ハイテクを感じさせないナチュラルな上質感
ラグジャリーカーの頂点であると同時に、スポーツセダンでもあるベントレー・フライングスパー。2020年に3代目となり、走りの性能が大いに進化した。
【写真6枚】W型12気筒エンジンを搭載したベントレー・フライングスパーの詳細を写真で見る
先代に比べると、フロントアクスルを前方に寄せることで全長の伸長は20mmながらホイールベースは130mmも長くなり、安定性や快適性のポテンシャルを引き上げた。いまやラグジャリーカーでは4WSが半ば常識化しているのでロングホイールベースでも取り回しは苦にならない。全長5325mmの巨体だが、後輪が最大4.1度の逆位相となるので都内の路地でもD〜Eセグメントあたりのイメージで楽に運転できる。
W12型エンジンは6Lツインターボで最高出力635ps、最大トルクは900Nmにもおよび、2540kgと重量級ながら0→100km/h加速は3.3秒と驚異的だ。先代は一般的なトルクコンバーター式ATだったが、モデルチェンジでDCTに換装したこともスポーツセダンらしい選択だろう。
そんなハイパフォーマンスなパワートレインだが、一般道や高速道路を流して走るシチュエーションではいたって穏やかに感じられる。加速させてもサウンドはルルルッと遠くで小さく奏でられているだけでドライバーをリラックスさせてくれる。1500rpm程度の低回転域でも充実したトルク感があり、重量級なのに羽が生えているかのように軽やかに走るのだ。その一方で、ひとたび右足に力を入れるとにわかに緊張感が増して戦闘態勢に入る。3000rpmを超えてからの吹け上がりはシャープでパワーが漲っていく。シャシー性能に余裕があり、回転上昇感もあくまで洗練されているから野性味溢れる加速感ではないが、景色の流れ方で0→100km/h加速3.3秒の実力を実感。すごいことをサラッとやってのけているような印象だ。
22インチの大径タイヤを履いているのが信じられないほど、乗り心地に角がなくて快適だが、常に骨太な感触があるのがスポーツセダンを名乗るフライングスパーらしいところ。一見、ソフトで穏やかだが、ドライバーがその気になればいつでも対応する用意があると、クルマが訴えかけているのだ。
3チャンバーのエアサスペションは、いかにも空気量の多い感触でソフトからハードまで、余裕たっぷり。ストローク感も凄まじくあり、どんなにハードな場面でも決して使い切ることがないとさえ思わせる。ハイスピードでコーナリング中に大きな凹凸に遭遇しても底付感などはまったくなく、余裕綽々でフラットライドを維持し続けるのだ。
アクティブ制御のスタビライザーもいい仕事をしているようだ。ロールは穏やかに発生するが、量としては極小に抑えられ、常に快適で安心感がある。ちょっとやそっと攻めたぐらいでは限界が見えてこないほど。タイトなコーナーが連続するワインディングロードでもボディの大きさや重さを不思議なほど意識させられない。ブレーキのタッチも素晴らしい。ブレーキのあたり始めはソフトタッチで微細なコントロールが可能で、そこから踏力を強めていくと短いストロークのなかで減速度を司ることができる。ノーズの上げ下げもミリ単位で可能なほどだ。
シャシーには、いま考えられるあらゆるハイテクが詰め込まれているのだが、制御感はほとんどなくナチュラルに一体感が得られているのも見事だ。
まるで物理の法則が存在しないかのような軽やかさや洗練されて快適だけれど、ドライビングを楽しめるフライングスパー。最新のテクノロジーを使いこなした、新しいスポーツセダンの世界がそこにあるのだ。
【Specification】ベントレー・フライングスパー
■全長×全幅×全高=5325×1990×1490mm
■ホイールベース=3195mm
■車両重量= 2540kg
■エンジン種類/排気量=W12DOHC48V+ツインターボ/5950cc
■最高出力=635ps(467kW)/6000rpm
■最大トルク=900Nm(91.8kg-m)/1350-4500rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40ZR21:305/35ZR21
■車両本体価格(税込)=26,674,000円
■問い合わせ先=ベントレーモーターズジャパン ☎0120-97-7797
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