【最新モデル10番勝負!/JUDGE 03】ホットなコンパクトスポーツの決定版は?【BMW M2×アルピーヌA110S】

国籍も素性も異なる2台だが、コンパクトスポーツとしての魅力は甲乙つけがたいものがある。フランス産のピュアな2シータースポーツカーと比べることで、M2の魅力に迫ってみた。

日常からスポーツ性能を感じることができる2台

カテゴリー違いのようにも思えるが、手ごろなピュアスポーツカーを考えたとき、BMW M2とアルピーヌA110Sはどちらも操る楽しさに溢れている。

速いだけでなく普段使いにも向きそうなハコ車を選ぶか、2シーターのミッドシップスポーツカーを選ぶか? アルピーヌA110Sは5年前にデビューし、ライトウエイトスポーツカーの基準を書き換えた。ポテンシャルが未知数なのは、デビューしたばかりのBMW M2の方だろう。クルマ好きなら誰でもそのステアリングを握ってみたいと願う注目の1台だ。2台を並べてみた時の印象は対照的だ。小粒なボディの角がキレイに丸められたアルピーヌに対し、M2はひと回り大きく、ブロックのように角ばっている。

だがM2だけに注目してみると、E30のM3を彷彿とさせるブリスターフェンダーが興奮を誘う。車幅は兄貴分のM4とほぼ同じだが、M2のシルエットはメリハリが強いのだ。赤いMボタンが主張するステアリングを握り、走り出してみる。

都内の雑踏を走っていても、M2は特別なクルマに乗っている感覚がひしひしと伝わってくる。バケットタイプのシートとボディ、そしてボディと締結された足回り、タイヤという一連の繋がりには微塵のアソビもなく、まるで硬質なゴムで結ばれたような一体感が漲っている。アダプティブMサスペンションのセッティングはモードを問わず洗練されており、コンフォートモードならロングドライブも快適にこなせるだろう。

ゆっくり街中を走っている限り、1.7トンという車重がクルマを少しダルに感じさせることは否定できない。だが“S”のアルファベットからはじまる型式を持つ3lのストレート6+ターボエンジンに鞭を入れれば、重量を払しょくすることは容易だ。

まるで自然吸気エンジンのようにレスポンスが良く、低回転からもりもりとパワーがある。そしてなにより大事なことは、6速MTとの組み合わせによって1速ずつの加速のドラマがしっかりと感じられる点だろう。今の時代に“わざわざ”レシプロエンジンをブン回す理由が、このクルマにはある。

一方のアルピーヌA110Sだが、このクルマに乗ると、少し乗り心地が硬いといつも感じていた。だが今回はM2のそれと同等だと思えた。引き締まっているが、ゴツゴツ感はキレイに排除されている。だがM2に比べアルピーヌのコクピットはタイトだ。まるでレーシングカーに乗り込むような、暗がりに潜り込むような感覚がある。実際、A110Sは走りだけにフォーカスした造りになっている。

カーボン製のルーフを持つM2でもコーナリング時の腰高感は一切感じなかったが、A110Sはそれ以上だ。まさに地面にへばりつくように走る。そして賢いデュアルクラッチATのおかげで駆動もシームレス。室内のタイト感にさえ慣れれば、普段使いも問題ないはず。A110Sの欠点を挙げろと言われても簡単ではない。ひと昔前なら玄人向けと言われたミッドシップ+ターボエンジンのクセに、ポテンシャルを誰でも簡単に引き出せすぎる(?)ことくらいだろうか。

いずれも劣らぬスポーツ性能を比較的容易に引き出すことができる今回の2台。だがたいていのクルマ好きにとってこの2択は難しくないはずだ。既にBMW派なのか、ピュアな2シーターが欲しいのかという結論が出ているはずだからである。それでもパーソナルチョイスとしてはM2の方が魅力的に映った。電気の時代が迫っている今だからこそスカッと抜けのいいストレート6が貴重なものに感じられるし、それを“手こぎ”で操る伝統的な所作が秘めている価値も、これから年を追うごとに高まっていくはずだからである。

フォト=佐藤亮太 ルボラン2023年9月号より転載

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