17年の長きにわたって生産された高級バン
Y30型系セドリック/グロリアは、1983年に登場した。セドリックとしては6代目、グロリアとしては7代目にあたるモデルである。この世代においては、ホイールベースの延長やサスペンションの刷新など色々と変化が大きかったが、何より大きなポイントは、国産初となるV型6気筒エンジンを搭載したことであろう。
【画像75枚】各部にディテールアップを施したY30バンとその工程を見る!
機構面の解説は後に回して説明を進めよう。まず、用意されたボディ形式は4ドア・ハードトップと4ドア・セダン、そしてワゴン/バンで、これは先代430型系と同じであった。スタイリングも先代に似た雰囲気のもので、「キープコンセプト」と言っても差し支えなさそうではあるが、430型では逆スラントと後下がりのウェストラインがスピード感や軽快さを演出していたのに対し、Y30では水平垂直を基調とした押し出し重視と言うべきもので、この違いは意外と大きい。
セドリックのホイールベースは、2代目(130型系)以来2690mmで不変であったが、Y30では2730mmと、40mmも延長されている。またフロントサスペンションも、初代以来続いてきたダブルウィッシュボーンから、マクファーソンストラットに変更。リアサスペンションは先代の5リンク式を踏襲している(先々代330型系までは初代以来のリーフリジッドだった)。このように基本構造が大きく改められたことは、型式の命名規則が変わったことからも窺えるのである。
搭載エンジンは、前述のとおり国産初となる量産型V6、新開発のVG型である。1980~1990年代のセドグロやローレル、フェアレディZを支えたエンジンであるVGの初登場だが、この時はまだSOHCのみ。デビュー当初は2Lと3LのNAだけがラインナップされていたが、1984年には3Lのターボ仕様(先にフェアレディに搭載されたもの)を追加している。V6の利点はコンパクトであることだが、Y30においてはディーゼルの直6もある都合か、その利点を活かした設計(室内スペースを大きく採るなど)とは言いにくいようだ。
登場2年後の1985年にはマイナーチェンジを実施、クリアランスランプをヘッドライト下に配置しフォグランプもあしらった(セドリックでグリル内、グロリアではヘッドライト脇)華やかなフロントマスクが特徴となった。このとき2Lのターボが可変ノズルターボ(日産ではJETターボと呼称)に変更されている。そしてさらに2年後の1987年にモデルチェンジ、Y31型系へと進化した。しかしこのときワゴン/バンはそのままキャリーオーバーとなり、WY30(ワゴン)/VY30(バン)のまま1999年まで生産・販売が続いたのである。
ワゴンはVG20EとLD28(ディーゼル)を搭載、バンはCA20S(4気筒2L)とLD28というラインナップだったが、1985年のマイナーチェンジで、ワゴン/バンともにディーゼルをRBベースのRD28に変更している。また、このときワゴンはハードトップと共通のフロントマスクを採用。さらに1987年のY31登場時に、バンにもVG20E搭載モデルが設定され、こちらはワゴンと共通のマスクとされた。こののち、ボディカラーやエアバッグ装着車の設定など細部に変更がありつつ1999年まで生産されたのだが、最大のポイントは1995年にワゴンの最豪華モデルV20E SGLリミテッドが追加されたことであろう。
エンジン、インテリア、リアゲートに手を加える
このY30型ワゴン/バン、そのクラシカルかつアメリカンな外観から、カスタムのベースとしても重宝され、人気の高いクルマではあったのだが、プラモデルとしては長らく存在しなかった。その渇きを癒してくれたのが、2015年にトミーテックから発売された1/35スケールのプラモデルである。スケールからもわかる通り、そのメインターゲットはおそらくミリタリーモデラ―で、自衛隊仕様のバンとしてリリースされたのだが、それだけでなく通常のバン、V6バンのパトカー仕様、V6ワゴンのデラックス、そしてワゴンSGLリミテッドなど、多くのバリエーションが展開された。
エンジンはCA20SとVG20Eがパーツ化されており、各キットには仕様に沿ってどちらかのパーツがセットされているのだが、ステアリングやシフト、ホイールなどはどのキットにも数種類のパーツが含まれているので、組み合わせを変えて楽しむこともできる。基本的にはどの仕様もセドリック/グロリアのどちらかを選択して組める構成なのだが、自衛隊仕様(航空自衛隊と陸上自衛隊の2種あり)はセドリックのみとなっている。また、SGLリミテッドにはルーフレールなどの専用パーツのほか、カスタムホイールがセットされていたのも嬉しいポイントだった。
ここでお目にかけている作例は、このトミーテックのキットを、バンのV20Eデラックスとして組み立てたもの。制作時点ではバンのキットはCA型搭載モデルのみであったため、ワゴンのキットを使い荷室ウィンドウのガードバーを装着(このパーツはキットに含まれる)、最大積載量ステッカーのデカールのみ陸上自衛隊仕様から流用したのであるが、その後V6搭載バンのパトカー仕様がリリースされたので、これを一般車として組み立てれば作例と同じ仕様にすることが可能である。
それだけでなく、エンジン周りには細かな配線を施してディテールアップしてみた。エンジン本体のプラグコードだけでなくバッテリーにもコードを追加(よく見える+側のみ)、エアコンやパワステの配管も再現。スケールが小さいだけに細かな作業となるが、その分、密度感をアップさせていく楽しさには凝縮された濃厚さがあると言えるだろう。追加工作のため、エンジン周りの組み方を説明書からかなり変更したが(画像のキャプション参照)、ふつうに素組みするならインスト通りに組めばOKである点はお断りしておこう。
室内にも若干の追加工作を行ったが、内装色のブルーも、廉価グレード特有の安っぽいビニールレザー感を出すべく凝ってみた。実車の内装色は、光の当たり方によって真っ青にも、紫がかった色にも、グレー味の強い色にも見える複雑なカラーである。ふと思いついてパール塗料を混ぜてみたらかなりこの感じを再現できた。また、リアゲートが開閉可能になっているのもこのキットの特徴なのだが、開けた状態で固定する仕組みがないので、実車のダンパーを模したパーツを自作し、これをつっかえ棒にして固定できるように工夫している。
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