2003年に設立されたシリコンバレー発の小さなEVメーカーは、世界で最も売れるEVを生み出し、人々の生活や価値観を変える最先端企業へ成長した。まずはそんなテスラに興味がある、そしていつかはテスラ車に乗りたい! と憧れる読者なら知っておきたいテスラの基本をご紹介。
Q:テスラってどんな会社? 何が凄いの?
A:テスラのミッションは、地球をクリーンで持続可能な惑星にすること
テスラは、創業時こそ「テスラモーターズ」という社名だったが、いまや単なる自動車メーカーではありません(17年に社名を『テスラ』に変更)。もちろん電気自動車(EV)を製造しており、すでにEVのシェアでは世界1位。その車作りのスタイルは超合理的で、環境への対応も先進的だ。
テスラはEVを作りながら、そのEVに搭載するリチウムイオン電池を開発し、EVを充電する施設(スーパーチャージャー)を運用し、家庭で太陽光発電を行うソーラーパネルを作り、そこで発電した電気を蓄電する大型の蓄電池も作っている。さらに、EVの心臓部にあたるコンピューターと、それを動かすソフトウェアも自社で作っており、AIで動く人型のロボットも作っている。
つまりテスラはEVメーカーでありながら、ソフトウェアメーカーであり、ハードウェアメーカーでもあり、電力をマネジメントするインフラを整備している会社でもある。EVのエコシステムを構築し、人々にさまざまな製品やサービスやエネルギーを提供しているのだ。
そんなテスラの企業ミッションは、地球上のエネルギーのすべてを、化石由来の燃料から再生可能エネルギーに置きかえて、持続可能でさらに発展可能な惑星を創りあげること。これは、完全に自動車メーカーの範疇を超えている。このミッションは、イーロン・マスクの「マスタープラン」でも繰り返し提示されてきた。彼らは、本気で世界をクリーンな場所に変えようとしている。
Q:テスラとほかのクルマの大きな違いって何?
A:加速が強烈でコンピューターも速い。未来を感じられるクルマ
テスラはEVなので環境に優しく、経済的にもガソリン車よりリーズナブルなクルマ。しかし、テスラより先行していた電気自動車と決定的に違うのは、暴力的ともいえる加速力を兼ね備えている点だろう。たとえばモデル3のパフォーマンスというグレードは、0〜100キロの加速が3.3秒。モデルSのPlaidでは、なんと2.1秒という衝撃の加速力。イーロン・マスクが「自分専用のジェットコースターを持っているようなものだ」と表現したのもよくわかる。テスラ車にハマる人は、この中毒性のある加速性能が大いに関係していると思われる。
また、テスラの心臓部にあたるコンピューターも恐ろしくハイスペックだ。よく、テスラを称して「スマホにタイヤを4つつけたガジェット」などという表現を見かける。この表現は間違っていないが、そのスマホに積んだ「プロセッサーが恐ろしく高性能であること」を補足しないと、表現は正しくない。テスラは、自動車メーカーの思想で製造されたクルマではなく、シリコンバレーのテック企業が作った「超高性能PC を搭載した爆速電気自動車」だ。しかも安全性でも突出している。これまでの常識を覆す、未来を感じさせるクルマでもあるのだ。
【写真7枚】テスラって? まだまだ知らないテスラのすべてがわかる!
Q:イーロン・マスクの「秘密のマスタープラン」って?
A:テスラのロードマップで、現在パート3が進行中
テスラは、2003年にテスラモーターズとしてカリフォルニアのシリコンバレーで設立された。イーロン・マスクは5人の創業メンバーの1人だが、最初からCEOだったわけではない。彼がCEOに就任したのは2008年のことで、それに先立つ2006年、テスラのウェブサイトに「秘密のマスタープラン」という文章をアップしている。これは現在でも読むことができ、日本語版もある。
その中で彼は、「テスラモーターズの包括的な目的(そして私が出資している理由)は、炭化水素を採掘して燃やす社会からソーラー発電社会へシフトを加速させること」だと述べている。加えて「テスラのロードスターは、ポルシェやフェラーリのようなガソリンエンジンのスポーツカーと真っ向勝負できる一方、プリウスの2倍のエネルギー効率を持っている」とテスラ車を持ち上げた。
「新しい技術は、最初は高価。だから、まずはハイエンド市場向けの高性能スポーツカーで資金を稼ぎ、次にその売上金で4ドアのファミリーカーを作る。さらに、その次に手頃なものを作って規模を広げていく」と、極めて明解なロードマップを示した。そして実際に、テスラはマスタープラン通りに会社を大きくしている。
この最初のマスタープランから2年後の2008年に「ロードスター」を発売、その4年後の2012年に「モデルS」を発売。そして、テスラを躍進させた「モデル3」を発売した2016年には、マスタープランのパート2がウェブサイトに公開された。「10年前に書いた最初のマスタープランは最終段階に入った」と始まるパート2で、イーロン・マスクは「サステナブル(持続可能)という価値観は、ヒッピー的なものではなく、誰にとっても重要なことなのだ」と主張する。「さもなければ、人類は……
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