抵はベルエアのモデル化であった。そんな状況の中、150、しかもユーティリティセダンをキット化したのが、2009年のレベルである。これは前述の”ブラックウィドウ”にも組めるキットで、と言うよりそちらの方がメインであろう、パッケージでもそちらの方が扱いが大きい。
ここでご覧いただいているのは、このキットをストック状態で組んだもので、自動車模型専門誌「モデルカーズ」の164号(2010年)のために制作された作例だ。以下、その時に併せて掲載された解説(作者・周東氏によるもの)をお読みいただこう。
「キットはレース仕様とストック仕様が組める2 in 1となっていて、部品構成もしっかりとしたものだ。シャシーやエンジン等の一部の部品は同社の1956年型デルレイからの流用であるが、変更されるべき部品はしっかりと変更されている。したがって不要なパーツも多く含まれているので、自分の作りたい形式以外のパーツは事前に除いておいた方がいいだろう。
ボディは実車のイメージをよく捉えているのだが、詳しく検分すると問題になる箇所も3つほど見受けられた。ひとつ目は、このキット最大の欠点かもしれないが、ルーフの表面が窪んでいるのだ。角度によってはルーフがうねっているようにも見えたので、パテを盛って修正を加えた。このルーフラインはデリケートなので、パテ盛り・削りの作業を数回繰り返したが、意外と時間のかかる作業となった。
ふたつ目はパーティングラインだ。通常、パーティングラインは凸状のものだが、このキットでは凹状の箇所が見られるのだ。場所はルーフのレインモールの上辺の部分だが、この部分は前述のルーフラインの修正とも関連してくるので、修正は慎重に行った方が良い。他にもフロントフェンダーのプレスラインに沿った箇所がうねった状態となっているので、注意して修正する。アウターホイールのリムの内側にもパーティングライン状のバリがあり、ここも慎重に修正しないとリムの形を崩してしまう。
みっつ目はパネルラインである。全体的に浅く、シャープさに欠けていて、場所によっては塗装で埋まってしまうのではないかと思われるところもある。簡単な作業ではないが、スジボリ工具でラインを深くハッキリとさせてあげると、全体がシャキッとする。
ウィンドウパーツでは、フロントのそれが薄く破損しやすいので、取り扱いに注意が必要だ。合わせは各面とも問題ない。インテリアで手を加えた方がよいのは断面の形だ。仮組みするとわかるのだが、サイドパネルが内側に傾斜しすぎているのだ。これはフロアパネルの幅を狭めてサイドパネルを立たせてあげればよいので、簡単に修正できるだろう。
エンジンは1955年型ベルエア由来のパーツで、できの良いものだ。しいて注意するとすれば、コイルの長さをすこし短くすることくらいだろう。パイピングしたときにファイアーウォールに干渉してしまうからだ。足周りは、リアはそのままでOKだが、フロントはアッパーアームにホイールが干渉するようなので、仮組み調整が必要だ。車高はそのままでOK。
ボディカラーはコンビコード816Eの『COLONIAL CREAM』と『INDIA IVORY』。前者はクレオスのC316ホワイトにC4イエロー、C2ブラックをブレンド。後者はGX1クールホワイトにC44タン、C2ブラックで調色している。インテリアは実車のスタンダード仕様としたので、説明書と異なる。黒(C33つや消しブラックとセミグロスブラック)とライトグレイ(C338ライトグレイを使用)のツートンで、ダッシュ上面とステアリングホイール関係はシルバーとなる」
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