兄弟車を用意して保険を掛けつつクラウン登場!
トヨタのクラウンは、日産セドリック/グロリアとともに、日本のタクシーの歴史を支え続けた車種である。セドリックよりデビューが5年早く、また生産終了も4年遅かったことを考えると(もっとも、最後のクラウン・セダン/クラウン・コンフォートはマークⅡベースであり、生粋のクラウンとは言えないのだが……)、まさに戦後のわが国のタクシーの歴史はクラウンとともにあったと言って良いだろう。
【画像32枚】スタンダード化・タクシー化に成功した観音クラウンを見る!
第二次大戦後のタクシーは、戦前からの生き残りのフォードとシボレー、しかも戦中の燃料事情の逼迫から代燃車に改造されたものが大半であった。やがて乗用車の生産が再開され、ダットサンのような小型車がタクシーとして使用される一方、トラックシャシーに乗用車ボディを架装した車両も、国産メーカーによって送り出されるようになってきた。
これはノーズ部分をトラックのまま後ろに車体を継ぎ足した形であったが、やがて見た目だけは本格的なボディをまとうようになる。こうした車種の代表的なものが、例えばトヨペット・スーパー(1953年)だ。R型エンジンの強力な走りにより「神風タクシー」の代表的な一台となったスーパーだが、それでもシャシーは未だトラック流用のものであった。
1955年クラウン登場、そして約4年後に後期型へ
こうした中で、トヨタによる戦後初の本格的な乗用車――フレームから乗用車専用として設計されたシャシーを持つ――トヨペット・クラウンが1955年1月に発売される。ボディは観音開きのドアと、後傾したCピラーが特徴だ。デザインの過程に当たっては当時のキャデラックをそのまま縮小したモデルも試作されたというが、完成したクラウンのスタイリングは1953年型プリマスに酷似していた。エンジンはスーパーと同じR型(1.5L 直4 OHV、48ps)を搭載、レイアウトはもちろんFRで、サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後ろリーフリジッド。
当時の日本はまだまだ道路の整備が進んでおらず、そうした悪路での酷使に耐えられるかどうか、またそこに不安を抱くであろう事業者の心情に配慮して、フロントもリジッド式サスペンションとした兄弟車(実際にはエンジンが共用という程度だが)、トヨペット・マスターが同時に発売されたのも有名なエピソードだ。マスターは、アメリカ風のクラウンに対し、ヨーロッパ調のスタイル(実際にそう言えるかはさておき、トヨタの意図としてはそうであった)を纏っていた。
蓋を開けてみると、クラウンは酷使に耐え乗り心地も良好ということでタクシー業界に受け入れられ、マスターの方は2年ほどで販売終了してしまった。当時の日本各地を撮影した写真や映像を見ると、タクシーとして使用されるクラウンの姿を、そこかしこに見ることができる。
登場から約1年後には、豪華版のデラックスを発売。サイドモールが増やされ、ラジオやフォグランプが装備されていた。1958年にはエンジンを58psにまで強化、そののち同年10月にマイナーチェンジが行なわれ、前後デザインを大きく変更した。フロントはヘッドライトが埋め込まれたような形となり、その上部が庇状に伸びた形状となったほか、ターンシグナルも大型化されている。リア周りはテールフィンがより鋭角的になり、テールランプも縦長な形へと改められた。
このマイナーチェンジの後、トヨグライド(AT)装着車やディーゼル仕様などが加えられたが、1960年10月のマイナーチェンジでは、1.9Lモデル(1900デラックス)が追加された。これは同年9月に小型車枠が拡大されたことを受けたもので、最高出力90psの3R型(R型をボアアップしたもの)が搭載されている。翌1961年4月には、この3R型を80ps仕様とした3R-Bを積むスタンダードを加え、クラウンは1.9Lモデルに統一された。そして1962年9月にフルモデルチェンジを行い、クラウンは二代目S40型系へと進化したのである。
さて、ここでご覧いただいているモデルカーは、この初代クラウンの後期型、1900スタンダードをベースとしたタクシーである。スケールは1/24だが、現在までのところ、このスケールの初代クラウンのプラモデルは発売されていない。この作例は、ダイキャストミニカー(アシェット刊『国産名車コレクション』付属)をベースに、細部をスタンダードへと改め、タクシー仕様として仕上げたものだ。
作例を制作した畔蒜氏にとってこのトヨペット・クラウン1900スタンダードは、これを愛車として個人タクシーを営業していた祖父の記憶とともに、非常に印象深い1台であるとのこと。そこで、ダイキャストミニカーを分解・改造・再塗装しての作例制作となった、という次第である。その詳細や制作過程については、画像のひとつひとつをじっくりとご覧いただきたい。
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