新意匠!の1964年型
日産の高級車と言えばセドリック(とグロリア)であったが、オーナー向け乗用車としてはY34型を最後にその系譜は途絶え、名前の残った営業用セダンも販売を終了して久しい。そんなセドリックの初代モデル、30型は1960年4月に発売された。
【画像22枚】重厚さよりむしろ爽やかなイメージのカタログを見る!
車体の基本構造はオースチンに倣ったモノコック式、ボディの基本プロポーションも英国製サルーンを思わせる分厚いものであったが、縦に並べたヘッドライトやラップアラウンド式のフロントウィンドウに、当時人気の高かったアメリカ車からの影響が色濃く感じられる。レイアウトは無論FRで、サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがリーフリジッド。グレードはデラックスとスタンダードの2種類。
当時の小型車規格は1500ccであったため、両グレードともにエンジンは1488ccのG型を搭載していたが、同年、この規格が2000ccへ拡大されたため、追って11月にラインナップに加わったのが、1.9Lエンジンを搭載した上級モデル、カスタム(G30)である。搭載エンジンは1883ccのH型で、ホイールベースも100mm延長されて2630mmとなっていた。翌1961年5月にはデラックスも1.9L化されたが、カスタムの方が格上のモデルとなる。
1962年4月にはエステートワゴンを追加、こちらも1.9Lエンジンを搭載している。ヘッドライトが横4灯に変わったのは1962年10月のマイナーチェンジでのことで、型式名はそれまでの30型系から31型系へと改められており、カスタムはH31となる。カスタムのホイールベースはさらに2690mmへと延長、このときスタンダードにも1.9Lモデルが追加されている。このスタンダードおよびデラックスの1.9Lモデルはホイールベース2630mmとなる。
1962年12月にはセパレートシート付を加え、1963年2月にはセドリック・スペシャル(50型)を発売した。これは前年の全日本自動車ショーで発表されたモデルで、2.8LのK型エンジンを搭載するだけでなく、ホイールベースは2835mm、全長は4855mmまで拡大されている。以後、ディーゼルやBWの3ATなどの追加を挟みつつ、1963年、1964年のどちらも9月にマイナーチェンジを行っており、各年式でグリルなどの細部が異なる。
この頃の日本車は、と言うより少なくともセドリックは、アメリカ車に倣ったイヤーモデル制を採っており、1963年9月に発売されたのは1964年型、1964年9月に発売されたのは1965年型となる。グリル等の細部デザイン以外の変更点をすこし詳しく述べると、1964年型では従来よりリアウィンドウが拡大され、ダッシュボードを木目パネル(デラックス)あるいはグレー塗装(スタンダード)に変更、メーターはそれまでの円形から横型に。トランスミッションは3段フルシンクロが標準となり、従来あった4段ミッションはオプション設定となった。
1965年型では、助手席側ダッシュ下に荷物棚を設けたり、セパレートシートをリクライニング可能としたり、ルームミラーを大型化したりといった、非常に細かい改良が行なわれている。テールランプは三段に分割され、ターンシグナルはオレンジに変更。そして1965年10月にはフルモデルチェンジを行い、二代目へと生まれ変わった。
スペシャルとカスタムを除いた、中・下級グレードのカタログ
さて、ここでご覧いただいているのは、この初代セドリック後期型のカタログである。サイズは210×298mm(縦×横)、表紙を含めて全24ページというものだ。発行年月についての記載はないが、「’64年型」と記されているところから、1963年9月から1964年9月にかけてのものということになるだろう。
掲載されているのはスペシャルやカスタムなどの上級モデルを含まない、1900デラックス以下のグレード――すなわち、1900デラックスと1900スタンダード、1500、およびエステートワゴンである。カタログの作りにはこれと言って変わったところはなく、高級車ではあっても最上級グレードではないという、若干控えめな雰囲気が感じられるもの。表紙には写真はなく木目の地に車名が刷られているのみ、この木目はダッシュボードに使用されているものと同じではないか……と思ったものの、特にそういうことではないようだ。
最上級モデルではない、と言っても、スタンダードが2種類も大きく紹介されているわりには、さほど貧相なイメージはない。その理由は、当時の自動車につきものの明るいカラーコーディネイトであろう。明るめのブルーの濃淡や、クリームベージュ/レッドコーラルのコンビといったカラーリングのインテリアはパッと華やかで、なかなか魅力的である。ただし、「セドリックのスタンダードで海辺に!」というような、ちぐはぐなイメージの写真もあって、そうした意味でも面白いカタログと言えるだろう。
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