【新世代コンパクトの実力検証】都内、高速道路、行楽地で使ってわかった!  次に買う輸入ミニバンは?

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グループ比較の最後を飾るのは新しい輸入ミニバンの3台。コンパクト枠には収まりきらない体躯やMPVといえそうなボディタイプなど、キャラクターの多様性はご愛嬌。密かな盛り上がりの兆しを見せる輸入ミニバンの、”買いの一台”を考察した!

カングーの立派すぎる正常進化に感激
BMW2シリーズ・アクティブツアラーはたしかにMPVだがミニバン枠に入れるのは無理があるのではなかろうか。適役は3列シートのグランツアラーではと思ったが、初代限りでそのモデルを終え、現行2代目2シリーズにはラインナップされない。

そんなわけでちょっとずるい感じもしつつ、身のこなしに障らないサイズ感は当然ほかの2台よりも街中で分がある。それでいて余裕のある緩めなプロポーションで、着座姿勢も乗り降りもラクな上に視界も良好だから、週末を小さな子供と元気に遊ぶ若夫婦だけでなく、大は小を兼ねるとは限らないことを知る大人にも塩梅がいい。

この日試乗したのは2Lディーゼルターボを搭載する218dだが、きちんと密閉された室内は静かで、ガラガラいわないどころかザラザラした振動まできれいに遮断され、腰のある足回りと相まって高級車らしい乗り心地だった。カーブドディスプレイやフローティングタイプのセンターコンソールを備えた室内は近未来風で、艶を抑えたオープンポア仕上げのユーカリウッドトリムやハーマンカードンのパンチングメタルスピーカーカバーは王道リッチなアクセント。この設えなら都心のキラキラに気圧されることもない。

2:1:2の分割可倒式リアシートはスライドも可能で、荷室は470Lから最大1,455Lまで拡大できる。リアバンパー下に足をかざせば自動で開くハッチは、バーベキュー道具を抱えたアウトドアで便利なのはもちろん、ガラスのビル街でゴージャスなショッパーを手にしても映える。

それでいてBMW的スポーティさは健在で広いフィールドへと誘われる。高速道路のゲートからは結構なロケットスタートが切れるが、あまり色気のない音でうなるのはご愛敬。巡行時はごく静かだ。

癒し系の205/60R17タイヤにもかかわらず、ピタッと揺らがずたっぷりのトルク感でぐいぐい前に出る。路面の段差では剛性の高さゆえかズンッと突き上げられ、足の固さにびっくりしたが、2台のフランス車と乗り比べたこの日は、「近頃のフランス車はドイツ車みたいに足が固くなった」という言説は嘘だと体感した。

◆「BMW 218d アクティブツアラー エクスクルーシブ」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=4,385×1,825×1,580mm/ホイールベース=2,670mm/車両重量=1,600kg/最高出力=150ps(110kw/4,000rpm/最大トルク=360Nm(36.7kg-m)/1,500-2,500rpm/トランスミッション=7速DCT/サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク/ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク/タイヤサイズ(F:R)=205/60R17:205/60R17/車両本体価格(税込)=5,400,000円/問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

 

【写真17枚】乗り心地も使い勝手も、良い意味で大雑把なのが◎。 

カングーはいい具合にロールしながら路面とタイヤがひたひたと触れ合っていることを伝え続ける。搭載する1.5Lディーゼルターボの特性もあって走り出しこそゴロゴロしているが、中高速域での軽やかかつ滑らかな走りはこれぞルノーだ。キャラクター的にディーゼルがいいに決まってると思い込んでいたが、走りの気持ちよさに「ガソリンならもっと鼻先が軽いのか……」と惹かれてしまう。

ちょっと足がつっぱり気味なのは「いっぱい荷物積め!」というカングーからのメッセージだろう。なにしろ荷室は先代比で100L以上増えた775L。観音開きのバックドアを開けた間口は、膝の高さほどの低床だから、重いものも積み込みやすい。3:2分割の2列目に加え助手席も含めシートを畳むのも簡単で、最大2,800Lまで積み放題となっている。体躯もしっかりとして、歩行者・自転車検知機能付き衝突被害軽減ブレーキはもちろん、ACCやパーキングアシストまで標準装備される。

ガソリン車で395万円、ディーゼル車で419万円という値札にはカングーのくせにかわいくないと驚いたが、ADASコミコミ価格でオプション追加するのはETCくらいだから納得がいく。もうかわいいカングーちゃんではなく、こんなにも立派に正常進化を果たしているのだから、いい加減過去にとらわれず前を向くべきだろう。

ただ惜しむらくは素っ気ない座り心地のシートだ。ふんわりとやさしくバックハグしてくれたあの頃のあなたが忘れられない。日本市場にだけ用意されたという、黄色いボディカラーのブラックバンパー仕様「クレアティフ」が、別れた恋人が置き忘れたジャケットのようだ。ああ、未練。

◆「ルノー カングー クレアティフ」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=4,490×1,860×1,810mm/ホイールベース=2,715mm/車両重量=1,650kg/最高出力=116ps(85kw)/3,750rpm/最大トルク=270Nm(27.5kgm)/2,000rpm/トランスミッション=7速AT/サスペンション(F:R)=マクファーソン:トーションビーム /ブレーキ(F:R)=V ディスク:Vディスク/タイヤサイズ(F:R)=205/60R16:205/60R16/車両本体価格(税込)=4,190,000円/問い合わせ先=ルノー・ジャポン 0120-676-365

使い勝手もハンドリングもリフターがいち枚上手
カングーからリフターロングに乗り換えると、武骨な感じがする。インテリアは、黒基調にブロンズカラーのトリムが施され、全席フルサイズで独立したファブリックシートにもブロンズカラーのステッチが効いて、実用車然としたカングーよりずっとしゃれっ気があるのに、走りに「やったるで」感がすごいのだ。出足こそちょっと重たそうにするが、1.5Lディーゼルターボは街中でもアクセル開度に明快に応え、8段を賢く選ぶATを介してガーッと走る。

こんなにミニバン然としたなりなのに、コクピットはプジョーお約束の「iコクピット」。とくれば当然備わるのは天地がまっすぐの小径ステアリングホイールで、その見た目を裏切ることなく中速域でのシュアなハンドリングが供される。剛性感や振動と音のマネジメントはカングーが上手だが、それすら景気いい。ハンドリングが楽しめる足のよさは高速でも有効で、しっかりと踏ん張りまっすぐに前進する。

今回試す機会はなかったが、ヒルディセントや雪/砂/泥ねい路に対応するアドバンスドグリップコントロールが付いているのを見るだけでも心強く、どこかヤバいところに踏み入ってみたくなるわくわく感がある。

それから好印象だったのは、サイズも姿勢も大人がしっかり座れる3列目シートが意外と扱いやすかったこと。とはいえ国産ミニバンと比べちゃ雲泥の差で、なにしろ3列目へのエントリーはリアハッチからよっこらしょか、2列目を前に倒してえっこらせと乗り越えるか。でも小柄な50代女性の筆者でも、ケガなく(これ大事)畳んだり取り外したりすることもできた。

ただしハッピーハンドリングに付き合わされる3列目は、いくらフラットライドとはいえ憂鬱だろう。2シリーズ・グランツアラーが初代限りで終了してしまった理由も、駆けぬける歓びのせいじゃないかと踏んでいるので、ドライバーのみなさんご注意を。

◆「プジョー リフターロングGT」SPECIFICATION
 全長×全幅×全高=4,760×1,850×1,900mm/ホイールベース=2975mm/車両重量=1700kg/エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ディーゼルターボ/1498㏄/最高出力=130ps(96kW)/3750rpm/最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1750Rpm/トランスミッション=8速AT/サスペンション(F:R)=マクファーソンストラット:トーションビーム/ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク/タイヤサイズ(F:R)=215/60R17:215/60R17/車両本体価格(税込)=4,550,000円/問い合わせ先=ステランティスジャパン 0120-840-240

◆PERSONAL CHOiCE:「プジョー・リフター」
ここ数年、Vクラスはいいんだけど大きすぎるんだよな、なんて思っていたので、これはちょうどいい! と浮かれました。ショルダーライン下にでっぱりがないので、駐車時含め狭い所でとても扱いやすいのも◎でした。

 

ポート=竹井あきら フォト=岡村昌宏(CROSSOVER)

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