高速時代に対応した先進設計の高級セダン
「グロリアの歴史は高級車の歴史」――そう謳ったグロリアも、その命脈は途絶えて久しい。日産が誇る高級車として、セドリックとともにその系譜を重ねてきたグロリアだが、よく知られているように、そのルーツは日産とは別の所にあった。かつての中島飛行機と立川飛行機の流れを汲むプリンスがそれである。
【画像72枚】実車さながらの雰囲気に生まれ変わった1/32グロリアとその制作過程を見る!
プリンス――当時の社名は富士精密工業――が、初代グロリアをデビューさせたのは1959年のこと。その2年前に登場していたスカイラインに、本来の1.5Lエンジンの代わりに1.9Lエンジンを載せた、派生車種としての誕生だった。当時の小型車枠は1.5Lが上限であったので、この初代グロリアは普通乗用車に分類された。国産車初の3ナンバー車だったのである。
2代目プリンス・グロリア(S40型系)が発表されたのは1962年のことだ(この時にはすでに社名もプリンス自動車工業)。今度は専用設計となったボディは、前後を平らに伸ばした”フラットデッキ”と呼ばれるスタイルが特徴で、より低く、長く、ワイドに生まれ変わった。メッキモールをぐるりと一周させたその独特の形状から、のちに”ハチマキグロリア”の愛称を奉られることとなる。トレー式のフレームやド・ディオン式のリアサスペンション、1.9L OHVエンジンなどの機構面の特徴は、先代から受け継いでいる。
当初はこの1.9L 4気筒のみであった搭載エンジンに、日本初の直列6気筒SOHCである2LユニットのG7型が加わったのは、デビュー翌年の1963年のこと。このG7エンジンを搭載したのが、スーパー6と呼ばれる最高級モデルであった。このエンジンは6気筒ならではのスムーズさと静粛性が売りであったが、スーパー6ではそれだけでなく、さらに車体各部の騒音や振動対策も入念に施し、高速時代の高級車としてアピールしたのである。
翌1964年には、このスーパー6をベースとしたさらなる高級モデル、グランド・グロリアが登場。G7型の排気量を2.5Lに拡大したG11型を搭載、西陣織の生地を使用したシートや、クロームメッキの加飾をさらに増加させた、ゴージャスな3ナンバー車であった。1966年にはプリンスと日産の合併に伴って車名がニッサン・プリンス・グロリアとなり、1967年にはモデルチェンジで3代目へと進化している。
ボディ形状の微妙なチューニングとタイヤ径の変更がカギ!
さて、このように日本の自動車史において重要な地位を占める2代目グロリアだが、プラモデルの世界では新車当時にいくつかの製品化があったものの、現在容易に入手できるのは、1990年代にアリイ(現マイクロエース)がリリースした1/32スケール・キットのみとなっている。これはかつてのエルエスから金型を引き継いだ”オーナーズクラブ”シリーズの新製品として、アリイが新規に設計してリリースしたキットである。
スケールが小さいとは言え、S40系グロリアのキットとして非常にありがたい存在だ。ボディは通常タイプとコンバーチブルの2種類があり、通常のモデルでは別体のルーフをボディに接合する構成となっている(なお、このコンバーチブルは当時実車が存在しており、怪獣映画などに出演していた)。ただし、ボディ形状含め全体の雰囲気はもう少し実車に似ていてほしかったというのも正直なところで、それを極力改修してみたのが、ここでお見せしている作例である。
手を入れた箇所は多岐に渡り、”ハチマキ”モールの跳ね上がり具合やリアウィンドウの立ち加減とCピラー形状、さらにタイヤ径の見直しなど様々だが、これは工作中の写真に付したキャプションをご参照頂きたい。なお、作例のナンバープレートは分類番号が間違っており、地名なしも時代的にそぐわないものなのだが、これについてはお見逃しを。
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