遠藤イヅルが自身のイラストともに1980年代以降の趣味車、いわゆる”ヤングタイマー”なクルマを振り返るという、かつて小社WEBサイトでひっそり!? 連載していた伝説の連載、その進化版がこの『ボクらのヤングタイマー列伝』です。第6回はフラッシュサーフェスの鬼、アウディ100です!
ボクらのヤングタイマー列伝第5回『ルノー・エクスプレス』の記事はコチラから
3代目アウディ100は、現在のクルマにも引けを取らないデザインを纏っていた
現在アウディのラインナップでEセグメントを担当するのがアウディA6。メルセデス・ベンツEクラス、BMW5シリーズなどがライバルですね。そんなA6がかつて『アウディ100』だったことはみなさんご存知かと思うのですが、100からA6に名称が変わったのは1994年。もう25年以上前のことなのですから驚きです。
初代アウディ100(C1)は1968年にフォルクスワーゲンも含めた旗艦モデルとして登場。1976年にはフェルディナント・ピエヒが手がけた2代目(C2)に、そして1982年に3代目(C3)にモデルチェンジを果たすのです。2代目まではいかにも1970年代生まれ然としていたのに比べ、3代目は現在のクルマにも引けを取らないデザインを纏っていました。今では空力性能は良くて当たり前になったので新車発表の際に”CD値=0.XX!”とはあまり謳わなくなりましたが、クルマの最高速や燃費の向上には空力が大事なのだ、という考え方を市販車として初めて積極的に盛り込んで来たのが3代目アウディ100なのです。それまでももちろん空力は意識されていたものの、3代目100は徹底していました。アンダーボディを平滑化、窓部の段差すらもなくしてフラッシュサーフェス化を行っています。これによって得られたCD値はなんと0.30! ちなみに同時期の国産車、日産パルサーEXAは0.37、”アウトバーンの旋風(かぜ)”というキャッチコピーの4代目日産ローレル(C31)は0.38でした。小学生ながら自動車雑誌を見ていたぼくは、アウディ100の0.30を知っていましたので、0.37とか0.38で広告に出すんだ、と素直に思ったものです(笑)。
それはさておき。3代目100といえば今回絵の真ん中にも据えたワゴン、『アヴァント』が印象的です。2代目にもアヴァントはありましたが、ワゴンというよりは完全な5ドアハッチバック。一方の3代目は明らかなワゴンボディとなって、荷室容積も広くなっています。テールゲートには角度がつけられていてとてもスタイリッシュ。それでいて実用性も高く、人気を博しました。アウディといえば4WDの『クワトロ』ですが、3代目にもしっかりラインナップされています。なお、3代目には派生車種として、上級版の『アウディ200(2代目)』がラインナップされていました。内外装を高級に仕立て、エンジンを強化したモデルです。北米ではほんのわずかな間、『アウディ5000』という超インフレナンバーで発売しています。さらに2代目200をベースにクワトロと3.5リッターV8エンジンで武装した、その名も『アウディV8 』が1988年から1994年まで製造されました。現在の『アウディA8』の源流です。
そうそう、夢の中にそれまで全然興味がなかったアイドルが出てきたらその子が気になったり好きになったりしちゃうことってあると思うのですが(ない!?)、ぼくはなぜか1990年頃、雪道を高速で突き進むアウディV8を鼻歌まじりに運転する夢を見て以来、その虜に。あれから30年以上たった今でも虜です(笑)。
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。
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