見慣れないリア周りが、これはこれでイイかも!「前期型130セドリック後期型」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第10回

全ての画像を見る

二度目のマイチェンで後部のデザインを大幅変更

大変な好評をもって歓迎されている(たぶん)当連載「魅惑の自動車カタログ・レミニセンス」の第1回では、ピニンファリーナによるデザインの411ブルーバードをご紹介したが、もう1台、同じくピニンファリーナによるスタイリングの日産車を採り上げよう。130セドリックである。

【画像12枚】イタリアンモードを微妙にアップデートした前期の後期セドリックを見る!

初代セドリック(30型系)は1960年、それまで日産がライセンス生産を行ってきたオースチンA50での蓄積を活かした乗用車としてデビューした。排気量は1.5L、のちに1.9Lに拡大。ボディスタイルは一見アメリカ的なディテール(ラップアラウンドのフロントウィンドウ、縦配置のデュアルライト)が特徴であったが、分厚いプロポーションには、オースチン、ひいては英国車の影響も見え隠れしていた。このセドリックがモデルチェンジを行って二代目に移行したのは、1965年10月のことである。

二代目セドリック(130型系)のスマートなボディは、前述の通りイタリアのピニンファリーナがデザインを担当したものだ。下すぼまりのCピラーや、リアフェンダー上部からルーフ後端を結ぶメッキモールが特徴的だが、フロント周りの形状や、緩やかに下降するサイドラインは、同じくピニンファリーナが手掛けた、キャデラック・ジャクリーヌ(1961年)にも共通するもの。このフロントマスクのモチーフは、1967年のオースチン3リッターにも用いられている。

車体は初代同様にモノコック式で、全長4680mm、全幅1690mmと初代より大きく、全高1455mmと初代より低い。ホイールベースは2690mm。サスペンションは前ダブルウィッシュボーン/後リーフリジッドで初代と変わりなかったが、エンジンは新開発の直列6気筒SOHCを、トップグレードのスペシャル6に搭載。これこそ、その後長く日産車を支え続けたL20型の登場である。中級グレードには同じ直6 2LながらもOHVのJ20、そして廉価モデルには直4 2LのOHVであるH20。シフトは3速が標準で4速をオプション設定、6気筒車にはボルグワーナー製の3速ATも用意されていた。

こうして華々しくデビューした2代目セドリックであったが、その販売成績は芳しいものではなかった。下降したサイドラインを特徴とするボディスタイルが「尻下がり」として不評を買ってしまったことが、その最大の理由である。このため、1966年10月の細部(テールランプやフロントグリル)の変更を挟み、1967年10月にはリアフェンダーなどトランク周りの形状を大きく修正。フェンダー上部やトランクリッドは水平に近くなり、これはトランク容量の拡大にもつながっている。

セドリック好きには「前期型の後期型」としてお馴染みのリアビュー。国産旧車好きでもこのリアスタイルは記憶にない、という方も少なくないようだ。コの字型のテールランプが目を引くが、リアエンド全体の印象としては、のちの510ブルーバード・クーペにも似た形である。

そしてこれでもまだ足らぬとばかりに、翌1968年9月にはビッグマイナーチェンジを敢行。フロントノーズは完全なフラットデッキとなり、リア周りもさらにスクエアな形状に変更された。サイドウィンドウには曲面ガラスが採用され、これによりグリーンハウス形状も上すぼまりのものとなって、見ようによっては完全に異なる形である。このデザイン変更はなかなか好評だったようだが、当時のライバルは”白いクラウン”で大いに売ったS50型系クラウンだけに、やはり苦戦が続いたようだ。

エンジン変更や格上げが続いた中級グレード
さて、ここでお目にかけているカタログは、2度目のマイナーチェンジを受けた1967年10月~1968年9月のタイプ、所謂「前期の後期」にあたるモデルのものである。最上級のスペシャル6と最下級のスタンダードを除いたバリエーション、つまり中級グレードのみを紹介するカタログだ。サイズは363×255mm(縦×横)とかなり大きく、というより縦長で、そのため真ん中に二つ折りにした折れ目がついているのだが、この点はご容赦いただきたい。発行年月の記載はなし。

中級グレード専用とは言いつつも、紙質は悪くなく、しっとりした手ざわりにも高級感がある。掲載されているのはカスタム6、デラックス6、パーソナル6の3グレードだが、すこし補足しておくと、パーソナル6はそれまでのスタンダード6(スタンダードには4気筒車と6気筒車があった)をベースに、オーナードライバー向けに仕立てたグレードで、1966年10月に追加されたものだ。スタンダードでは黒いゴムシールのみとなる前後ウィンドウにメッキモールを装着、ホイールにもデラックスと同じフルキャップを付け、内装はスタンダードと同等ながら前席がセミセパレートとなる。

また、デラックスは当初スタンダードと同じ4気筒のH20型エンジン搭載であったものが、これも1966年のマイナーチェンジで6気筒車に格上げとなり、この時デラックス6へと名称を変えている。デラックス6のエンジンはL20ではなくJ20である。型式はL型エンジン搭載モデルがH130、J型搭載モデルがP130、H型搭載車が130となるので注意。

130”前期の後期”セドリックは、ボディの大部分にはオリジナルデザインの持ち味が残るものの、リア周りの基本形状は後期型のそれに近づいており、過渡期的な雰囲気が却って魅力である。続く230型以降のロングノーズ・ショートデッキとは異なり、130はキャビン・フォワード的なプロポーションの持ち主なのだが、前期の後期はそれを際立たせるスタイリングで、スーッと長く伸びたリアエンドがなかなか格好良い。このカタログからその点を感じ取って頂ければ幸いである。

注目の記事

「ル・ボランCARSMEET」 公式SNS
フォローして最新情報をゲット!