素材はなんと、住宅の断熱に使うスタイロフォーム! 3年かけて仕上げたNSXはクルマイベントにも出展!
愛知県のとある住宅街に建てられたガレージハウス。シャッターを開けるとポールリカールブルーのホンダNSXが現われる。クルマ好き、熱血高校教師として知られているUさんが、憧れて衝動買いしたという愛車だ。
NSXといえば、モノコックのアルミボディを持つ日本を代表するスポーツカーとして1990年に登場。2016年にニューモデルが発売されたが、30年が経過した現在でも初代NSXは不動の人気を誇る。
実はこのUさん。住宅の断熱に使うスタイロフォームを使い、実物大のNSXやトヨタ2000GTの模型を生徒と製作したことで知られる熱血教師でもある。そうした試みは平成20年当時、勤務していた高校での生徒とのやりとりがきっかけだったという。
却下されても自費をなげうって活動
Uさんが勤務していた工業高校では、機械技術やデザイン技術を学ばせるために、生徒の募集要項やホームページにクルマを題材とした活動があることを明記。ただ、実際にはそうした内容を実施できていなかったため、生徒からも疑問が出たことがあったのだそうだ。そこでU先生は学校にクルマのモックアップを実物大で再現させる活動を提案。
しかし、そうした活動はUさんの趣味の延長ではないか? と疑問を持たれてしまった上、費用もかかり過ぎるという理由から一旦却下されたとのこと。しかしそこで負けないのがUさんであった。なんと、学校から資金が出ないのであればと、自らの貯金をつぎ込んでその活動に導入しようと決意したそうである。
一般的にカーデザインの現場で使用されるクレイモデルを使い、実物大のモックアップを製作すると1000万円を超えてしまうということで、角材と平板、スタイロフォームを使って製作を開始していったという。
TV、新聞でその活動が取り上げられた!
まずはU先生のNSXを観察するところからスタート。製作の目的は、コミュニケーションを図り作業をすることで、生徒たちにものづくりの大切さを教えるというものだ。当時は賛同する先生がおらず、1年目は9名の生徒と模型のフレームを製作。2年目は10名の生徒と有志によりボディの成型まで到達。
そして3年目に入りボディ細部の製作とペイントという、3年にわたるプロジェクトの末、ついにNSXの模型が完成したのだという。その様子は地元TVや新聞などでも取り上げられて注目を集めたが、実際にはUさん自らの睡眠時間を削り、早朝と残業の繰り返しで作り上げた部分が大きかったという。
完成した模型は名古屋千種にある「ルブラ王山」に3か月展示。すると、そのクオリティの高さに噂が広まり、地元ホンダのショールームからもお声がかかったという。その後は名古屋で開催された「名古屋オートトレンド」などにも出展。製作当初は冷ややかな視線も少なくない船出であったが、3年かけて製作したNSXに注目が集まり、それは結果、高校のアピールにもつながっていったのであった。
「モノづくりをしたいと、心から思い、学び、その技術と発想を身につけてもらいたい」とするUさん。その思いは生徒に伝わったようだ。
卒業生はカーデザインの現場で活躍!
その後、NSXの実物大模型は本田技研工業株式会社の要請を受けて、茂木のサーキット「ツインリンクもてぎ」まで運んでもらい、展示とステージで元ホンダのデザイナー中野さんや元ホンダLPLプロジェクトリーダーを務めた上原さんと30分におよぶトークショーの実現に至ったという。
ホンダの創設者・本田総一郎さんに憧れていたUさんにとっては、思いもよらないうれしい結果が待ち受けていたのである。NSX模型の完成後は、生徒が主体となり、学生11名による課題研究授業でトヨタ2000GTを1年かけて製作。
愛知県は蒲郡市にある「ロードスターガレージ」協力のもと、元レーシングドライバー・細谷さんが監修に入るなどし、完成した2000GTの模型は2013年に東京オートサロンに出展。その後、トヨタ博物館にて実車と並んで展示されるなどこちらも話題となった。
なんと現在では卒業生が夢を叶え、自動車メーカーに入社することもあるという。東京モーターショーに展示されたクルマのインテリアを担当するなど、実際にカーデザインの現場で活躍しているのだとか。製作当時は誰からも賛同されなかったプロジェクトだったが、発泡スチロールで製作したクルマの授業は、しっかりと生徒の将来によい影響をもたらした。
その理由は、単にUさんがクルマ好きだっただけではなく、生徒たちに目標を示し、その理由を説明。学校を説得した情熱があったからこそ実現したものではないだろうか。現在、モックアッププロジェクトは第3弾で、オリジナルデザインとなる「タランチュラ」製作に入っている。熱血教師・U先生のガレージや製作工程の写真を是非ギャラリーで楽しんでいただきたい。
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