もう二度と衰えることはないであろうBNR34の人気と価値
走行距離のほぼ未使用車が数千万円の値を付けたとか、同車を狙った窃盗団の出没の兆候だとか、SNSを軽く徘徊すればBNR34こと、最後の“スカイラインGT-R”に関する情報を見つけることは容易い。性能面でBNR34をほぼ全域で凌駕するマルチパフォーマンス・スーパーカー、R35が登場しても、その人気は健在、というより、より高まったと言っても過言ではない。人気に比例して価格はうなぎ上りで、もはやそんな高額車をチューニングしてサーキットで全開走行しようという猛者は、ベテランのBNR34乗りくらいなもので、基本はコンディションの維持に精進するオーナーがほとんどだろう。
そんな“お宝BNR34”にももちろん現役時代はあった。BNR34が登場した1999年頃といえば、チューニングカーの性能をはかる指針がそれまでの「ゼロヨン何秒、最高速時速何キロ」から「筑波サーキット2000を1周何分何秒で走れるか」といういわゆるタイムアタック系にシフトしつつあった時期。エンジンのパワーを上げるだけの改造から、それに見合ったアシや空力性能、冷却性能などトータルでのバランス取り、真の意味での“チューニング”が必要とされ、その結果、かつては不可能とされた筑波サーキット2000の1周1分切りを実現するチューナーが続々と現れるようになった。
【画像7枚】筑波サーキットで1分を切ったマインズチューンのBNR34 GT-Rモデルカーを見る
その強力なコンテンダーとして名を馳せたのが、1986年創業の『マインズ』だ。マインズはまだボルトオンターボや排気量アップ、追加インジェクター他、物量作戦でパワーを稼いで速さを追求する手法が幅を利かせていた1980年代のチューニングカーシーンに、車載コンピューターを介して燃調や点火時期他をコントロールして効率よくエンジン出力を向上させる“ロム・チューン”あるいは“コンピューター・チューン”で一躍名を馳せたロジカルなチューンドカー・コンストラクターだった。
タイムアタックが盛んになり始めた2000年代初頭、もはやベース車の原型をとどめない、お化けのような空力パーツやウィングを装着した“タイムアタッカー”がはびこる中、マインズが作るマシーンは一見するとストックと見まがう控えめなアピアランスをキープしており、その実走るとめっぽう速いという、“羊の皮を被った狼的チューンドカー”として一目置かれる存在になっていた。
今回メイクアップがモチーフとしたBNR34は、筑波サーキット2000で1990年代末にラップタイムで1分切りを達成したのをはじめ、オドメーターに刻まれた約1万キロの内訳はすべてサーキット走行という、筋金入りのタイムアタッカー。フロントリップ、カナード、エアロミラー、リアウィング(純正比で脚がやや長い)、トランクスポイラーなどは『マインズ』のオリジナル部品を再現し、カーボン製部品にはすべてカーボンパターンのデカールを貼り込み、その上からクリアコーティングを塗装して鏡面仕上げとしている。
完成品のモデルカーとしては類を見ない、実車さながらの車高やキャンバーの表現の饒舌さもさすがはメイクアップと言ったところ。今ではなかなか見られなくなった、クラッシュなど厭わず、本気で筑波サーキット2000を駆け抜けた往時の雄姿にこの精密なモデルを通して思いを馳せてみるのも悪くないだろう。
取材協力:メイクアップ=https://www.makeupcoltd.co.jp/
商品ページ:https://www.makeupcoltd.co.jp/products/detail/1281
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